よっこいしょ。
ふぅ。
もう、そろそろやめようかな。
こんなことばかりやってちゃ、身が持たないし。
「マスター、どうしたんですか?
手伝いましょうか?」
あ、いや、大丈夫だよ。
いつもやってることだけど、今日はなんだか、身体が重くて。
「え、大丈夫ですか?
体調悪いんですか?
休んだほうがいいですよ。」
いや、特に悪いってわけじゃないんだけどね。
熱もないし。
「疲れが溜まってるんですよ。
わたし、開店準備進めておきますから、少し休憩しててくださいよ。」
あ、あぁ。
分かった。
お言葉に甘えて、少しだけ休んでくるよ。
「は〜い。」
う〜ん。
なんだろう。
もやもやして、スッキリしない。
どこか、引っかかってるのか。
なにかに囚われてるのか。
なんだろうな···
『マスター。
ちょっといい?』
あ、君か。
いいよ、何?
『マスター、ちょっとヤバいよ。』
え、何が?
『あのね。
う〜ん、これ言っちゃったら、怖がらせちゃうかな。』
え!?
そんな。
氣になるじゃないか。
そんなこと言われたら···
『···
でも、言わなきゃだめだよな。
うん。
やっぱり言うよ。』
何か、悪いことしたかな、わたし···
『マスター。
リミット近いよって。』
え?
何のリミット?
『···命のリミット。
分かる?』
!?
命のリミット?
それって、寿命のこと?
『いや、そうじゃない。
命のもととなる、エネルギー不足。』
エネルギー?
何のことだい?
いたって元氣だし、特に病氣をしてるわけでもないよ。
『マスターさぁ、知らず知らずのうちにやっちゃってるからさぁ。
ガス欠寸前なのも氣づかずに。』
そ、そうなの?
何のことだか分からないよ。
『あのね。
マスター。
今、幸せ?』
え?
あ、いや、そうだなぁ。
幸せ、だと思うよ。
お客さんが毎日たくさん来てくれてるし、話も楽しいし、それなりにやりがい感じてるからね。
『マスター。
自分の幸せって、何なの?
マスターが心から嬉しいって思えることって、何なの?』
わたしの、幸せ?
幸せ、かぁ。
お客さんが笑顔で帰っていくのを見たときかなぁ。
やっててよかったなって思う瞬間だよ。
『まぁ、そうだろうね。
マスター、常々言ってるから。
お客さんに楽しんでもらいたいんだって。』
うん。
それが正解じゃないの?
『マスター。
これってさ、自分で氣づかなきゃいけないんだけど。
幸せって、何?
マスターの幸せって、一体何?』
え?
さっきのじゃだめなの?
『····
マスター。
今日、休んだほうがいいよ。
そのままだと、1日もたないから。』
え?
そんなに??
おかしいなぁ。
『俺、彼女に話してくるから、少し待ってて。』
え〜···
そんなに大変なことになってるの?
わたしのやってること、そんなにおかしなことなのかな。
『お待たせ、マスター。』
あ、うん。
『で、答え出た?
マスターの幸せって。』
それがね。
思いつかないんだ。
お客さんのこと考えてやってる自分が、今は幸せなんだなって思ってたから。
そうじゃないって言われて、それじゃ何が幸せかって言われたら思いつかなくてね。
『ふふ。
マスターらしいけどね。』
そうかい?
でも、それじゃだめなんだろ?
『だめとは言わないよ。
でもね、それだけじゃ補いきれなくなってるんだ。』
補うって?
『マスターのエネルギー。
使いまくって、補充してない感じなの。』
そうなの?
でも、補充なんて、どうやればいいんだか。
『マスター。
忘れてない?
自分を楽しませること。』
自分を楽しませること?
『そう。
マスターが好きでやってること。
仕事とか関係なく、自分の趣味として楽しんでたりすることだよ。』
趣味、かぁ。
そういえば最近、忙しくてそれどころじゃなかったなぁ。
お客さんのためにって、そればかり考えてた。
『それそれ。
いいんだけど、バランス悪いんだよ、それじゃ。』
そうなの?
『氣持ちばかり、お客さんの方に行っちゃって、楽しませてる本体の自分が枯渇してる状態。
そりゃ、充実してるし楽しさもあるだろうけどね。
今のままだと、自分のエネルギー切れた途端に倒れちゃうよ。』
そうかぁ。
なるほど。
重たく感じたのは、そろそろ限界だったってことか。
『マスターもさぁ、単純に何も分からないわけじゃないからさぁ。
ちゃんと、キャッチしてるところもあるみたいだし。』
若干、小馬鹿にされた氣分だけど。
『ハハハ、氣にしないで😉
でも、今なら間に合うからさ。
今日は、休みとったほうがいいよ。』
休みとって、何すればいいんだ?
開店準備も、彼女にやってもらってるし···
『まずは、それを思い出すことから始めなきゃね。』
へ?
『思い出すこと。
マスターが、心から楽しいって思えること。
仕事とか、誰かのためとかじゃなく、自分が楽しいって思えること。
忘れちゃってるなら、それを思い出すことから始めようよ。』
わたしが、楽しいこと·····
楽しいこと、かぁ。
そう言われれば、近頃は人のためにばかり動いてきたなぁ。
喜んでくれるから。
楽しそうにしてくれるから。
相手が喜びそうなことばかり考えてた。
それでいて、自分のことは何も。
そうだった。
忘れてた。
考えてなかった。
思いつかなかった。
自分が喜ぶことって発想。
『ね。
マスター、今日は、店は俺達に任せてよ。
彼女となんとか切り盛りするからさ。』
大丈夫かい?
『信じてよ。
俺だって、だてにここにいるわけじゃないぜ。
お客さんのこと、よく分かってるよ。
マスターが言いたいことも。
そして、マスターが氣にしてることもね。』
そうだな。
分かった。
じゃあ、頼んだよ。
何かあったら、すぐ連絡して。
『分かった😊
じゃあ、ゆっくりして。
思い出してね。』
あぁ。
そうするよ。
「········マスター。」
·········
「マスター、マスター!」
んん?
呼んだ?
何かあった?
「(笑)
もう、閉店時間です😊」
へ?
「レジ閉め、お願いできますか?」
あ、あぁ。
分かった。
あれ?
わたしは、何をしてたんだっけ···
『マスター。
体調はどうですか?』
あぁ、だいぶ楽になったよ。
重さがとれたかな。
『良かったです😁
で、なにか思い出しました?』
あ、それがね。
氣がついたら、この時間で😅
『(笑)
寝落ちっすか。
まぁ、そうでしょうね。
速攻チャージには、それが一番だし。』
「でも、いい具合に修正されてますよ。
分かるでしょ?」
『·····お、そんなふうになってるの?
へぇ~😁』
なになに???
わたし、なにか変わった?
『面白くなりそうだね、これから。』
「ですね😊」
ねぇ、そんな意地悪しないで、教えてよ。
何が変わった?
何があったの?
『まぁまぁ。
そのうち分かりますから😁
あ、あと、やっときます。
レジだけ、お願いします。』
「こっちの片付けは、もう終わってますから、大丈夫ですよ〜🎵」
な、なんなんだ!?
何が起こるっていうんだ·····😓