「央雅はわかっとらんかったんか」
美津子おばさんは笑いながら言いました。
「年に似合わずえらい察しのいい子だあ
思っとったが
やっぱこどもなああ?
四つのはなれは
せんじゅ様のはーれむよ。
まず1人嫁を娶って東あたりで
新婚生活しとっても
せんじゅ様には縁談が
持ち込まれ続けるから
あと3人まで娶れーって
郷民がやいのやいの言うからな
徐々に三つのはなれが
うまるんよ。
法律がうるさくなかった時代は
実際結婚しとったけどな
このじい様の頃は
2番目からは正式には婚姻せんかった。」
僕は滋賀のひいおばあちゃんのことを
思い出しました。
滋賀のおばあちゃんの母親は
離婚して島を出て
娘のひとり、おばあちゃんとともに
実家のある京都に戻り、再婚した。
「央雅のひいひいおばあちゃんは
このじい様の最初の奥さんだったんだあ。
でも島の出身者じゃなかったから
東じゃなく北に入ったんよ」
「ひいひいおばあちゃんとおじいちゃんは
どうやって知り合ったんです?」
「わたしあー関西で学ぶことに
したんだよ。」
おじいちゃんはしゃがれた声で
でも、通訳なしに聞き取れるくらいに
まるで話したくてたまらないというふうに
ゆっくりだけどはっきりと
「郷の中にも独自の学舎はあったが
島を出て学ばなならんと思てなあ。
名継ぎとは呼ばれてたが
まだ祖父のせんじゅ様が
元気に勤めとったからなー
まあ、少しばかり島を離れても
よかろうとなあ。
みんなにやいい顔されんかったが
せんじゅ様が後押ししてくれたわ。
トヨとは世話になっとった宿舎で
知り合ってなあ。
早く結婚しんといかん立場だからな
すぐさま島に連れて来たちゅうなあ。」
とてつもなくニコニコと
話してくれました。