- 劇場 (新潮文庫)/新潮社
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大好きなモームの作品の中でも
上位に入るもの。
とは言え、モームの作品は
大体どれを読んでもつい、
「この小説、好きだ!」と
思ってしまうのだけれど。
主人公ジューリアは、
イギリスで人気のある舞台女優。
伴侶にも恵まれ、子供も立派に育ち、
地位も財産も才能も美貌も申し分なく…。
品行方正でゴシップにも縁のなかった彼女が
ふと入れ込んだ一人の男。
トマス・フェネルは息子ほどの年齢の、
見た目は麗しいけれど、俗物で見栄っ張りな奴!
ジューリアは時折冷静に自分の現状を見つめたりもするが…
いよいよトマスにこっぴどい目にあわされ、
別れが訪れたが、
もちろん、そのままで終わるジューリア様ではございませぬ。
とばっちりとも言える形で巻き込まれた
駆け出し女優さんは哀れなり。
(横顔が羊にそっくり、とは!)
ま、でもこの娘はまた誰かみつけるでしょ!
この舞台上で「目にもの見せる」ところが、
「ガラスの仮面」で亜弓さんがマヤの敵を討つところと
似ていて、ヒャーっとなって、胸がすーっとするの。
そんで旦那のマイケルは良い人なんだけど、
やっぱりどうしても馬鹿なの。
でも、「この人ホントに馬鹿だな~」と思っても
チクリとも胸が痛まない、こう言う人材は貴重だわ。
ジューリアの世話をずっとしているエヴィーのような、
赤毛のアンで言うレベッカ・デューのような、
こうなったらニャンコ先生(いなかっぺ大将)でもさ、
ピシピシ厳しいことを言ってくれながらも、
最大限に思いやってくれる存在が
身近にいてくれるって、良いな。
最初にやってきた、チップの件で揉めた別れのシーン、
あそこでけりをつけても良かったけど…と
傍観者は思うのよね。
トマスからジューリアに向けられた残酷なセリフ、
モーム自身がその何年後かに
秘書兼恋人だったハックストン君から同じようなことを言われるのは
不思議ね。
せっかくこんなに素晴らしい小説なのに、絶版とは!
とても良い訳なんだけど、
ジューリアが心の中で思い浮かべる罵詈雑言、毒舌が
いま一つしっくりこないのが何個かあったので、
ここはひとつ、行方先生に訳しなおしていただいて、
また発売していただければ…と言う、お願い!