主人公がだいたい陰鬱で、社交性が無くって、
何かを背負っていて、あるいは背負うことになる、
シムノン先生の所謂本格小説。

暗くて落ち込むんだけれど、
それでもなんだかたまにとっても読みたくなって手に取ってしまう。

今回読んだ「倫敦から来た男」の主人公は
港で転轍手として働く、中年(50歳くらい?)の男、マロワン。

まずこの転轍手と言うお仕事が
インターネットでも検索したりもしたけれど
よくわからなかった。

どうやら、港の小ぶりの灯台(?)みたいな
「転轍操作室」と言うところで
夜になにかを開けたり閉めたりしている様子。

マロワンの懐具合は寂しい様だ。
家族もみんな苦労をしているみたい。
それがまた逆にマロワンを意固地にさせている雰囲気。

ある夜、マロワンは転轍操作室から二人の男が喧嘩をし、
殴られた男が海に落ちるのをみる。
落ちていく男は小型のスーツケースをもって落ちた。
人がいなくなってからこっそりスーツケースを海から
拾い上げたマロワンは…

大変なことが起こって、
それも自分がどんどんそれをわざわざ起こしたような時、

「あぁ、あの時こうしていれば…」と思い返す、

また、それをしている、今そのときにも
「いまやめれば、まだ間に合う!」と思いながら、

その事の重大さも大小あるとしても、

なぜか悪い方、駄目な方を
波に乗るように、引きずり込まれるように
してしまうこと、ある気がするなあ。

男を海に突き落としたイギリス人の男、不運な軽業師。
その男を追って、イギリスから来た
話の分かる、情感のある刑事が、とっても格好良い。

お金を盗まれた男の娘、
被害者として、犯罪者の身内にはどんなに冷たくしても
許されると思っているところが、
なんだか色々考えて、逆の面で身につまされて、
私も今までいけないところがあったかもしれない、
と考え、少々、傷心。
母親が山登りが趣味なこともあり、
家には雑誌「山と渓谷」があったし、
(この雑誌では遭難事故があると特集を組む)

母親が話してくれる本当にあった遭難その他
山での怖い話をよく聞いて育った私は、

「山登り行くには装備を万全にしよう。
(雪が無いと言われても、季節によってはアイゼンを持参、
日暮れまでに帰れるスケジュールでもライトは絶対必要)」
でもなく、

「迷ったとわかったら引き返す勇気を持とう」
でもなく、

「とにかく絶対、山登りはやらないでおこう」と言う
後ろ向きの、それも固い固い決意のみ。

沢山の山の遭難の実例を出して
「なぜ?」に迫るレポート。

「そうなると思わなかった」
「こうだと思った」と言う思い込みから、

「知らなかった」「気付かなかった」と言う
経験不足から、

「出来ると思った」「自信があった」と言う過信から、

遭難は起こり、その後リーダーがどういう判断を下すか、
が最大の決め手となる!

低体温症と言うのは急に亡くなってしまうそうで、
そういう人が出ると、
チームがあっという間に動揺してしまう様だ。

ただ、自分の無知を、過信を、
「運」と言う一言で片づけるな、と
著者は息巻いておりますが、それを遺族や
同じチームの生き残った方にぶつけるのはいかがなものか。

「なんでこんな行動を?」と不思議に思っても
当事者になってみないとわかりませぬ。

ただ、おかしいな、変だな、と思ったら
リーダーがそう言っても自己防衛するのが大事みたい。
でも大学の山岳部とかってリーダーが絶対らしく
難しいのかな。

わたしなんて、自宅でひたすら遊んでいるのが好きだから、
「なんでわざわざ、危ない思いをしに…」と
思うんだけれど、

特にこう言った雪山へ行きたい人って
危ない、ぎりぎりの目に会いたいのかな、とも思った。

怖い、怖い、怖いよ~と読みながら
極限状態になったとき、自分はどうなるんだろう?と
つくづく考えてしまう本。

どんなに元気な時でもがっくりくるので
読まれる方は気を付けてください。
クリスティーブーム、
次なる作品は、短編の中にしか登場しない、
クィン氏を扱ったもの。

読むにつれ、どんどんクィン氏の登場の仕方や
振る舞いなどが
超常現象に近づいていく!

一般人のサタースウェイト氏のまわりで、
殺人が発生し過ぎる!
(そう言うとミス・マープルもそうかしらん)

「ルーレット係の魂」が、良かったな。
続いて、クリスティーの
トミー&タペンスもの。

一応、ネタバレ注意!

トミーとタペンスが結婚して
大きな子供がいるようになっていて面白い。
大概、小説の主人公って
あんまり年をとらないから。

前に読んだのと同様、
ストーリー紹介は省略~。

トミーは前作に続き、
同じところを気絶するほど殴られて、心配だ。
私の通っている整体で、
絶対に打ってはいけないと言われている場所を、
一度ならず二度もだから!

あの子、どうしているかな~と思っていたら出てきたよ。
そして別れも何もなく去って行ったね。

そして私は犯人がわかっていたよ。
一番怪しくないと言われている人を選べばいいの!

でもこういう楽しい、面白いがメインの作品で
犯人がわかったとて、さほど偉くは無い!
引き続き、クリスティーブームの真っ只中!

クリスティーと言えば、
ポアロかミス・マープルと思っていた
何も知らない私にさよなら!

男女コンビ、
そしてドタバタコメディーみたいな、
こういった作品もあるのね!

戦争が終わり、平和が戻ったロンドンで再会した
幼馴染のトミーとタペンス。

仕事の無い二人は探偵業を立ち上げてみるが、
怪しげな依頼から思わぬことに巻き込まれ…。

「2016年 私が読んだ作品で、こんなこと実際ある訳ない大賞」
暫定一位をお送りしたいようなストーリー展開なので
詳細は省きますが、
それでも一応ドキドキしたり心配は致しました。

でもその後もシリーズ化しているってことで
「この二人は死なないんだろうな」と言うお守りがあったので
大丈夫です(?)

全てが丸くおさまって、ほっとして読了。

たまにはこんな王道の娯楽小説も良いかも。
突然私の元へやってきた、クリスティブーム!

こんな本、買ってみた!
ほんとに、場合によっては素晴らしく勉強家なんだから、
感心しちゃうわ!

こちらの本は、
クリスティの全作品の解説(ネタバレは無し!!!)と
年譜と豆知識その他盛りだくさんの内容。

今日の朝、駅に向かって歩きながら、
昔読んであんまり楽しめなかったクリスティが、
久しぶりに読んでみたらこんなに面白くて
はまってしまったのかは何故なのか、考えてみた。
(駅遠物件なので時間はたっぷりとある)

多分、「これは本当には無い、けれど…」と言う
気持ちで楽しめるようになったこと、かしらん。

これは、ここ数年、あの都筑道夫先生のもとで
(著書を通して)ミステリについて学んだことが大きいのだ。

とにかく人生で一番最初に好きになった推理小説が
ホームズ先生だもので、
単独犯で、完全犯罪で、納得のいくトリック、
それを理路整然と解き明かすのが
ミステリとして一番偉いとすっかり思ってしまったの。

でも、都筑先生が「黄色い部屋はいかに改装されたか?」の中で
「本の中のいわゆる『完全犯罪』と言うものが
現実の世界でいかに荒唐無稽か」と言うことを書いておられ、
本当にわからないように殺人をするなら
密室などにせず、不思議なヒントも残さず、
病気か事故に見せかけるのが通常、
とあって、「本当にそうだわよ!」と吃驚の衝撃で
本を持ったまま後ろに倒れそうになったの!
(やっと気付いたらしいよ)

だから私が「こんな手口はエレガントじゃない!
犯行としておかしい!実際にありえない!」
とか言ってワイワイ騒いでいたことこそ、
おかしかったのよねー。
もともと「実際には無い話」なのよね。

都筑先生のおかげでミステリを、
なんというかファンタジーとまで言うと言いすぎ?
でもそんな感じでリラックスして楽しめるようになったみたい。

また、注意として、ここで私が話題にしているのは
一般的に古典と呼ばれるミステリの話で、

最近の作品によくある、警察の内情がリアルに描かれ、
犯人はサイコパスで…みたいなのではない、ですよ!
(現代のものは私はあまり読んでいませんのですみません)

また、クリスティを読んでいると
当時のイギリスの生活ぶりもしのばれ、楽しいわい。

今は、クリスティの作品の中で
私は全然存じ上げなかったのだけれど
人気コンビ、トミー&タペンスのシリーズを
ドンドンと音がするほどの勢いで読んでいるところ!
この間弟が実家に来ていて久しぶりにおしゃべり。

「偶然」についての話になり、

私の以前の職場の上司(広島出身)がヨーロッパのどこかの国で
切符を買っていたら、後ろに並んでいた人が幼馴染だった。
(上司は当時東京勤務、幼馴染は広島)

弟のお嫁さんがうちの実家(東京多摩地方)に来てくれたとき、
近所のショッピングモールへ行ったら
地元(四国のある県)の友達がいた。

弟の大学の先輩がドイツに留学した時、
朝、川のほとりを散歩していたら、向こうから歩いてきたのが
大学の後輩だった。

こう言うような「ものすごい偶然ってなんなんだろうね?」
ととても盛り上がった。

会社に行って上司に話したら
「私もあるわよ!」と言われ、

上司(北海道出身)が長崎のハウステンボスへ遊びに行ったとき、
子供のオムツを変えたくてその場所を聞いたスタッフの人が
小学校の時の友達だった、とのこと!

弟とも話したけれど、
例えば大天使ミカエル様とかが
「あの人たちを、こんなところで会わせたら、超驚く!」
とか言って面白がっているだけでは無さそう、
だけど、こういう体験をした人の共通点が無いと
何故なのかは、不明だよね。

そんな流れでずっと読みたいと心の片隅で思っていた
この本を読みました。

赤瀬川さんの死後、出てきた日記と手帳にあった、
偶然と夢の記述をまとめたもの。

ある時、兄一家が私のうちに遊びに来て、
甥っ子が本棚をみて
「もう死んじゃった人の本を読んで面白い?」と
聞いてきて、
へぇ~そんなこと考えたこと無かったと思って、
「私が好きな本を書いてる人はほとんど死んじゃってるよ」
と答えたけれど、

今回は、
「いろいろな偶然や夢を面白がって、
人生を楽しんでいた、この人はもういない」と
つくづく不思議に感じてしまった。

今まで印象的な夢は書き記しているけれど、
これからは偶然も書いておこう!

確か中島らもさんもある時期偶然が気になっているようで、
偶然について書かれた本を読んでいるエッセイがあったなあ。
私のクリスティブームは続く…

今度は、私の本棚のミステリコーナーに
何故かあった、『ポワロの事件簿 2』
ポアロじゃなくってポワロだし、
作者はクリスチィとある!
(初版は1980年)

「わたしはポワロと共同して、これまでに多くの怪事件を
手がけてきたが、その中でも、数年の長きにわたって
私の関心を持続させ、そしてついにはポワロのもとへ
持ちこまれて最後の謎をとくにいたった、
あの驚くべき一連の事件に匹敵するものはあるまいと思う。」

これは、収録されている「呪われた相続」の
ヘイスティングスが語る出だしね。
やけに煽りますなあ!

翻訳者の問題だけれど、
「消えた鉱山」ではタクシーの運転手のことを
ポワロが「運ちゃん」と言い続けるのには
見逃し難いものを感じましたが、まあ良いでしょう!

ある作品を読みながら、
「そうだ、テレビシリーズでこんな感じのある人が
実は…の面白い話があったなあ」
と思ったらまさにその話だった!
(未読の方の為、題名は内緒)

何度も言っちゃうけれど、
「こんなことは実際は絶対に無い、でも面白いお話!」

イギリスでお茶したり、舞踏会とか、旅に出たり
そんなのもとても読んでいて楽しい。

クリスティは短編が得意なのかな?
と今回は思った。
これも、母親の本棚から借りた本。

クリスティについては
「オリエント急行殺人事件」が
私の嫌いな忠臣蔵に似ているので(?)
あまり好みではなかった。

「そして誰もいなくなった」を読んで
「ほんとだ、誰もいなくなった」と読了したけれど、
それが大間違いで、実は大変に奥の深い話である、
と言う新情報が入ってきた!
(新装版の「東西ミステリーベスト100」より)
ヒエ~。

そのことを知ったと同時ぐらいに
母親の本棚を漁ってクリスティを読んだのだが、
あれれ?とても面白くて驚きだ!

今まではBBの本屋さんのミステリコーナーで
早川のクリスティのコーナー、
赤い背表紙が沢山並んでいるのを見て
「やれやれご苦労なこった」としか
思っていなかったけれど、

私、どうやら大変な間違いをしていたみたい!

この作品集は
ポアロもミス・マープル、
そして存じ上げなかったクィン氏、
などなどが次から次へ活躍!

ヘイスティングスって、テレビドラマと違って
ポアロと対等な立場なんだね!

「実際にはこんなことは無いだろう」とは
頭の片隅では思うけれど、

本の中の世界、面白い面白いお話!

コニー・ウィリスの作品で
ずっとクリスティばかり読んでいる女の子が
出てきたんだけれど、
あれが本の神様が私にくれた大ヒントだったのかも!
うっかり逃してしまっていたわい!
先日実家で母親の本棚にあったので読んでみた。

読みながら、「そうだ、クリスティの作品で
ミステリーじゃないものがあると聞いたことがあった…」と
朧な記憶が甦ってきた。その一つがこちら。

主人公ジョーンは優しい夫に恵まれ、
大きくなった子供たちも恵まれた生活をしており、
自分が理想の人生を歩んでいることに
満足していたが、

旅先で鉄道のトラブルのせいで
ある砂漠の駅で足止めになり、
一人で過ごすことになった数日、

その間、自分の人生を振り返ると
無意識にあるいは意識的に自分が見ていなかった
物事の側面が心に浮かび上がって来て…

このジョーンと言う女性、
私から見ると本当にいけ好かない人物、

でも主人公の目線で語られているのに
それに巻き込まれない冷静で第三者的な筆致であった。

「あなたの為を思って」と言う事が実は
自分の理想の、欲望の、見栄の為、と言うのはよくある話。

私は「あなたが心配で…」と言う人のことは
前々から警戒していたけれど、

何年か前、そう言う人は99.9%インチキと言うことを
強く実感した事柄があった。

大体そう言うことを言ってくるのは、
自分と向き合えない、
人の不幸が好きな(自分の幸せを実感したい)、
人を操りたい人、なんですよね。

自分の家に戻ったジョーンの行動に、
ちょっと不思議を感じたけれど、
実際はそうかもね。

「こうでなくっちゃ」とそんなことばかり追いかけていると…
と言うとても怖い作品。

何気なく読んだ本だったけど
超めっけもんだった!