フィスコ

■要約

コンフィデンス<7374>は、「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」というビジョンの下、2014年8月に創業した。主力事業である人材事業ではクリエイターを募集・採用し、ゲーム業界向けの派遣・紹介・受託業務サービスを提供し、メディア事業では自社メディアサイトの運用及びメディア運営支援サービスを展開している。後発参入にもかかわらず、取引社数は約120社、創業以来累計で約190社に上り、(株)バンダイナムコスタジオ、(株)Cygames、グリー<3632>といった大手企業をはじめ、中堅以上のゲーム会社の大多数と取引実績がある。

同社の競争優位性は、高い採用力と営業力を背景とした人材のマッチング力にある。求職者数最大化と求人数最大化によりマッチング総量を最大化するために同社は、分業化・標準化に基づいた組織設計をし、オペレーションは極力簡易化することで、効率的な組織運営を展開している。この結果、同社は2017年3月期~2021年3月期の売上高年平均成長率(CAGR)62.5%、営業利益の年平均成長率72.0%と、2014年8月以降高い事業成長率及び収益率を実現している。同社によると、人材派遣業界の営業利益率は10%以下が多数のなか、同社の2022年3月期の営業利益率は16.8%と高水準を維持していることからも、同社の強みが、高い事業成長率及び収益率実現に寄与していることが窺える。

1. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比24.0%増の4,425百万円、営業利益で同23.3%増の745百万円、経常利益で同22.3%増の737百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同32.9%増の530百万円となり、売上高及び各利益は過去最高業績を達成した。また2021年6月に公表した業績予想比では、売上高が0.9%増、売上総利益が3.8%増、営業利益が3.5%増、経常利益が2.9%増、親会社株主に帰属する当期純利益が6.6%増と全指標で予想を上回って着地した。中期成長戦略に掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を目指し顧客深耕に取り組んだ結果、主力の派遣事業が堅調に推移した。また、主要なKPIのうち、ストック型収益モデルの基礎となるクリエイター派遣配属数は、前期末比120人増の740人(期初想定は700人)と着実に増加したほか、クリエイターの稼働率についても高水準で推移した。

2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績について同社は、売上高を前期比17.5%増の5,200百万円、営業利益を同14.0%増の850百万円、経常利益を同14.9%増の848百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同10.3%増の585百万円と見込んでいる。主力のゲーム会社各社は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でも堅調に推移していることから、中期成長戦略で掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を引き続き推進することで、さらなる成長を目指す。またメディア事業では、収益の柱をアドネットワーク収益からプロモーション受託に転換する方針を掲げている。

3. 成長戦略
同社は、中期成長戦略として「顧客深耕及び事業連携の好循環(エコシステム)確立による事業拡大」を掲げ、(1) 対象顧客の網羅・深耕、(2) 提供サービスの多様化、(3) エコシステムの確立、を推進することで、3~5年後に売上高100億円を目指している。また、長期成長戦略として「対象市場の拡大とマッチングソリューションによるデジタルエンターテイメント領域※への展開」を掲げ、(1) 対象市場の拡大、(2) 受託事業の拡大による知見の蓄積、(3) マッチング範囲の拡大・高度化、を推進することで、デジタルエンターテイメント領域への展開を実現する考えだ。

※ゲーム、デジタルライブ、デジタル配信、SNS、e-スポーツなどを含むデジタル化されたエンターテイメントを提供する領域。メタバース上で提供されるサービスも含む。


中期成長戦略としては、顧客深耕により顧客当たり派遣人数の最大化を目指すほか、派遣事業で構築したネットワークを生かし、人材紹介・受託業務のクロスセルによりさらなる収益拡大を図る方針だ。また、人材派遣・人材紹介・受託メディアの各事業が相互に連携し好循環を確立・拡大することで、経営効率も高めていく。

長期成長戦略としては、対象市場及び受託事業の拡大で知見を蓄積し、デジタルエンターテイメント領域への展開を目指す。近年急速に浸透しているメタバースとゲーム業界のスキルは親和性が高いことから、同社及びクリエイターのノウハウを生かしたデジタルエンターテイメント領域への進出は、実現可能性が高いと弊社では見ている。既存の事業資産を活用した多角化戦略と言え、将来像がイメージできる魅力的な成長戦略であると評価できる。

4. 株主還元策
同社は、将来の事業拡大と財務体質の強化のために必要な内部留保を行いつつ、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針とし、配当性向30%超及びDOE(株主資本配当率)10%超を目標としている。この基本方針に基づき、2022年3月期は1株当たり40.0円(前期はなし)の配当を実施し、配当性向は33.8%、DOEは15.7%となった。2023年3月期については、1株当たり45.0円(前期比5.0円増)を予定しており、配当性向は35.2%、DOEは11.6%となる見込みだ。

■Key Points
・2022年3月期は主力の人材事業がけん引し、過去最高業績を達成
・好調な外部環境などを追い風に、2023年3月期も増収増益を見込む
・顧客深耕とエコシステムの確立により、3~5年後に売上高100億円を目指す。長期的にはデジタルエンターテイメント領域への展開を計画
・配当性向30%超及びDOE10%超を目標とし、2022年3月期は1株当たり40.0円の配当を実施
 

 

■事業概要

コンフィデンス<7374>は、「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」というビジョンの下、2014年8月に創業したゲーム・エンターテイメント業界向け人材派遣・人材紹介・業務受託及びメディア運営会社である。後発参入にもかかわらず、取引社数は約120社、創業以来累計で約190社にのぼり、バンダイナムコスタジオ、Cygames、グリーといった大手企業をはじめ、中堅以上のゲーム会社の大多数と取引実績がある。

1. 市場動向
同社が主にサービスを提供しているゲーム業界は右肩上がりで成長を続けており、国内ゲーム市場コンテンツ規模※は2014年の9,886百万米ドルから2018年には16,586百万米ドルまで増加し、2023年には21,249百万米ドルと予想されている。また、世界のゲーム市場コンテンツ規模※も同様に成長基調で、2014年の75,592百万米ドルが2018年には124,427百万米ドルとなり、2023年には172,663百万米ドルと予想されている。一方、ゲームのデバイスについてはモバイルゲーム市場規模が伸長している。これらのゲーム市場の規模拡大により、同社の主要顧客であるゲーム会社各社の業績は堅調に推移している。このような環境の下で同社は、今後も堅調な拡大が見込まれる国内市場に加え、将来的には海外展開も視野に入れていることから、さらなる業績拡大が見込めると弊社では見ている。

※出所:経済産業省「コンテンツの世界市場・日本市場市場の概観(令和2年2月)」。


ゲーム業界における派遣事業という観点で見ると、同社の営業利益率は競合他社と比較し高水準で推移していると言える。一例を挙げると、2022年3月期の同社の営業利益率は16.8%であるのに対し、競合他社は8.2%、0.8%、11.3%となっている。これは同社の競争優位性が発揮されている結果である(詳細は後述)。


「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」をビジョンに掲げ、人材事業及びメディア事業を展開

2. 事業内容
同社は「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」をビジョンに掲げ、クリエイターがキャリアアップにより自らの夢を実現し、携わった作品が評価され、所属する組織・業界・社会が発展する未来を共に創り上げていくことを目指している。具体的には、クリエイターにはエンターテイメント業界に携わり、キャリアを高め、夢を実現することをサポートし、取引先企業にはエンターテイメントコンテンツを創るコア人材と情報を提供することでサポートしている。

同社の主力事業である人材事業は、クリエイターを募集・採用し、ゲーム業界向けの派遣・紹介・受託業務サービスを提供しており、人材派遣事業、人材紹介事業、受託事業からなる。またメディア事業では、自社メディアサイトの運用により広告収入を得ているほか、子会社の(株)Dolphinにてメディア運営支援サービスを提供している。

(1) 人材事業
a) 人材派遣事業、人材紹介事業
主力の人材派遣事業では、ゲーム会社向けにゲーム・エンターテイメント業界の知見が豊富な即戦力人材を顧客のニーズに合わせて派遣している。求職者の中からクライアントニーズに合わせてエントリーレベルから業界での豊富な経験を持つ者まで幅広いレベルのクリエイターを採用し、取引先企業のニーズとクリエイターのスキルをマッチングすることで配属者数を拡大し、2022年3月末のクリエイター配属数は740人となっている。また、クリエイターに対しては、ビジネススキル研修やゲーム開発に必要な知識・スキルに関する研修などを通じたキャリアアップを図っている。一方、人材紹介事業では、ゲーム会社向け及びIT・Web業界向けに事業の中核を担うハイスキル人材を紹介し、リサーチから入社承諾まで一気通貫で支援する。このほか、豊富な業界経験及び高いスキルを有するプロフェッショナル人材をプロジェクトベースで提供する「フリーランス」も展開している。

クリエイターの一例を挙げると、ゲーム会社向けでは、予算・スケジュール・人員構成などプロジェクト全体を統括するゲームプロデューサー、スケジュール管理など制作現場を管轄するゲームディレクター、ゲームの企画を行うゲームプランナー、ゲーム開発のプログラミングを担当するゲームプログラマー、シナリオライター、カスタマーサポートまで多岐にわたる。また、IT・Web業界向けでは、プロジェクトの納期・予算・人員編成など全体の統括を行うWebプロデューサー、制作現場の管理を行うWebディレクター、デザインを担当するWebデザイナーなど幅広い。

b) 受託事業
受託事業はゲーム開発・運営のうち外部委託可能な業務を代行する事業で、主にゲームタイトルのデバッグ※業務を受託している。ゲームタイトルのデバッグ業務は守秘性が高いことから、2020年4月に新宿区に専用オフィスを立ち上げ業容拡大の準備を整えるとともに、営業・管理体制の強化を図っている。また、人材派遣事業との連携により、新規案件のリード獲得数増加に努めている。デバッグ業務のほか、英語・中国語・韓国語をはじめ幅広い言語に対応した多言語ローカライズサービスやカスタマーサポートも行っている。

※コンピュータプログラムのバグ・欠陥を発見及び修正し、動作を仕様どおりのものとするための作業のこと。


(2) メディア事業
女性向けメディア「Lovely」、占いメディア「Plush」、ゲームメディア「GAMEMO」などのメディアサイト運営により広告収入を得ている。また、メディアサイトの運営ノウハウを基にSNS運用代行などのプロモーション支援も行っており、ゲーム業界のみならず幅広い業種に対応している。現在の収益構造は広告収入が大半を占めているが、プロモーション支援受託に注力することで売上拡大を図る方針を掲げている。

 

 

3. 同社の強み
コンフィデンス<7374>の競争優位性は、高い採用力と営業力を背景とした人材のマッチング力にある。求職者数最大化と求人数最大化によりマッチング総量を最大化するために同社は、分業化・標準化に基づいた組織設計をし、オペレーションは極力簡易化することで、効率的な組織運営を展開している。この結果、2014年8月以降、後発参入にもかかわらず高い事業成長率及び収益率を実現している。

(1) 採用力
同社は、ゲーム業界に特化することで効率的に集客を行い、安定的な採用を実現している。ゲーム業界は人気業界のため能動的エントリーが多いものの、リファラル採用(知人からの紹介による採用)も一定割合を維持することで、年間応募者数は約1万人となっている。また、社員満足度の高さも採用力につながっている。幅広い職種から未経験者にも業務を紹介し、実践によるスキルアップの機会を提供しているほか、毎月実施している面談などによりクリエイターの不安や不満を早期に解消することで退職率を低水準に抑え、就業期間の長期化を実現している。一方、ゲーム業界に精通していることから、人材市場の環境変化に応じて求人広告を掲載していることに加え、広告媒体の費用対効果を逐次分析、出稿配分を変更している。これらの結果、採用LTV※は約19倍と、効率的に利益を生み出す仕組みを構築している。

※採用LTV(Life Time Value)は、1人当たり採用コストに対して1人が入社から退職までどれだけ売上総利益を稼得したか計算したもの。


(2) 営業力
同社は、経営陣の人材業界に対するノウハウとゲーム業界に特化することによる知見の早期蓄積により、高い営業力を実現している。全社員に占める営業職は約40%と高水準であることからも、企業・求人開拓力を重視していることが窺える。企業開拓に当たっては特定の顧客に依存しないよう取引社数を拡大する方針で、多数の顧客によりリスクが分散され一定水準の売上総利益率を確保している(2021年3月期の取引社数は102社、派遣事業の売上総利益率は32.7%)。また、継続的な顧客深耕により顧客当たり派遣数は増加傾向にあり、1社当たり配属数は2017年3月期の2.36人から2021年3月期には5.77人まで拡大している。

(3) マッチング力
同社は、ゲーム業界への知見から、顧客のニーズとクリエイターのスキルを勘案したマッチングを行うことで、高い精度のマッチングを実現している。また、豊富な求人数とクリエイター数も高い精度のマッチングに寄与している。一方、短期間の成約を実現するオペレーションを構築しており、約70%の求職者が採用面接から1ヶ月以内に配属先が決定している。これらの結果、クリエイター年間平均稼働率は98.8%(2020年4月~2021年3月)と高水準の稼働率を実現している。

(4) 効率的な組織運営
同社は後発参入にもかかわらず高い事業成長率及び収益率を実現しているが、これは分業化・標準化に基づいた組織設計をし、オペレーションは極力簡易化することで、効率的な組織運営を展開していることによる。このうち標準化については、事業KPIを設定したプロセスマネジメントを実行している。これにより、生産性向上を図るとともに、利益減少リスクを早期に発見し、損失を最小限にとどめている。

競争優位性に基づいた事業戦略及び効率的な組織運営により、同社は2017年3月期~2021年3月期の売上高CAGRが62.5%、営業利益のCAGRは72.0%と急成長を実現している。同社によると、人材派遣業界の営業利益率は10%以下が多数のなか、同社の2022年3月期の営業利益率は16.8%と高水準を維持していることからも、同社の強みが、高い事業成長率と収益率実現に寄与していることが窺える。
 

■業績動向

1. 2022年3月期の業績概要
コンフィデンス<7374>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比24.0%増の4,425百万円、営業利益で同23.3%増の745百万円、経常利益で同22.3%増の737百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同32.9%増の530百万円となり、売上高及び各利益は過去最高業績を達成した。また2021年6月に公表した業績予想比では、売上高が0.9%増、売上総利益が3.8%増、営業利益が3.5%増、経常利益が2.9%増、親会社株主に帰属する当期純利益が6.6%増と全指標で予想を上回って着地した。中期成長戦略に掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を目指し顧客深耕に取り組んだ結果、主力の派遣事業が堅調に推移した。

事業セグメント別概要は以下のとおり。

(1) 人材事業
売上高は前期比24.5%増の4,353百万円、売上総利益は同24.9%増の1,481百万円、セグメント利益は同24.4%増の1,166百万円と、高水準の利益を維持しながら堅調に推移した。主力のゲーム会社向け派遣事業の配属者数を拡大するため、新規取引先開拓のみならず、既存取引先のさらなる深耕に取り組んだことにより、派遣事業が堅調に推移した。

主要なKPIのうち、ストック型収益モデルの基礎となるクリエイター派遣配属数は、前期末比120人増の740人(期初想定は700人)と着実に増加した。また、クリエイターの稼働率についても高い水準で推移しており、第1四半期99.4%、第2四半期99.9%、第3四半期99.7%、第4四半期99.6%と、期を通して好調に推移した。

(2) メディア事業
売上高は前期比6.6%増の77百万円、売上総利益は同6.5%減の46百万円、セグメント利益は同3.1%増の13百万円となった。主要なKPIであるページビュー(PV)数は前期比0.4%増の137,787千PVと前期同水準で推移したものの、PV数当たりの単価は前期比で下落しており、アドネットワーク事業の売上高は減少した。これに対し同社では、収益の柱をアドネットワーク収益からプロモーション受託に転換する方針を掲げている。


財務安全性についての懸念はなし

2. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の資産合計は前期末比884百万円増の2,437百万円となった。流動資産は同849百万円増の2,268百万円となった。これは主に現金及び預金が784百万円、売掛金が69百万円増加したことによる。また、固定資産は同34百万円増の169百万円となった。

負債合計は前期末比133百万円減の782百万円となった。これは主に借入金が90百万円、未払法人税等が56百万円減少したことなどによる。純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益530百万円の計上などにより、同1,018百万円増の1,655百万円となった。

経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末比26.6ポイント上昇の67.6%となったほか、現金及び預金は1,724百万円であることから、財務安全性についての懸念はないと弊社では見ている。

2022年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは461百万円の収入となったが、主な要因は税金等調整前当期純利益の計上733百万円、法人税等の支払267百万円などによる。投資活動によるキャッシュ・フローは64百万円の支出となったが、主な支出は無形固定資産の取得10百万円、敷金及び保証金の差入による支出47百万円などによる。財務活動によるキャッシュ・フローは387百万円の収入となったが、主な収入は株式の発行による収入473百万円などによる。この結果、期中の現金及び現金同等物は784百万円増加し、当期末残高は1,724百万円となった。投資活動によるキャッシュ・フローが支出であるものの、営業活動によるキャッシュ・フローで賄える範囲内であることから、健全と弊社では見ている。
 

 

■今後の見通し

2023年3月期の連結業績についてコンフィデンス<7374>は、売上高を前期比17.5%増の5,200百万円、営業利益を同14.0%増の850百万円、経常利益を同14.9%増の848百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同10.3%増の585百万円と見込んでいる。また、中長期的な成長を踏まえ、2023年3月期の財務目標として売上高成長率15~20%、売上高総利益率30%超、営業利益率15%超を前提とした事業計画を策定している。主力のゲーム会社各社はコロナ禍でも堅調に推移していることから、中期成長戦略で掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を引き続き推進することで、さらなる成長を目指す。

事業セグメント別見通しは以下のとおり。

(1) 人材事業
売上高は前期比16.6%増の5,070百万円を見込んでいる。ゲーム会社各社の業績はコロナ禍でも堅調に推移しており、ゲーム開発に必要な人員を継続的に募集していることから、主力の人材派遣事業ではクリエイター配属数の拡大を進める。また、人材紹介事業においても、ゲーム会社やIT・Web系のクライアントを中心に人材採用意欲が旺盛であることを背景に、紹介人数の拡大を図る。受託業務事業においては、ゲーム会社からのデバッグ業務案件を中心に一定の需要が継続的に見込めるため、人材派遣事業のネットワークを利用したクロスセルを行うことで、案件数の維持を見込んでいる。

(2) メディア事業
売上高は前期比68.5%増の130百万円を見込んでいる。コロナ禍によって広告市場が鈍化している傾向にあるほか、グーグルの検索アルゴリズムアップデートの影響が見通しにくいことから、PV当たりの単価やPV数が安定的に推移するかどうか不透明な状況にあるとしている。これらに対応するため、記事制作の質向上や漫画コンテンツの増産を目指すともに、メディア事業に関連する受託案件を増加させることで収益構造の転換を図る方針だ。

 

 

■成長戦略

2021年6月にコンフィデンス<7374>は、中期及び長期の成長戦略を策定した。中期成長戦略として「顧客深耕及び事業連携の好循環(エコシステム)確立による事業拡大」を掲げ、(1) 対象顧客の網羅・深耕、(2) 提供サービスの多様化、(3) エコシステムの確立、を推進することで、3~5年後に売上高100億円を目指している。また、長期成長戦略として「対象市場の拡大とマッチングソリューションによるデジタルエンターテイメント領域への展開」を掲げ、(1) 対象市場の拡大、(2) 受託事業の拡大による知見の蓄積、(3) マッチング範囲の拡大・高度化、を推進することで、デジタルエンターテイメント領域への展開を実現する考えだ。

1. 中期成長戦略
(1) 対象顧客の網羅・深耕
同社は、一層の顧客深耕によりクリエイターの新たな就業機会を獲得し、顧客当たり派遣人数の最大化を目指す。具体的には、開発スケジュールをヒアリングすることで将来のニーズを把握したり、同一顧客の他部門を紹介してもらうことにより新たな人材ニーズの発掘を図っていく。これらを推進することで、ゲーム業界における派遣事業者として圧倒的No.1を目指す。顧客深耕による事業拡大は確実かつ効率的な手法であることから、顧客当たり派遣人数の最大化は十分期待できると弊社では見ている。

(2) 提供サービスの多様化
従来は人材派遣事業、人材紹介事業、受託事業がそれぞれ独自で部署開拓を行っていたため、顧客ニーズを識別できず、潜在的な機会ロスが発生していた。このため、派遣事業で構築したネットワークを生かし、人材紹介・受託業務のクロスセルによりさらなる収益拡大を目指す。この結果、人材紹介事業では顧客接点が増加し魅力的な求人獲得が可能となり、受託事業では開発スケジュールを認識することで、ニーズの正確な把握や適切なタイミングでのサービス提供が可能となる。顧客との接点が増加し、サービス提供が多様化することで、顧客当たりの収益の増大を目指す。

(3) エコシステムの確立
人材派遣・人材紹介・受託メディアの各事業が相互に連携し好循環を確立・拡大することで、経営効率を高め、ゲーム業界へのサービス提供機会増大を目指す。エコシステムの確立としては、メディア事業の運営ノウハウを利用して人材派遣事業や人材紹介事業の集客増大を図るほか、未就業のクリエイターの受託案件での就業、受託案件のOJTによるクリエイターのスキルアップ、高スキルのクリエイターの就業による請求単価上昇などを推進していく。また、エコシステムの拡大としては、人材派遣事業で構築したネットワークにより、受託案件の増加や人材紹介実績の増加を見込むほか、派遣機会の増加、メディア事業の集客ノウハウを活用したゲーム会社のプロモーション支援などを推進していく。このように各事業が循環性を持つことで経営効率アップを目指す。既存のネットワークを活用することは新規開拓と比較しコスト削減が見込めることから、利益率向上が期待できると弊社では見ている。

 

 

■コンフィデンス<7374>の成長戦略

2. 長期成長戦略


(1) 対象市場の拡大
業界・エリア・形態の多様化・拡大を図り、ゲーム業界特化からWeb・エンターテイメント領域への進出を推進していく方針だ。業界の多様化としては、主力のゲーム業界に加え、その周辺領域であるエンターテイメント・Web業界での人材ビジネス展開を進める。エリア拡大としては、知名度向上と事業規模拡大を目的に、1~3年以内に福岡・大阪に拠点を設置する予定であるほか、将来的には海外展開も視野に入れている。形態の多様化としては、人材派遣・人材紹介と契約形態の異なるフリーランス領域に参入していく。フリーランスとのネットワーク形成による高スキル人材のチーム組成と多様なサービス展開を目指す。弊社では海外進出に期待している。現時点では海外進出の時期など具体的なことは未定であるが、M&Aを活用した海外展開などもあり得ると弊社は見ている。

(2) 受託事業の拡大による知見の蓄積
受託事業は主にゲームタイトルのデバッグ業務を受託しているが、メディア関連の受託サービスを拡大し、人材プールの規模・多様性を拡大することで、多様な人材サービスの提供を目指している。メディア関連の受託サービスとしては、ゲーム会社が新タイトルを発売する際のプロモーション支援(SNSやインフルエンサーによる集客)や、ゲーム会社またはゲームタイトルを対象としたオウンドメディア開発・運用代行を実施する。また、人材プールの規模・多様性としては、プロモーション支援、デバッグ支援のほか、翻訳、開発など様々な受託業務をこなすことで、多様な人材プールを確保していく。このほか、社員相互に新たなスキルを身に付ける機会を得られるようLab(laboratory)を設置し、ここで得たスキルを使った新たなサービスを提供する方針だ。

(3) マッチング範囲の拡大・高度化
同社は、マッチングソリューションを拡大することでデジタルエンターテイメント領域への展開を目指している。具体的には、ゲーム会社とのネットワークを利用して、ゲーム業界のXR技術と様々な業種の企業をマッチングするとともに、人材派遣事業・受託事業で蓄積したノウハウによりマッチング後の企業に対して知見を持った人材が支援することで、様々な企業を対象にしたデジタルエンターテイメント領域に進出することを目標としている。既存顧客であるゲーム会社とゲーム会社の技術をビジネスに活用したい他業界の企業をマッチングすることのみならず、プロモーションや人材支援も併せて提供することにより、様々な業種の企業へアプローチしていく。近年急速に浸透しているメタバースとゲーム業界のスキルは親和性が高いことから、同社及びクリエイターのノウハウを生かしたデジタルエンターテイメント領域への進出は、実現可能性が高く、2022年5月12日に発表した役員人事はゲーム業界への知見を持つ役員のみならず、IT業界への知見も豊富な役員を加えていることから同領域への進出を意図したものであると弊社では見ている。既存の事業資産を活用し、新たな人的チャネルを利用した多角化戦略と言え、将来像がイメージできる魅力的な成長戦略であると評価できる。

 

 

■株主還元策

コンフィデンス<7374>は、将来の事業拡大と財務体質の強化のために必要な内部留保を行いつつ、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針とし、配当性向30%超及びDOE10%超を目標としている。

この基本方針に基づき、2022年3月期は1株当たり40.0円(前期はなし)の配当を実施し、配当性向は33.8%、DOEは15.7%となった。2023年3月期については、1株当たり45.0円(前期比5.0円増)を予定しており、配当性向は35.2%、DOEは11.6%となる見込みだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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株探ニュース

 

―4日から発表始まる、新型コロナウイルスや環境関連の研究への注目度高まる―

 今年も来週からノーベル賞発表シーズンが始まる。14年以降、17年を除けば19年まで日本人の受賞者が毎年輩出され、株式市場では10月はノーベル賞関連株人気に沸くことが恒例となった。20年は日本人の受賞者は出なかったが、今年は2年ぶりの受賞に期待が膨らむ。受賞となれば株式市場が活気づくのは必至だ。21年のノーベル賞候補株を探った。

●米クラリベイト・アナリティクスは3人の候補を挙げる

 今年のノーベル賞は10月4日の医学生理学賞を皮切りに、5日に物理学賞、6日に化学賞、7日に文学賞、8日に平和賞、11日に経済学賞が発表される。米情報企業のクラリベイト・アナリティクスは今年のノーベル賞有力候補16人を挙げた。このうち、日本人は大阪大学の岸本忠三特任教授、平野俊夫・量子科学技術研究開発機構理事長、中部大学の澤本光男教授の3人が候補とされた。

●医学生理学賞は阪大・岸本教授など有力、mRNAワクチンにも注目

 4日に発表される医学生理学賞の有力候補とされるのが、前出の岸本忠三・大阪大学特任教授と平野俊夫・量子科学技術研究開発機構理事長だ。両氏は、体の免疫で重要な役割を担う「インターロイキン6(IL-6)」を発見。その発見は関節リウマチ治療薬「トシリズマブ(アクテムラ)」の開発につながった。同薬は、中外製薬 <4519> と大阪大学が共同開発しており、新型コロナ感染症治療薬としても関心を集めている。

 また、京都大学の森和俊教授は、がんや糖尿病、パーキンソン病とかかわりのある異常なたんぱく質の蓄積を防ぐ「小胞体ストレス応答(UPR)」の仕組みを解明。アステラス製薬 <4503> は、米国企業とUPRを調節する治療薬に関して提携契約している。大阪大学の坂口志文特任教授は、免疫が暴走しないように抑える「制御性T細胞」を発見した。医学生物学研究所を子会社に持つJSR <4185> が注目される。東京大学名誉教授の中村祐輔氏は遺伝子の多様性と病気とのかかわりを研究し、がん治療の個別化に関する「オーダーメイド医療(個別化医療)」を提唱している。同氏はオンコセラピー・サイエンス <4564> [東証M]の創業者の1人でもある。

 海外では新型コロナのワクチンとして実用化された「mRNAワクチン」を開発した独ビオンテックのカタリン・カリコ氏が注目されている。受賞となれば、新型コロナワクチンを共同開発する米ファイザーのほか、米モデルナなどが関心を集めそうだ。

●物理学賞はカーボンナノチューブや高温超電導など

 5日に発表される物理学賞では、「カーボンナノチューブ」研究の飯島澄男・名城大学終身教授が有力候補。カーボンナノチューブは炭素で構成され、その強さはダイヤモンドの2倍とも鋼鉄の数十倍ともいわれる。クラレ <3405> やGSIクレオス <8101> などが関連銘柄だ。

 東京大学の香取秀俊教授は「光格子時計」を開発した。光格子時計は300億年に1秒しかずれないといわれる。島津製作所 <7701> やNTT <9432> が共同研究機関となっている。鉄化合物系の高温超電導物質を発見した東京工業大学栄誉教授の細野秀雄氏にも注目。関連銘柄はリニアモーターカーや高温超電導コイルに絡む住友電気工業 <5802> や古河電気工業 <5801> など。

 量子コンピューターに絡んで東京大学の古澤明教授や東京工業大学の西森秀稔特任教授なども候補とされている。フィックスターズ <3687> やエヌエフホールディングス <6864> [JQ]など。電気自動車(EV)やドローンなどに使われる「ネオジム磁石」を開発した大同特殊鋼 <5471> の佐川眞人顧問も候補となっている。

●化学賞は中部大・澤本教授、東大・藤田教授など

 6日に発表される化学賞では、中部大学の澤本光男教授が前出のクラリベイト・アナリティクスで有力候補に挙げられた。同氏は化学品の分子構造を制御する技術である「精密重合」で、「金属触媒を用いたリビングラジカル重合の発見と開発」が評価された。カネカ <4118> や大塚ホールディングス <4578> などが関連銘柄となる。

 また、東京大学卓越教授の藤田誠氏は、分子同士がひとりでに結びつく「自己組織化」と呼ばれる現象を活用。金属イオンと有機分子を混ぜることで複雑な構造の材料を作ることに成功した。自己組織化ペプチドを手掛けるスリー・ディー・マトリックス <7777> [JQG]などが関連銘柄に挙げられる。京都大学の北川進特別教授は微細な穴を持ち、内部に物質を貯蔵できる「多孔性配位高分子(PCP)」を開発。気体を効率的に吸着することができ、二酸化炭素の回収や 燃料電池の開発などに寄与することが期待されている。京都大学発PCPベンチャー「アトミス」には三井金属 <5706> が出資している。

 中部大学教授の山本尚氏は、医薬品などの材料として注目されるアミノ酸化合物「ペプチド」を効率的に合成する手法を開発した。同氏は東レ <3402> の研究員だった。

 桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授は、「ペロブスカイト型」と呼ばれる結晶構造物を用いて、板に塗るだけで発電が可能という薄くて軽い低コストでの次世代太陽電池を考案したことが評価されている。第一稀元素化学工業 <4082> や、燃料電池向けにペロブスカイト化合物を取り扱う堺商事 <9967> [東証2]などが注目される。

●文学賞は村上春樹氏、多和田葉子氏が候補に

 7日には文学賞が発表される。村上春樹氏が毎年候補に挙がるほか、ドイツ在住の日本人作家である多和田葉子氏も注目されている。丸善CHIホールディングス <3159> や文教堂グループホールディングス <9978> [JQ]、三洋堂ホールディングス <3058> [JQ]などに目を配っておきたい。

 更に11日に発表される経済学賞では、米プリンストン大学教授の清滝信宏氏が候補となっている。同氏は金融危機の理論を確立したことが評価されているが、旧・池田銀行の創業家の生まれであり、池田泉州ホールディングス <8714> が関連銘柄となる。

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―“眠る”3兆円・巨大市場を追え 開花を待つ周辺企業を徹底リサーチ―

 人工知能(AI)やIoTなど最先端の技術を駆使して睡眠の質を高める「スリープテック」に取り組む企業が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言や外出自粛などにより、巣ごもり・インドア志向が高まるなか、睡眠に関わるスマートフォンアプリなどの利用が急増傾向にある。日本は、睡眠不足大国と言われているが、慢性的な睡眠不足が労働生産性を低下させ、年間で15兆円もの経済損失があるとの試算もある。また、働き方改革の観点から睡眠の質を改善するニーズも高い。

 そもそもスリープテックが注目されるようになったのには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速化が一役買っている。良い睡眠は自己管理次第で獲得できる可能性が高いが、睡眠導入剤の服用に頼る人も少なくない。ただ、睡眠導入剤や睡眠薬の投与で一時的な効果があったとしても、日中に過度な眠気に襲われるなどの副作用が出るなどの限界がある。そこで睡眠を促す技術が注目され、市場として確立していった。2018年、米ラスベガスで開催された国際家電市「CES」で「スリープテック」ゾーンが初めて登場し睡眠に関するアプリやデバイスが広く知られるようになった。その成長性や将来性は高いことから、株式市場でも関心を集めそうだ。

●異業種の巨人たちの参入が相次ぐ

 スリープテックとは、ITなどで睡眠を支援する製品やサービスのこと。スリープテック関連の世界市場は、精神疾患を抱える人口の増加と、健康意識や睡眠障害の治療に対する意識の高まりを追い風として、24年には1000億ドル前後に拡大するとの試算もある。生活スタイルの変化や、長時間座る生活が続く傾向も、今後数年間の市場成長を支える要因となるようだ。市場が1兆数千億円規模とされる国内に関しては、美容やスポーツ、介護、医療など周辺分野にも快適な睡眠をサポートするさまざまなグッズやサービスが生まれ、潜在市場は3兆~5兆円と言われており、今後需要の裾野が広がっていくことが見込まれている。

 こうしたなか、米アップルやアルファベット傘下の米グーグルなど異業種の巨人たちはヘルスケア・健康分野に取り組み、睡眠データなど個人の健康記録の構築に力を入れている。グーグルの第2世代Nest Hubの「睡眠モニター」は、就寝時の動きや呼吸を記録するなど健康状態を改善するのに役立つ。また、アップルが21日にリリースした「watchOS 8」では呼吸アプリケーションをリニューアルしたほか、睡眠時における1分間あたりの呼吸回数を測定できるようになるなど機能を進化させている。一方で国内においては、NTT東日本(東京都新宿区)がスリープテックを専業とするスタートアップのブレインスリープ(東京都千代田区)と協業して睡眠課題の解決を目指すとしている。

●先駆する帝人やフクダ電子

 ヘルスケア総合サービスに力を入れている帝人 <3401> は、睡眠呼吸障害関連機器を手掛けている。また、睡眠を“見える化”する「Sleep Concierge(スリープ コンシェルジュ)」をFiNC Technologies(東京都千代田区)と共同開発し展開。同サービスでは、センサーを寝具の下に置くだけで独自のアルゴリズムにより睡眠時の生体情報を収集し睡眠のアドバイスもする。睡眠に関する国内有数の知見を持つ同社は、睡眠を軸にヘルスケア事業を強化する構えで、今後の取り組みにも注目が集まる。

 また、睡眠評価装置スリープテスタなどを展開するフクダ電子 <6960> [JQ]にも注目したい。同社は呼吸・循環器系の医療機器分野でリードしているが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などを検出する睡眠呼吸検査機器でも実績が高い。22年3月期連結営業利益予想は前期比24.3%減の150億円を計画しているが、第1四半期(4-6月)営業利益が前年同期比79.5%増の41億9500万円と順調に推移している。

●新たな成長分野で開花する寝具メーカー

 安眠をサポートするためのグッズと言えば、枕やベッドなどの寝具が欠かせない。パラマウントベッドホールディングス <7817> が7月30日に発表した第1四半期(4-6月)営業利益は、前年同期比2.2倍の31億2600万円と高変化を見せた。同社は7月、NTT西日本(大阪市中央区)と共同出資を行い、睡眠データのオンラインヘルスケアサービスを提供する新会社を設立した。新会社の「NTTパラヴィータ」は、高精度センサーを貸し出すことで睡眠時のデータを集め、ICTを活用した未病早期発見の支援や健康促進のための情報提供をしている。パラベッドは従来から医療・介護ベッド及びマット型睡眠センサーで国内トップシェアを誇っており、スリープテックの流行が同社にとって新たな収益源となる。

●スリープテックへの取り組みを加速するMTG

 睡眠を商機とみるのはベッドメーカーに限ったものではない。美容・健康をテーマに魅力ある商品を企画開発するMTG <7806> [東証M]も7月29日、不眠症対策製品「NEWPEACE Medical Sheet(ニューピース メディカルシート)」を発売。同製品は医療機器認証を受けたスリープテックによるもので、軽くて持ちやすいサイズながら、不眠症を緩和する効果がある「電位治療」と、「自然な体温変化」をサポートする「ヒートナビゲーター」を融合させているのが特長だ。同社は20年1月、睡眠ビジネスの社会ニーズに対応するため、AI・テクノロジーによるトータルソリューションNEWPEACEブランドを設立している。

●「みせる」ヘルスケア製品で攻めるコラントッテ

 コラントッテ <7792> [東証M]は7月8日付で東証マザーズに新規上場したニューフェース。医療機器やヘルスケア製品の製造・販売を手掛け、肩こりが緩和する磁気ネックレスなどを扱う。こだわったデザイン性で卓球の伊藤美誠選手をはじめとして多くのアスリートが着用しており、「みせる」家庭用磁気治療器という新たな市場を創造している。また、睡眠をサポートする磁気枕「マグーラ」なども展開する。8月6日に発表した第3四半期累計(20年10月-21年6月)の単独営業利益は5億6800万円となった。前年同期は四半期決算を発表していないため比較はできないものの、通期計画の6億2200万円(前期比23.4%増)に対する進捗率が91%に達していることから、上方修正の可能性も期待されている。

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―東京ゲームショウが今月末開幕、仮想空間に大手企業の参入相次ぐ―

 ゲーム見本市「東京ゲームショウ(TGS)」が今月末に開幕する。1996年の第1回開催から25周年となる今年のTGSでは、同イベントとしては初の試みとなるVR(仮想現実)会場の新設が話題を呼んでいる。ビッグイベントにおけるこうした取り組みは、VRに対する一般の関心を高めることになり、普及を後押しする一つの契機となり得る。また、ここVR分野における新たなテーマとして「メタバース(仮想空間 )」が浮上しており、大手企業の参入が相次ぐなど注目を集めている。5G時代に本格的な普及期を迎えることが見込まれるVRの動向を追った。

●TGS初のVR会場

 今月30日から10月3日までの日程で開催されるTGSは、昨年に引き続きオンライン開催となるが、今年は新たにVR会場が設置されることとなった。来場者はアバター(分身)として参加し、バーチャル上で出展企業の展示スペースやコンテンツを楽しむことができるほか、ECサイト「Amazon」と連携した物販なども行われる。この企画には、オフィシャルVRテクノロジーパートナーとして参画するNTT <9432> グループをはじめ、出展企業としてディー・エヌ・エー <2432> やガンホー・オンライン・エンターテイメント <3765> 、コーエーテクモゲームス(横浜市西区)、スクウェア・エニックス(東京都新宿区)などが名を連ねている。

 今回この会場のシステムは、電通グループ <4324> とその出資先でVRスタートアップのambr(アンバー、東京都中野区)が手掛けた。アンバーが法人向けに提供しているメタバース構築プラットフォームを活用し、大型イベントのVR化を推進するシステムを共同開発した。電通グループは今後、TGSへのシステム提供を通じて得たノウハウを生かし、イベント向けVRソリューションの展開を目指していく考えにある。

●関連銘柄をマーク

 TGSは毎年話題にのぼるイベントだけに、今回のVR会場の新設は大きな注目を集めることになりそうだ。今後、マーケットでもVRの本格普及に向けた動きに関心が向かうとみられ、関連銘柄へのマークは怠れない。

 ソフトバンク <9434> は15日、ゲームやアプリ開発などを手掛けるポケット・クエリーズ(東京都新宿区)と協業し、10月から遠隔で集合研修や作業支援ができるサービス「VR遠隔支援」を提供すると発表した。技術者不足が課題となっている製造業などでの活用を目指しており、通信ネットワークやクラウド環境もあわせて提供する。なおポケット・クエリーズは、エムティーアイ <9438> が2019年に持ち分法適用会社化している。

 サイバネットシステム <4312> は4月、ホンダ <7267> とVRを活用した新技術を共同開発したと発表、自社のVR設計レビュー支援システムに同技術を実装した。ブイキューブ <3681> は8月に、バーチャルイベントシステムを手掛ける米タッチキャストの製品を国内独占販売することを明らかにした。メタリアル <6182> [東証M]は、旅行や音楽などをVRで体験できるサービスに注力しており、ここ相次ぎ提供を始めている。このほか関連銘柄として、傘下でVR動画配信サービス「360Channel」を手掛けるコロプラ <3668> 、VR映像配信サービス「VR MODE」を提供するエムアップホールディングス <3661> をはじめ、Kudan <4425> [東証M]、ピクセラ <6731> [東証2]、メディア工房 <3815> [東証M]などに注目。

 また、ゲーム開発向けミドルウェアなどを手掛けるCRI・ミドルウェア <3698> [東証M]やシリコンスタジオ <3907> [東証M]のほか、ボルテージ <3639> 、ブロードリーフ <3673> 、ピー・ビーシステムズ <4447> [福証Q]なども押さえておきたい。

●VRの進化系「メタバース」に脚光

 エンターテインメント分野を中心に活用が進むVRだが、その進化系としてここ注目度が高まっているのが「メタバース」だ。メタバースとはインターネット上の仮想空間のことで、アバターを介して空間内を自由に移動したり、参加者同士で交流したりすることができるというもの。8月にバーチャル会議室「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルーム)」を発表した米フェイスブックAをはじめ、アップルやマイクロソフトなど米IT大手の動きが注目されるほか、今年3月にニューヨーク証券取引所に上場したオンラインゲーム運営の米ロブロックスにマーケットの視線が向かっている。

 国内では、NTTが昨年に3D空間型のオウンドメディア「DOOR(ドア)」を提供開始、KDDI <9433> も昨年から渋谷区と連携した配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」などをサービス展開している。グリー <3632> は8月にメタバース事業へ参入することを表明した。

 関連銘柄としては、メタバース自体がまだ立ち上がり途上にある新しい分野だけに、取り組みを進めている企業は限られるのが現状だ。メタバースプラットフォームの構築とその空間内で提供するゲーム開発などを手掛けるガーラ <4777> [JQ]、自治体向けWi-Fi敷設事業を展開する企業と協業し、観光名所のメタバース化や特産品のNFT化など地方創生を目指した事業に取り組む燦キャピタルマネージメント <2134> [JQ]など。また、寺院運営を行う法人と納骨堂の共同販売をはじめ、寺院のデジタルトランスフォーメーション(DX)化やメタバース化に向けて提携したGFA <8783> [JQ]などがある。

 このほか今後の展開が期待される銘柄として、まずはゲーム関連株に着目したい。特に、バーチャル空間が舞台のゲームを手掛ける企業は要マークで、ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」を販売する任天堂 <7974> 、オンラインゲーム「フォートナイト」を開発した米エピック・ゲームズに出資するソニーグループ <6758> などからは目が離せない。また、メタバース内での経済活動にNFTを活用する動きもあり、ブロックチェーンに絡む銘柄群にも目を配っておきたい。

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―EV・再生エネの隠れた主役を担う、巨大市場創出で次世代デバイスにも脚光―

 全体相場は足もと日経平均が調整局面に入っているものの、大勢上昇トレンドが崩壊したわけではない。中国不動産大手の恒大集団の資金繰り不安が重荷となっているが、23日の社債利払いが実施されるとの報道で緊迫感はやや和らいだ。それでも、日本時間あす(23日)未明に判明するFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見を前に、22日の東京市場では積極的な買いは手控えられる格好となった。しかし、FOMC通過後は良くも悪くも眼前の霧が晴れる。目先は悲観色の強い相場となっているが、弱気に傾き過ぎるとチャンスを逃すことも多い。個別には好業績銘柄が多く、総裁選に絡んでテーマ物色の動きも再燃しそうだ。先物主導で全体相場が軟化する局面は、実態ある銘柄に照準を合わせて押し目買いを狙うチャンスとなる。

●世界的なEVシフトで新たな成長神話

 世界的に 半導体需要は極めて旺盛だが、そうしたなか、ここ株式市場で成長性に改めて耳目が集まっているのが「パワー半導体」だ。微細化や高集積化の最先端技術を主戦場とする民生用半導体と比べ地味な存在ながら、次世代産業の要として注目度が増している。

 パワー半導体とは、「演算」や「記憶」などデータを扱うメモリー半導体とは異なり、電子機器へ電力を供給したり制御したりする役割を担うデバイスを指す。あらゆる電子機器は電源回路を搭載しているため、パワー半導体は電子機器すべてにおける必須デバイスとなっている。モーターの駆動や交流と直流の変換といった“力仕事”がパワー半導体に課せられた役割だが、シリコン半導体の高性能化に伴い現在は1000ボルト以上の電圧を取り扱うことが可能となっている。大出力モーターの動力に対応し、具体的には産業機械向けなどの市場が大きいが、最近はエレクトロニクス武装が進む自動車向けで需要が伸びており、今後については世界的にガソリン車からのシフトが進む電気自動車(EV)向けで飛躍的に需要が伸びることが予想されている。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、EVなどエコカーの普及台数は年30%前後のペースで拡大し、2030年には世界で1億4500万台に達すると試算されている。これに合わせ、パワー半導体の市場規模も急成長を遂げることになる。半導体需給逼迫が言われるなかもメモリー市況は今年7~9月期にピーク越えとの見方も出ているが、パワー半導体については陰りがみられない。シリコン半導体だけではなく、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など化合物半導体の新たな市場が創出され、更にこれらに続く次世代パワー半導体として酸化ガリウム型デバイスなどが注目されている。

●パワー半導体業界で先駆する重電大手

 日本はパワー半導体で世界でも一頭地を抜いた存在感を示している。個別企業でみれば、パワー半導体業界で首位に位置するのが独インフィニオン、第2位が米オン・セミコンダクターで、この2社が業界の双璧となっているが、そのすぐ後に続くのが三菱電機 <6503> や東芝 <6502> 、富士電機 <6504> といった重電メーカー大手で、更にルネサスエレクトロニクス <6723> 、ローム <6963> なども含め、世界のパワー半導体売上高ランキング上位10傑に日本企業が5社もランクインする状況にある。日本は紛れもなくパワー半導体大国といえるが、パワー半導体はカスタム性が高く参入障壁が高いことも、相対的に日本メーカーの地位を高めており、株式市場でも海外投資家の投資対象としてスポットライトが当たりやすいセクターとなっている。

 富士電機は既に23年3月期までにパワー半導体設備投資に1200億円を投じる計画を公表していたが、直近8月下旬にはパワー半導体に400億円を追加投資し、マレーシア製造工場の生産能力増強に動き出すことが伝えられている。また、今月13日に昭和電工 <4004> は、ロームとパワー半導体向けSiCエピタキシャルウエハーに関する長期供給契約を締結したと発表した。同ウエハーの性能向上に向けたロームとの技術的連携を一段と強固にする狙いである。三菱電機は 再生可能エネルギー電源向けとして業界初の電圧2キロボルトに対応したIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)モジュールを6月末に新製品として発売。また、8月下旬には広島県福山市のパワー半導体工場に初の300ミリメートルウエハーの新ラインを設置し、11月にも稼働させる計画にあることが一部で報じられ、その後に株価水準を切り上げた経緯がある。

 日本が世界において圧倒的優位なポジションを確立しているパワー半導体は、脱炭素社会に向けた国際的な取り組みが加速するなか、EVや再生可能エネルギー分野で不可欠のデバイスとして注目され、株式市場でも大きなテーマ性を発揮していくことになる。今回の特集では、ここから更なる株価変貌妙味を内包する関連有力株を5銘柄エントリーした。

●ここから注目必至のパワー半導体5銘柄

◎Mipox <5381> [JQ]

 表面加工処理で使う液体研磨液剤の大手で、旺盛な半導体投資需要を背景に採算性の高いウエハー用やHDD用で需要を捉えるほか、光ファイバー向けでも安定した実力を持つ。次世代パワー半導体分野にも積極展開し脚光を浴びている。次世代パワー半導体材料のSiCやGaNウエハーに含まれる「転位欠陥」を非破壊可視化できる新技術を開発していることから、同分野の市場拡大に大きく貢献する公算が大きい。また、今年4月には連結子会社だった日本研紙を吸収合併し、一般研磨剤にもテリトリーを広げている。直近では今月7日に、次世代パワー半導体材料として期待されるダイヤモンドウエハーのエッジ研磨加工サービスを提供開始したことを発表し、これを手掛かりに投資資金を呼び込んだ。22年3月期営業利益は前期比2.2倍の8億円を計画している。株価は実質的な青空圏で強調展開を示しているが、成長力を考慮すればここからの上値余地は大きいといえる。天井も高く、今から20年前の01年2月には4333円(修正後株価)の最高値をつけている。

◎タカトリ <6338> [東証2]

 精密切断加工機(マルチワイヤソー)を収益の主力とし、世界的な半導体設備増強の動きが追い風となっている。ウエハー保護テープ関連機器やチップマウンターなどの 半導体製造装置も手掛ける。パワー半導体市場の拡大とともに、SiC材料切断加工装置は同社の今後の成長ドライバーとなる可能性が高い。直近では今月8日にパワー半導体向けSiC材料切断加工装置の大口受注があったことを発表し、株価も活況高となった経緯があるが、同商品分野では他社の追随を許さない商品競争力を誇っているだけに、今後も中長期的に受注獲得が見込まれる。21年9月期業績はトップラインが17%強の高い伸びを見込み、営業損益は2億4100万円の黒字(前期実績は7100万円の赤字)と急回復を予想するが、第3四半期(20年10月~21年6月)時点で2億7000万円に達し通期計画を超過しており、一段の上方修正が濃厚とみられている。1000円近辺の株価は買い場と判断され、早晩年初来高値1335円奪回を通過点に16年5月高値1450円も意識されそうだ。

◎安永 <7271>

 自動車部品会社で、エンジンのクランクシャフトとピストンをつなぐコネクティングロッドでは世界首位級。インバーターハウジングやトランスアクスルケースなど電動化領域でもクオリティーの高い部品を製造している。また2次電池分野では全固体電池やリチウムイオン電池の加工技術の開発に継続的に取り組む。トヨタ自動車 <7203> に納入する燃料電池車向け外観検査ユニットはトヨタから「技術開発賞」を受賞するほどの高評価を受けている。後工程の半導体製造装置を手掛けており、パワー半導体向けでも最終工程に使う検査測定装置で高い商品競争力を有している。業績は回復途上にあり、22年3月期は営業損益が2億1000万円の黒字(前期は5億1700万円の赤字)を見込む。収益水準はまだ低いものの、株式市場では自動車部品にとどまらない幅広い製品エリアでの高度な技術力が、折に触れ注目されるケースが多い。株価は今年3月9日につけた1489円の高値奪回と同時に、上値のフシ目となっている1500円ラインを突破しての本格上昇相場への期待がかかる。

◎テセック <6337> [JQ]

 半導体製造装置関連メーカーで、半導体の動作試験(性能評価)を行うためのハンドラや測定を行うテスターを製造している。ハンドラは国内トップクラスで、個別半導体用テスターについても世界屈指の実力を持つ。また、パワー半導体向け実績が高く、車載用パワーデバイス測定システムなどが好調で業績に寄与している。車載向けでは次期テスターの量産機を投入し来期以降の収益に反映させる見通し。高付加価値化に重点を置き、パワーデバイス用テスターの需要を戦略的に開拓していく構えだ。業績は22年3月期に回復色を鮮明とし、営業損益は前期の4億4800万円の赤字から一転して15億円の黒字化を見込む。これは01年3月期以来21期ぶりの利益水準となる。株価は6月3日に3500円の年初来高値をつけたが、これは上場した2000年の11月以来の高値であり、ここをクリアすれば実質青空圏に突入する。時価総額150億円弱と小型で足が速い。再上昇に転じれば比較的短期間で3000円大台復帰から、年初来高値が視界に入るケースも考えられる。

◎トレックス・セミコンダクター <6616>

 自動車や産業機器向けを中心に電源ICの製造販売を手掛けるが、小型化や省電力技術で優位性を持ち、高水準の需要を捉えている。日本国内では100%連結子会社のフェニテックセミコンダクターがディスクリート半導体及びパワー半導体を生産しているが、ファンドリー(受託生産)で台湾のTSMCと同形態のビジネスモデルとなっている。また、ファンドリーの業態にして自社開発のオリジナル製品を提供できる強みを有している点もポイント。業績は21年3月期営業利益が前の期比78%増の12億900万円と急回復を果たしたが、特筆に値するのは22年3月期の営業利益見通しであり、発射台が高くなった前期実績から更に倍増となる25億円を見込んでいる。これは18年3月期に達成した過去最高利益22億1200万円を大幅に上回る。16倍台のPERはこの成長力を考慮すれば割安といってよく、2600円台の株価は拾い場となっている可能性大。7月14日に3330円の上場来高値をつけてからは2割強の調整を入れていることで値ごろ感も漂う。

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―巨大債務の不履行懸念で市場は戦々恐々、中国政府の関与に向けた期待も―

 秋の3連休明けとなった21日の東京市場を中国不動産大手、「恒大集団(エバーグランデ)」問題が急襲した。巨額債務を抱え資金繰り不安に揺れる同社の社債償還日が近づくなか、20日は欧米株式市場が急落し、この日の日経平均株価も大幅安となるなど世界市場はリスクオフ姿勢を強めている。市場には、「中国版リーマン・ショック」への警戒感は強い一方で「中国政府は影響を一定の範囲内にとどめ国際問題化にはさせないはず」との観測も根強い。市場を揺さぶる恒大集団問題の行方を探った。

●約30兆円規模の巨額負債を市場は懸念

 21日の日経平均株価は、先週末17日に比べ660円安の2万9839円と急落し、9日ぶりに3万円台を割り込んだ。中国「恒大集団」に対する懸念で、前日のNYダウが614ドル安と大幅安となったことを受けたもので、3連休明けの東京市場は急落し取引を終えた。この急落のキッカケとなった中国の恒大集団は不動産開発大手で中国最大級の民間企業と言われる。不動産事業で急成長を遂げてきたが、近年は多角化を推進。その負債総額は約1兆9700億元(約33兆円)ともみられている。

 中国は、「共同富裕(ともに豊かになる)」の理念のもと不動産市場の価格上昇抑制策などを推進。この政策の影響もあり中国の不動産市場には変調が起こっているとみられている。そんななか、膨大な負債を抱える恒大集団には今月下旬から社債の利払い日が集中し、債務不履行(デフォルト)リスクが高まっている。香港市場に上場する同社の株価は年初から8割強下落。同社株の下落と併せ、香港の不動産株などに売りが膨らんでいる。2008年に起こった米国リーマン・ショックが9月に発生したことの連想もあり、市場には「中国版リーマン・ショックが発生するのではないか」との警戒感が急速に強まっている。

●1社のみの問題かが焦点、中国景気への影響も懸念視

 「不動産関連の問題企業が恒大集団だけなのか、それとも似たような状態が他にもあるかが焦点だろう」と上田ハーローの山内俊哉執行役員は指摘する。当面は、同社が社債の償還に応じられるかが注目されるが、巨額債務を抱えていても、1社にとどまれば世界の金融市場は対処が可能だ、とみられている。また、もし恒大集団が債務不履行に陥っても、融資した銀行団などが中国系にとどまれば、中国国内での問題に収めることもできる。しかし、複数の潜在的な問題企業がある場合は問題が複雑化する。また、「恒大集団の問題が中国景気へと悪影響を与えれば、結局、世界景気の悪化要因として跳ね返ってくる」と山内氏は懸念する。

●アリババ叩きなどと同様の構図、中国政府のメッセージを注視

 市場には、不動産バブルの崩壊に対する警戒感もあり「中国経済は大きなターニングポイントを迎えた」との見方もある。しかし、フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、「基本的には市場の状況は、中国政府がアリババやディディ・グローバルADR、あるいは塾やゲーム産業を叩いたのと同じ構図。不動産価格の抑制策を進めるなか、“目の上のたんこぶ”的な存在だった恒大集団を一罰百戒的な形で叩いているのだろう」とみる。

 このため、恒大集団の社債にはデフォルトリスクは残るが、大きな広がりはない方向に進むことも期待されている。「近く中国政府は、恒大集団の問題を他社には波及させない姿勢を示すのではないか」と笹木氏は予想する。特に同社の社債の利払い日は23日に最初のヤマ場を迎えるとみられており、これに向け、中国政府がしっかりとしたメッセージを出せば、市場は落ち着きを取り戻すとの観測は根強い。

●外国ファンドへの損失波及を警戒、日本株は押し目買いの声も

 ただ、恒大集団の社債がデフォルトとなった場合、ファンドを含む投資家に損失が発生する懸念はある。今春に巨額損失が表面化したアルケゴス・キャピタルのような例は出てくるかもしれない。中国政府によるコントロールされたなかでの企業の経営破綻なら、市場に対する影響は限定的で、リーマン・ショック再来の懸念も後退するだろう。ただ、「米国のサブプライムローン問題は、まず欧州のBNPパリバでの不良債権問題として発覚し、それから1年後にリーマン・ショックとして表面化した。同じような展開はないかが心配だ」と前出の山内氏はみている。

 そんななか、足もとで米国市場は軟調な値動きにあるが、「いま最も相場の環境が良いのは日本。恒大集団に対する懸念で株価が下落すれば恰好の拾い場となるだろう」と笹木氏は予想している。

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―DX推進のカギを握るAI、とてつもない成長ステージで出番を待つ有力株は―

●DX時代に不可欠のナレッジ

 自民党総裁選の告示が17日午前に行われ4氏が立候補し、株式市場でも新政権のもとでの新たな政策に期待を寄せ、株価は終日強調展開を維持した。各候補それぞれの政策ビジョンを掲げ、自民党次期総裁の座を争うことになるが、誰が勝利したとしても世界標準に向けた不可逆的な取り組みであるグリーンシフト(脱炭素化)とデジタルシフト( DX化)、この2つは政策の重要課題として外すことはできない。

 くしくも今月1日からデジタル庁が始動したが、これまでの縦割り行政の弱みを克服し、デジタル分野の機能強化を政策テーゼとした取り組みを進めていくことになる。中長期的な視野に立って、DX推進のカギを握るのはずばり人工知能(AI)である。AIの活用なくして、もはやデジタル革命の新たなスタート地点に立つことすら難しい状況にある。AIは水のように柔軟にあらゆる産業に浸透し、時に融合して爆発的なイノベーションの源となる。製造業はもとより、金融、不動産、インフラ、医療、流通など、製品やサービスの付加価値を高めるうえでAI技術は必須の条件となっている。株式市場でもDX時代に不可欠のナレッジとして今後一段と輝きを強め、同関連銘柄にはマーケットの熱い視線が向けられることになりそうだ。

●AIを制するものが世界を制する時代

 AIを飛躍的に進歩させたディープラーニングが登場して、今年で10年目となる。完全情報ゲームである囲碁や将棋の世界では、いずれも2017年5月に、当時の人類最強者との闘いでAIソフトが圧勝、“人類超え”として一つのエポックメーキングとなったことは、まだ記憶に新しい。人間の脳を模したニューラルネットワークを駆使するディープラーニングと膨大な情報量の蓄積であるビッグデータによって、AIは人間によるインプットなしに、自らが勝手に学習し進化するすべを覚え、コンピューターでは決して人間に勝つことはできないとされた囲碁・将棋の世界でそれまでの常識を打ち砕いた。この技術革新が、現在の産業においてAIが最強ツールとして不動の地位を確立させる原点ともなっている。

 今、世界に目を向けるとAIを操ることで最強国を目指す動き、いわゆる「AI覇権」を巡る争いが活発だ。双璧をなしているのは米国と中国で、対峙する両国間の冷戦が次第に先鋭化している。かつてプーチン露大統領がいみじくも述べた「AIを制する者が世界を牛耳る」という言葉は、これから年を追うごとに重みを増すことになるだろう。2045年といわれるシンギュラリティに向け、AIを巡る世界の覇権争いは今後一段と激しさを増していくことは間違いがない。ここから四半世紀にわたる長期的見地に立ってもAI市場の成長の伸びしろは極めて大きいといえる。

●AI民主化で現実買い第2ステージへ

 こうした状況下、民間では大手IT企業にとどまらず、業界の垣根を越えて世界中の大資本企業がAI分野での研究開発に資金を投下し、主導権争いに躍起だ。ディープラーニングの特許申請数は今や中国が米国を凌駕する状況にあるが、企業・研究機関ベースで見た場合、依然としてIBM、マイクロソフト、グーグルが上位3傑を独占している。日本は後塵を拝しているとはいえ、特許申請数はこの両国に次ぐ世界3位の座をドイツや英国と争っている状況にあり、今後に期待がかかる。

 AI技術はいわば“諸刃の剣”であることは論をまたない。EUが4月に採択した「インド太平洋協力戦略」で、直近では日本、韓国、シンガポールにデジタル協定の締結を呼びかけ、中国に対抗する形での、人権や民主主義などの価値観に基づいたAI国家利用のルール作りを主導する動きが伝えられている。行き過ぎると人間を傷つける危険性を多分に内包しているのがAIの難しい部分で、いうまでもなくその倫理については人間の脳で考えなければならない。

 また、先行きデジタルデバイド(デジタル格差)を加速させる懸念もある。隅々まで照らす陽光のごとく、知識がなくても誰もが恩恵を享受できるサービス体制である「AIの民主化」が叫ばれている。AIの進化とともに“民主化実現”に向けた流れも形成されつつあるが、それに合わせ、東京株式市場でもAI関連株の“現実買い第2ステージ”が始まろうとしている。

 今回のトップ特集では、DX相場のリード役として存在感を高め、ここから株式市場でスポットライトを浴びそうな業績好調のAI関連有望5銘柄を選りすぐった。

●次のステージを駆けるAI関連特選5銘柄

◎アイティメディア <2148>

 ITニュースサイトを主力にネットメディアを運営するが、ネット上で「見込み顧客」を発掘して営業支援するリードジェネレーション事業が急拡大し、収益変貌の原動力となっている。同社の場合、業績変化率の高さが特筆される。営業利益は20年3月期に33%増益、21年3月期に73%増益と急拡大を示したが、22年3月期も前期比18%増の23億8000万円と2ケタ成長見通しにあり、市場では更なる上振れ余地が意識されている。AI分野へも積極的に踏み込んでいる。AIとRPAの情報提供に特化した会員制メディアを9月に譲受し、同領域の強化・拡充を図り需要取り込みを狙う。また、同社のグループ会社である発注ナビはチャットツールの開発販売を手掛けるChatwork <4448> [東証M]と業務提携し商機を高めている。自社株買いなど株主還元に積極的で株価意識も強く、目先25日移動平均線との上方カイ離修正場面は押し目買いチャンスとみたい。早晩、年初来高値圏に再浮上し、中期的には昨年10月の上場来高値3070円奪回の可能性が高そうだ。

◎ユーザーローカル <3984>

 ビッグデータ解析やAIなど最新技術を活用した業務支援ツールの開発・提供を行う。Web解析ツールや、ソーシャルメディアのマーケティング分析ツールなど多様なニーズに対応している。AIアルゴリズム実装、AIサービスの新規開発などに経営資源を投下し、業容拡大にも余念がない。自動応答のAIチャットボットを育成中で企業のDXシフトの流れに乗り需要を捉えている。今年5月に川崎汽船 <9107> がDX推進のため同社のチャットボットを採用したのに続き、6月には人材派遣のスタッフサービスHDの子会社が導入した。また企業だけでなく、7月には東京都府中市の市民サービス向上目的でチャットボットの提供を開始している。業績はここ10年にわたり大幅増収増益路線を走っており、成長性の高さは折り紙付き。22年6月期は営業利益段階で前期比15%増の9億8400万円を見込む。株価は8月下旬以降戻り相場に突入しているが、株式需給関係も良く上値期待は大きい。4月につけた年初来高値2590円(修正後株価)クリアが当面の目標となる。

◎ホットリンク <3680> [東証M]

 SNSを活用した販促支援ビジネスを展開し、ウィズコロナ環境にあって企業の旺盛なニーズを捉えている。成功率の高いSNS活用を行うため、コンサルやマーケティング、データ分析など各領域のスペシャリストを揃え顧客需要に対応する。また、世界中のソーシャルビッグデータを保有し、最先端のAI技術を搭載した解析ツールでビジネスにおける意思決定をサポートする。中国向けマーケティング支援などでも新たな需要を開拓中だ。更に越境ECプラットフォームに傾注し、売上高の4分の1を占めるクロスバウンド事業の強力な成長力の源となっている。業績は急回復局面に入っており、21年12月期営業利益は1億4700万円(前期は2500万円の赤字)を計画するが、2億~2億3000万円程度まで大幅増額修正される余地がある。また、続く22年12月期についても2ケタの利益成長が有力視される。中低位に位置する株価はAI関連株のなかでは値ごろ感が強く、500円台半ばでのもみ合いから上放れれば小型株特有の足の速さを発揮する公算が大きい。

◎クレスコ <4674>

 銀行や生保など金融業界向けに高い実績を有する独立系のソフト受託開発会社。AIやロボティクス分野に傾注し、既有のアプリケーション開発などのコア技術にこれらを融合して事業領域を拡張している。中期経営ビジョンにおける重点戦略としてデジタルソリューション売り上げ倍増や「DX銘柄」認定などを目指している。21年4-6月期は営業利益段階で前年同期比87%増と高い伸びを確保しており、22年3月期通期ベースでは前期比11%増の38億5000万円と2ケタ成長を見込んでいる。M&Aや提携戦略にも積極的で業容拡大に向けた布石に余念がない。中期計画の数値目標としては24年3月期にトップライン500億円(前期実績397億円)を設定、更に30年度までにトップラインを1000億円にする目標を策定している。株価は、今年2月初旬に上放れてから上下動を繰り返しながらも着実に下値を切り上げてきた。13週移動平均線をサポートラインとする上昇が続き、17年11月の上場来高値2750円(修正後株価)は今年度中にも射程圏に入る可能性がある。

◎ALBERT <3906> [東証M]

 ディープラーニングを活用したビッグデータ解析や自動運転分野などAI絡みの開発案件で強さを発揮する。18年5月にトヨタ自動車 <7203> と資本・業務提携を締結し市場の注目を浴びたが、同年10月に東京海上ホールディングス <8766> 、また同年12月にもKDDI <9433> と資本・業務提携を行うなど各業界を代表する大資本企業と連携し、これらが業容拡大の礎となった。DX時代を迎え、一段と需要急増傾向にあるデータサイエンティストの育成で業界他社に先駆している点は大きな強みで、今後の収益の成長ドライバーとなっている。直近では日本総合研究所(東京都品川区)とDX領域で協業を開始することを発表しており、連携して旺盛な企業のDX投資需要を捉え、ビジョンや戦略策定、実装までをワンストップで支援する。業績は21年1-6月期営業利益が前年同期比2.6倍の1億9100万円と急拡大。21年12月期通期見通しは、前期比61%増の4億400万円を計画している。株価は底値圏からの戻り初動にあり、上値は6月10日にマドを開けてつけた高値6270円どころが目標に。

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―在宅時間の増加による住環境改善のニーズや、衛生意識の高まりで非接触ニーズが拡大中―

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、 リフォーム市場が活気づいている。1回目の緊急事態宣言が出された2020年春こそ、リフォーム事業者の営業自粛などの影響により市場は落ち込んだが、その後は テレワークや外出自粛などで在宅時間が増えたことにより、自宅での時間を快適にしたいという住環境の改善需要が拡大したことが背景にある。また、衛生意識の高まりによる非接触ニーズなど、さまざまなリフォームニーズも活性化している。

 これらを受けて、住宅設備機器関連のなかには、コロナ禍前以上の業績となる企業もみられるようになった。仮に今後、コロナが収束に向かうとしても、在宅勤務の流れや衛生意識の定着などでリフォームニーズは底堅く推移するとみられている。引き続き良好な事業環境が期待でき、関連銘柄は要注目だろう。

●リフォーム市場は22年に7兆円規模に迫る見通し

 リフォーム市場は、ここ数年、緩やかに拡大していた。矢野経済研究所(東京都中野区)が21年7月に発表した「住宅リフォーム市場に関する調査を実施(2021年)」によると、20年の住宅リフォーム市場の規模は前年とほぼ横ばいの6兆5298億円と推計した。1回目の緊急事態宣言発出により、市場は一時的に落ち込んだものの、2回目以降の緊急事態宣言下では、感染拡大防止策を徹底し通常の営業活動を行ったことや、オンライン商談が浸透したこともあり、従来と変わらず工事が実施された。

 また今後、コロナ禍で芽生えた住空間への関心をこのままリフォーム需要として顕在化できれば、引き続き市場は堅調に推移するとしており、21年の市場規模は6兆7000億円(前年比3.3%増)、22年は6兆9000億円(同2.1%増)と7兆円に迫ると予想している。

●「セカンド洗面台」など新商品効果も

 リフォーム市場が堅調な背景には、テレワークや外出自粛などで在宅時間が増え、消費者の住空間への関心が高まったことがある。「ステイホーム」により、従来は外食や旅行、レジャーなどに向かっていたお金が住宅に向かい、「プチDIY」がブームとなったが、その延長線上で、プロの手によるリフォームへのニーズも拡大した。

 また、衛生意識の高まりによる新たな需要も発生している。従来、リフォームといえばキッチンや浴室が中心だったが、コロナ禍ではまずテレワークのためのワークスペースの新設が増加。その後、感染が拡大するにつれ、家の中にウイルスを持ち込まない対策として、玄関まわりや洗面スペースのリフォームが増えているという。昨年から今年にかけて、住宅設備機器メーカー各社が「セカンド洗面台」といわれる、玄関まわりに設置できるコンパクトな洗面台の新商品を相次ぎ発表したことも、こうした傾向に拍車を掛けたようだ。

●原料高への対応力が強い住宅設備機器大手に注目

 好環境にあるリフォーム市場だが、原材料価格上昇の影響には留意が必要だ。足もとで銅、アルミ、鉄などの資材価格が高止まりしており、これが原料高となって利益を圧迫する可能性がある。大手を中心に海外での値上げで吸収するなどの対応策が示されていることから、影響は限定的との見方が強いが注意したい。

 これらを踏まえた注目銘柄は、原料高への対応力が強い大手住宅設備機器企業だろう。

 LIXIL <5938> の第1四半期(4-6月)決算で、リフォーム商材の国内売上高は760億円(前年同期比15%増)となり、コロナ禍前の20年3月期第1四半期の741億円を上回った。前年の経済活動の制限からの回復に加えて、非接触化や快適性の向上を目的とした需要の増加で水まわり商品の売り上げが好調。国内売上高に占めるリフォーム商材の比率も41%となり、前年同期に比べて5ポイント上昇し、業績を牽引した。22年3月期通期は営業利益780億円(前期比2.2倍)の従来見通しを据え置いたが、第1四半期業績が計画を上回ったことから上振れが期待されている。

 TOTO <5332> の第1四半期(4-6月)決算で、国内リモデル(リフォーム)事業の売上高は701億円(前年同期比25%増)となり、コロナ禍前の20年3月期第1四半期の687億円を上回った。衛生性への意識の高まりを受け、人の動きに合わせてふたの開閉や洗浄、除菌を自動で行うウォシュレットやキッチン・洗面商品が伸長。また、学校や病院などを含めたパブリック施設におけるタッチレス便座やタッチレス水栓・ソープディスペンサーなどの需要も高まった。22年3月期通期業績予想は営業利益440億円(前期比11.0%増)の従来見通しを据え置いているが、同520億円前後を見込む調査機関もあり上振れ期待は強い。

 タカラスタンダード <7981> の第1四半期(4-6月)で、住宅設備関連事業の売上高は498億円(前年同期比14%増)となり、コロナ禍前の20年3月期第1四半期に比べても3%増となった。ガラスと金属を素材とするホーロー製品は汚れに強く、アルコールの拭き取りで劣化しないこともあり、ホーロー製のシステムキッチンや浴槽、洗面化粧台の中高級価格帯が好調だった。22年3月期通期業績予想は営業利益116億円(前期比5.8%増)の従来見通しを据え置いているが、第1四半期時点で上期予想に対する進捗率が81%となっており、滑り出しは順調だ。

 また、家事負担の軽減や快適な自宅時間をサポートするガス衣類乾燥機や自動調理機能付きコンロなどの需要が増えているリンナイ <5947> や、全国規模で新築・リフォームにおける住宅設備の設計・工事を手掛けるエプコ <2311> などにも注目したい。

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―環境負荷小さく優れた特性に注目、早期の社会実装に向け政府も後押し―

 気候変動対策が世界的に喫緊の重要課題となるなか、日本でも政府が温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げ、さまざまな取り組みが進められている。脱炭素というと大量の二酸化炭素(CO2)が発生する火力発電を再生可能エネルギーに転換する施策などが注目されやすいが、それだけではカーボンニュートラルの達成は難しい。今後は国土の約7割を占める森林を有効活用することも必要となりそうで、新たなビジネスチャンスの可能性を秘めるのが植物由来の「セルロースナノファイバー(CNF)」だ。

●各省の概算要求増額

 CNFは、木材などから得られる木質繊維(パルプ)を1ミリの100万分の1にまで微細化(ナノ化)したもの。植物由来であることから生産・廃棄に関する環境負荷が小さいほか、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持ち、弾性率は高強度繊維で知られるアラミド繊維並みに高く、温度変化に伴う伸縮はガラス並みに良好、酸素などのガスバリア性が高いといった優れた特性を発現する。環境省では、さまざまな製品の基盤となる樹脂材料をCNFで補強した活用材料(複合樹脂など)を使用することで、CO2の効果的な削減を図ることを目的としたCNF性能評価モデル事業を推進中。CNF活用材料で部品などを試作し、実機に搭載することで製品としての信頼性、CO2削減効果などの性能評価を実施するとともに、早期の社会実装に向けた導入実証を行っている。

 CNFは大気中のCO2を吸収・固定した木材などが原料であることから、カーボンリサイクルの一端を担うことが可能で、炭素循環社会の実現に有効とあって政府は市場拡大を後押しする構えだ。経済産業省は製造プロセスにおけるコスト低減や製造方法の最適化、量産効果が期待できる用途に応じたCNF複合化・加工技術などの開発を促進するため、22年度の概算要求で8億3000万円(21年度当初予算は6億3000万円)を計上。環境省は概算要求に、革新的な省CO2実現のための部材(GaN:窒化ガリウム)や素材(CNF)の社会実装・普及展開加速化事業として40億円(同18億円)を盛り込んだ。

●着々と進む用途開発

 企業でもCNFの特性を生かし、多方面で新たな機能の付加につなげようと技術開発が活発化しており、例えば大王製紙 <3880> は18年から部分的にCNF化したセルロース(濃度10%)複合樹脂ペレットのサンプル提供を開始し、20年にはセルロース濃度を55%にまで高めたCNF複合樹脂の開発に成功。現在は用途に応じた多様な形態で提供しており、自社商品であるトイレ掃除用ペーパークリーナーへの配合や卓球ラケット用部材、レースカーの車体内外装への実装といった実績を積み上げている。

 また、王子ホールディングス <3861> 、北越コーポレーション <3865> 、阿波製紙 <3896> 、レンゴー <3941> 、第一工業製薬 <4461> 、星光PMC <4963> なども用途開発を進めており、目が離せない。

 このほか、中越パルプ工業 <3877> は8月、自社で製造したCNF「nanoforest」が共同開発先であるサイデン化学(東京都中央区)の水系アクリル系エマルション材料の添加剤に採用されたと発表した。この素材を塗料分野で利用するメリットは、強度アップや耐久性及び塗装性の向上など。揮発性有機化合物(VOC)削減の観点から環境配慮型塗料への転換が求められ、更には節電・省エネを目的とした遮熱・断熱効果の重要性が増しているなか、建築業界をはじめ自動車・鉄道・船舶など多岐にわたる分野への普及が見込まれる。

 横河電機 <6841> 子会社の横河バイオフロンティアは6月、硫酸エステル化セルロースナノファイバー「S-CNF」を提供する事業を開始した。第1弾としてサンプル提供を始めた「S-CNF」は、一般的なCNFの特徴に加え、ゲル状から乾燥させて粉末状にしても水分を与えることで物理的性質を再現でき、ゲル状に比べて体積と重量が100分の1程度になる粉末状にすれば輸送時や保管時のコスト抑制が可能だ。今後は商用生産に着手する計画で、化学・石油化学・自動車・建材・窯業・繊維・食品・薬品・紙加工などの分野での利用を想定している。

 東北大学は3月、日本製紙 <3863> などと共同でCNFに強力な蓄電効果があることを世界で初めて発見し、CNF表面形状を制御したナノサイズの凹凸面を作り出すことにより、乾式で軽量のスーパーキャパシターの開発に成功したことを明らかにした。今後はナノ電気機械システム(NEMS)加工技術を導入して集積化及び積層化を行い、弱電用蓄電体としてパワー密度とエネルギー密度の向上を図るとしており、今後の動向が注目される。同社は5月に公表した中期経営計画で、CNF「セレンピア」の量産化に向けた製造技術の確立など新規事業・新素材を早期に戦力化する計画を掲げ、事業構造転換を加速したい考えだ。

●東合成、島津にも注目

 これ以外では、毛髪の1万分の1の細さであるシングルナノセルロースまで容易に解きほぐすことができる新しい酸化セルロースを開発済みの東亞合成 <4045> にも注目したい。従来はセルロース繊維をシングルナノセルロースまで解きほぐすには多大なエネルギーが必要だったが、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた酸化反応によって製造時及び使用時にかかるエネルギーを大幅に抑え、コストとCO2の削減を同時に達成できる技術を確立。CNFの価格低下につながるとして期待されている。

 島津製作所 <7701> は、CNFやCNF複合材をさまざまな観点から評価するための技術を持つ。高品質なCNFを効率的に生産して実用化を進めていくためには、分散性、形態、繊維長、結晶化度、耐熱性、成分組成、凝集性、固形分濃度、力学的特性などの項目を測定し、それらをベースとした規格化が重要となるとされ、同社の分析計測技術が生かされる場面が今後更に増えそうだ。

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―経済活動正常化に向けた切り札、驚異の効果でテーマ買い対象となる8銘柄をマーク―

 新型コロナウイルス感染症に関するある発表が、世界の希望となる可能性がある。医療崩壊を防ぎつつ、経済活動を正常化させていくことが急務の中、この流れを加速させると期待される3種の神器に関連する銘柄を探った。

●3種類の薬ミックスで一気に視界が開ける

 少し前に報じられた、日本赤十字社医療センターのチームがまとめたという、新型コロナ感染症に関する発表が、世界に希望を与える可能性がある。研究結果の内容は、新型コロナ感染症の重症患者に対して、3種類の薬を同時投与した結果、死亡率が2%と従来の10分の1にまで激減したとするものだ。

 報道によると、同チームが投与したのは、「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の3種類とされている。もともと、コロナ禍の初期段階で「イベルメクチンが効く」「アビガンが効く」など、さまざまなニュースフローが世界的に飛び交っていた。しかし、研究対象の患者数が少ない場合や患者の状態のバラツキが大きいといったように、データとして問題が多かった。イベルメクチンを例に挙げれば、同薬を製造する米製薬大手メルクも「新型コロナへの治療効果について十分な科学的根拠はない」、世界保健機関(WHO)も同様に科学的根拠があるかどうかは「極めて不確実だ」といった声明を過去に出している。

 同チームでは、前述した3つの既存薬を、病院内の倫理委員会の承認と患者の同意を得た上で、2020年12月から2ヵ月間、重症患者44人にレムデシビルを最大10日間、デキサメタゾンとバリシチニブについては最大14日間投与。なお、レムデシビルは抗ウイルス薬、デキサメタゾンは抗炎症薬、バリシチニブは免疫調整薬の役割を果たす。その結果、投与から4週間後までに死亡したのはわずか1人(2%)という驚異的な成果をあげたようだ。入院期間も平均11日となったようで、従来に比べ約6日短縮という結果となっている。

●医療体制崩壊の回避が最重要課題に

 非投与の重症患者と比較していないため、今回の結果は厳密な意味で言えば評価しにくい面もあるとの指摘があるのは事実。だが、この3薬が「神器」となる可能性は十分にある。足もとの動向としては、政府は東京や大阪など19都道府県に関して、緊急事態宣言の期限を9月30日まで延長した。今回の期限延長にあたっては、「医療体制の状況」が今まで以上に重視された。宣言解除に際しても、医療体制の逼迫状況が判断に大きな影響を与えることになるのは言うまでもない。

 その一方、11月をメドとした行動制限の緩和策を政府はまとめているとも報じられている。ワクチンの接種証明などを活用し、飲食店では、酒類の提供なども認めることが検討されているようだ。医療崩壊を防ぎつつ、経済活動を正常化させていくことが急務である中、こうした動き自体は想定されていた。現在のところ、新規感染者数はピーク時からは落ち着きをみせているとはいえ、再び人流が活発化し同じ展開を繰り返すことは何としても避けたい。

●コロナ治療薬関連で思惑内包の8銘柄はこれだ

 治療薬さえ十分に揃っていれば、やや強気スタンスで経済活動の回復を進めるという選択肢も生まれてくることになる。そういった意味で、期待が一段と高まる3薬に関連する銘柄を中心に、コロナ治療薬関連株の物色局面が到来する可能性がある。思惑対象となる8銘柄に注目した。

●広栄化学 <4367> [東証2]~イオン液体、ピリジン塩基類、ピラジン類などさまざまな化学製品の製造販売を行う。20年6月から米ギリアド・サイエンシズ社向けに新型コロナ感染症の治療薬であるレムデシビルの骨格を形成する原材料である「ピロール」の生産を千葉工場で開始。同年7月からはファビピラビル(アビガン)の原材料「ピリジン」の生産を開始している。

●日医工 <4541> ~新型コロナ感染症対策においては、抗凝固薬に分類される注射用フサン(一般名:ナファモスタットメシル酸塩)及びステロイド系抗炎症薬の一つであるデカドロン錠(一般名:デキサメタゾン)の安定的供給、臨床研究への薬剤の提供や製剤開発を行っている。

●富士製薬工業 <4554> ~女性医療、急性期医療を中心に新薬とそのほか薬剤を組み合わせた製品や、開発難易度の高いバイオシミラーの開発などを行う。デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液(一般名:デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)を手掛ける。

●アステナホールディングス <8095> ~グループの医薬品製造受託会社である岩城製薬佐倉工場では、注射剤、外皮用剤、固形剤、外用剤の受託製造において、治験薬製造から商用生産をカバーする。同社では副腎皮質ホルモン外用剤デキサメタゾン軟膏を手掛けている。

●日本化薬 <4272> ~「火薬」「染料」「医薬」「樹脂」の保有技術を基盤に事業を展開する。医薬事業では、バイオシミラー、ジェネリック抗がん薬、画像下治療(IVR)分野への取り組みも進めている。デキサメタゾン口腔用軟膏を手掛けている。

●日本新薬 <4516> ~創薬技術の高度化による研究開発力の向上や、新規創薬モダリティへの挑戦により、泌尿器科、血液内科、難病・希少疾患、婦人科の4事業に注力する。粉末鼻噴霧用ステロイド薬である、アレルギー性鼻炎治療剤「エリザスカプセル外用400μg」(一般名:デキサメタゾンシペシル酸エステル)を手掛けている。

●デンカ <4061> ~有機系素材や無機系素材、電子材料などを手掛けている。20年5月から新型コロナ感染症の患者を対象とした抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)の原料となるマロン酸ジエチルの生産を開始し、原料供給を行っている。

●宇部興産 <4208> ~化学を中心に、建設資材、機械の各分野でも事業を展開しており、医薬事業においては、原薬・中間体を手掛ける。20年7月から宇部ケミカル工場内の医薬品工場において、富士フイルム富山化学が開発した「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)の原薬主骨格を成す重要な中間体の製造及び供給を開始している。

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