リュウオン君は

地べたにお尻をついて、

片手を後ろに身体を支えて

もう片手を僕に振ってました。


折り曲げて投げ出した

制服のズボンをはいた足が長い。


日に焼けた顔に

白い歯を見せて

少しハアハアしながら

にこやかに笑ってた。


いかにも健康優良児、だけど

ほっそり中学生。

(制服だったから中学生とわかりましたが

 背は小さそうで中1くらいかと)


周りを囲んでる

いつものはなれの子どもたちは

"目通りいつ?"の答えを期待するみたいに

いっせいに僕を見ました。


「3年前にやりました。」


僕が答えると

子どもらがざわつきます。

「なにそれ⁉︎

 "お名継ぎサマ"だったの⁉︎

 聞いてないんだけど!」

1人が言うとリュウオン君は


「後継ぎが出たんなら

 お祭り騒ぎやってるよ。

 君違ったのね。

 じゃ今回はただ観光に来たんだ。

 学校は?」


「塾行ってます。

 休んでても課題送られて来て。」


「登校拒否か?

   いじめにでもあった?」


「あってないです」


「うん、いじめられっ子ぽくないもんな

 むしろアイドルっぽいね。

 バク転できる?」

   

「できないです」


「今度コイツらに教えに来るんだ。

 もう1人体操部の友達呼んで

 補助について

 俺1人だとちょっと危ないかもだから

 君もやる?」


「いーいいです!」


「あ そうなの?」


そんなやり取りをしてると

はなれの子のうち

僕と同じくらいの年らしい男の子が

「リュウオン、おれバク転ならできるよ」

と言って、「ちょい、ちょい」と

手で他の子らを払って

スペースを作ると


勢いをつけて

側転からのバク転をやって見せた。


「おおっすごいわ!」


リュウオン君は

感心しきりに叫び、

他の子、特に女の子たちが

激しく拍手してました。


「お前すごいわ

  ひとりでできるようになったんか?

 たいていは最初はちゃんとマットとか布団とか

 用意した上で

 補助の手を借りて練習するんだぞ?」


バク転ができた子は

褒められて嬉しそうだったけど

「でもなんか真っ直ぐ飛べてない気が

 するんだけど…」

と首を傾げながら言う。

「リュウオンのもっかい見せて」


「おっしゃ」

彼は立ち上がり、

作られた長めのスペースの端から

バク転を3回続け、最後に

高くバク宙を飛んだ。


さっきの子とはだいぶ違う

きれいな回転に

僕は正式な競技でも見てるみたいに

息を飲んだ。