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―進むワクチン接種、ウィズコロナにらみ更なる体制強化で真価発揮へ―

 新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種を受けた人が国民の50%に達した。感染者数も減少傾向をみせてはいるが、いまだ重症者の数は多く収束への道のりは険しい。政府は、経済への配慮から行動制限緩和をうかがうものの、再び感染が広がっている世界の状況をみても国内においてもリバウンドへの懸念は拭えない。この先には、感染リスクが高まるといわれる冬が待っている。新型コロナと闘う関連銘柄を総点検した。

●総裁選+衆院選控え政策期待も

 東京五輪が開催されるなか新型コロナの感染が急速に広がり、パラリンピック開幕直前の8月20日には1日の陽性者数が2万5852人となった。ここをピークに減少傾向をみせ、現在は1万人前後で推移している。この間、自宅での療養者が急増したうえ、入院が必要とされたとしても受け入れ先の医療機関が見つからないというケースも多く、医療崩壊がまさに現実となった。ここにきての感染者数の減少傾向を背景にして、医療現場では若干落ち着きを取り戻しているとも伝わるが、現在も厳しい状況に変わりはない。

 医療現場のひっ迫が問題視されるなか、次期自民党総裁の選出に関心が集まっている。現在のところ、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、そして“ワクチン担当”も兼務する河野太郎行政改革相が出馬を表明しているが、いずれの候補が勝利しても喫緊の課題は新型コロナ対策に変わりはない。こうしたなか河野行政改革相は6日、米ファイザー製新型コロナワクチンについて、10月中にすべての輸入が完了するとの見通しを発表、供給不足への懸念を払拭した格好だ。衆議院選挙も控えるだけに、医療体制の拡充や新たな新型コロナ対策が発信される可能性も高く、株式市場での個別株物色にも影響を与えることもありそうだ。

●取り沙汰されるブースター接種

 こうしたなか、取り沙汰されているのがワクチンの効果を高めると言われている3回目の接種、いわゆるブースター接種だ。いずれにせよ、今後数年はワクチン接種が必要とされるとの見方もある。9日には、菅義偉首相の新型コロナ感染症に関する記者会見に同席した政府分科会の尾身茂会長が、ブースター接種について「次の政権については今から検討いただきたい」と発言しており注目が集まった。

 ある医療機器を扱う企業に取材すると、「ブースター接種に関しては、具体的な話がないなかで何とも言えない」と断りつつ、「少なくとも、ワクチン接種が数年続くと仮定すれば、当然のことながら今後の業績にも影響してくる」と話す。また、新型コロナの感染拡大が受診控えにつながり業績を圧迫してきたが、ここにきては診療環境も回復に向かいつつある。「(ワクチン需要に)診療需要の復活も加わることで、業績への貢献が望める」と期待感をみせる。長期戦覚悟の新型コロナとの闘いは、医療関連企業の業績にも大きな影響を与えることになる。

【国産・新型コロナワクチン関連】 日の丸ワクチン誕生へ期待感

 国内勢も多くのグループが、新型コロナワクチンの開発を急いでいる。トップランナーに位置づけられる塩野義製薬 <4507> は、グループ会社のUMNファーマなどとワクチン開発を進めており、8月24日には国内第1/2相臨床試験について全被験者60例への初回投与が完了したことを発表し、安全性上の懸念は確認されていないとしている。用量を決定した後、約3000例の日本人を対象とする次相試験に速やかに移行し、安全性、有効性の更なる検討を行うとともに、最終段階の試験を年内に開始すべく準備を進めていく。2021年末までに3000万人分の生産体制構築を目標としている。また、第一三共 <4568> 、明治ホールディングス <2269> 傘下のKMバイオロジクスも開発を急いでおり、21年内に第3相試験の開始を目指す。

 株式市場においては大阪大学とアンジェス <4563> [東証M]などが共同開発するワクチンに投資家の関心が高い。さまざまな企業が同グループの開発に参画しており、新日本科学 <2395> 、カネカ <4118> 、ダイセル <4202> 、EPSホールディングス <4282> 、フューチャー <4722> 、ファンペップ <4881> [東証M]、タカラバイオ <4974> 、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ <6090> [東証M]、スリー・ディー・マトリックス <7777> [JQG]などがそれぞれの得意分野を生かすことでワクチン開発を進めている。アンジェスは8月17日、「新型コロナウイルスDNAワクチン:高用量製剤での第1/2相臨床試験接種開始」を発表している。

【海外製・新型コロナワクチン関連】 供給不足解消に向け活躍続く

 海外製のワクチン関連では、JCRファーマ <4552> が英アストラゼネカADR製の原薬製造を手がけている。一時はアストラゼネカのワクチンについて、まれに血栓ができる例が報告されたことなどから供給が躊躇(ちゅうちょ)されていたが、海外への提供を経て国内でも接種が始まるなか、供給不足解消に力を発揮している。同社が、7月29日に発表した22年3月期第1四半期(4-6月)の決算では、営業利益が前年同期比3.8倍の29億8400万円と好調だった。3月からアストラゼネカ製の新型コロナワクチン原液の販売を開始したことなどが寄与した。また、武田薬品工業 <4502> は米モデルナ製の国内供給を担っている。今月7日には、武田が生産する米ノババックス製の新型コロナワクチンについて、製造販売承認取得を条件として、厚生労働省が1億5000万回接種分を購入する契約を締結しており、22年初頭の供給開始を目指すという。

【シリンジ・針関連】 追加接種で高まる思惑

 新型コロナワクチンの接種が加速しており、河野行政改革相は11月上旬にも希望する全国民に2回接種が完了するとの見通しを示している。更に、ブースター接種の可能性も高まるなか、シリンジ(注射筒)や針に関連する企業の繁忙は続くことになるのは確実だ。シリンジや針の不足に懸念が高まった昨年7月、加藤勝信厚労相(当時)が、テルモ <4543> 、JMS <7702> 、ニプロ <8086> など医療機器メーカー6社のトップと会談し、シリンジと針の増産を要請、にわかに株式市場でも注目が集まった。ただ、あるメーカーに話を聞くと「シリンジなどの増産が収益に大きく寄与するかは、それぞれの企業の売り上げに占める比率にもより一概には言えない」とも話す。新型コロナ感染拡大の影響による受診控えや手術件数減少などが響いていたものの、それも徐々に回復しており業績にも浮揚力を与えることにつながる。

 また工業用ガス大手のエア・ウォーター <4088> も、注射器に残る薬液の量を減らせる「ローデッドスペース注射針」を開発、販売するなどシリンジ関連の一角として注目度が高い。業績も好調、8月5日には22年3月期の連結業績予想について、営業利益を580億円から630億円(前期比23.0%増)へ上方修正した。半導体関連向けの製品需要が増加している。また、医療関連事業における病院向けビジネスの需要回復に加えて、ケミカル関連事業における製品市況の好転や農業・食品分野における生産・物流コストの改善が進展していることも寄与する。

【PCR検査関連】 検査能力増強で新型コロナと対峙

 新型コロナの感染拡大につれて PCR検査数も増加しており、関連する企業の業績にも恩恵を与えている。感染が広がり始めた昨年の春ごろには、その検査数の少なさが世界から批判を浴びたが、民間検査各社が急速に検査能力を増強したことで、大幅に増加した検査にも対応できるようになった。PCR検査などを手掛ける主な民間検査企業としては栄研化学 <4549> 、H.U.グループホールディングス <4544> 、ファルコホールディングス <4671> 、ビー・エム・エル <4694> などが挙げられるが、新型コロナ関連検査の市場規模拡大に加え、受診控えも改善傾向にあることから業績は堅調な銘柄が多い。なかで、BMLは8月11日に22年3月期の連結業績予想について、営業利益を192億円から320億円(前期比60.5%増)へ大幅上方修正し、減益予想から一転して増益予想とした。株価はこれを受けて上昇加速、同月16日には4985円まで買われ年初来高値を更新。現在は上昇一服も、4500円近辺で頑強展開となっている。

 新型コロナ検出試薬キットや検査機器などで検査体制の拡充に貢献している銘柄にも投資家の視線は熱い。島津製作所 <7701> は、昨年の感染拡大当初から新型コロナ検出試薬キットを迅速に発売するなど対応力に評価が集まっている。8月5日に22年3月期第1四半期決算を発表しており、連結営業利益は前年同期比2倍の124億1800万円に拡大。通期では前期比6.5%増の530億円を計画する。株価は上昇一途。昨年3月中旬には2200円近辺だった株価は、きょうも5450円まで買われ上場来高値を更新している。そのほかでは、新型コロナ検出試薬などを手掛けるシスメックス <6869> やタカラバイオ、自社ブランド製品及びエリテック社向けOEM製品である全自動PCR検査装置を展開するプレシジョン・システム・サイエンス <7707> [東証M]などにも目を配っておきたい。

【酸素関連】 「酸素濃縮装置」不足で一気に関心

 自宅療養者が急増し、在宅酸素吸入装置の需要が高まるなか注目を集めたのが「酸素濃縮装置」だ。自治体も「酸素ステーション」を設置するなど、株式市場でも「酸素」をキーワードに一気に関心が高まった。主な関連銘柄として、帝人 <3401> 、エア・ウォーター、日本酸素ホールディングス <4091> 、テルモ、小池酸素工業 <6137> [東証2]、ダイキン工業 <6367> 、フクダ電子 <6960> [JQ]、星医療酸器 <7634> [JQ]などが挙げられるが、“酸素不足”を背景に、関連銘柄の株価を刺激したことは記憶に新しい。現在もなお、酸素濃縮装置などの供給不足は変わらず、予断を許さない状況が続くだけに注目は怠れない。

株探ニュース(minkabu PRESS)

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―新政権で加速するカーボンニュートラル政策、躍動する関連株に刮目せよ―

 地球温暖化防止の観点から脱炭素 社会の実現を目指したグリーン革命の号砲が鳴り響いている。石油や石炭などの化石燃料依存から脱却することがその骨子であり、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギー の活用が盛んに叫ばれているのは周知の通りだ。そして、もう一つ注目されているのが、クリーンエネルギーの象徴となっている水素 や、工業品・農業肥料用途として使われていたアンモニア である。これらは燃焼時に二酸化炭素を排出しないサプライチェーンの構築を可能とし、カーボンニュートラル の切り札ともいえる。この水素やアンモニア分野で商機を膨らませている企業群に、世界の投資マネーが今熱い視線を向けている。

●水素&アンモニアで新たな株高ストーリー

 二酸化炭素の排出規制では環境先進国である欧州が先行、2019年時点で温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す「欧州グリーンディール」を推進していたが、米国でバイデン大統領が新政権を樹立するや否や2兆ドル規模の環境インフラ投資計画を発表し、グリーン革命に向けたストーリーが本格化した。日本でも菅政権が地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」を視野に50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする方針を打ち出し、更に4月の気候変動サミットに合わせて30年度までに排出量を13年度比で46%削減する具体的な数値目標を発表している。これは、削減率を従来目標の26%から大幅に引き上げたもので、脱炭素に向けた不退転の決意を世界に示したともいえる。

 政府が昨年12月に発表した「グリーン成長戦略」では水素の活用促進に向けた戦略が盛り込まれ、再生エネ由来の「グリーン水素」のほか、化石燃料を改質して製造した水素であっても発生した二酸化炭素を地下に貯蔵することでカーボンニュートラルを実現する「ブルー水素」などが有力視されている。今後はその活用に向けたインフラ整備を国策として積極推進していく方向だ。日本の水素導入量は、年間で現在の200万トンから50年には10倍の2000万トンに膨大化すると試算されている。

 一方、アンモニアは工業製品や農業用化学肥料として使われていたが、にわかに脱炭素の強力なカードとして注目され始めた。アンモニアは燃焼時に二酸化炭素を出さないということに加え、水素と異なる性質として、極低温でなくても液化するため輸送や貯蔵が技術的に容易であることが挙げられる。アンモニアの年間導入目標は50年に3000万トンで、これは現在の実に30倍以上の水準となる。

●新政権下では脱炭素政策が加速する

 いうまでもなく、日本は今大きな政局の変化期を迎えている。自民党総裁選が来週17日に告示され、29日投開票の運びとなることでメディアを賑わしている。現時点では勝利者が誰になるのか全く予測のつかない状態だが、各候補が示す政策はその後の政権公約として意味をなすだけに、マーケット目線でも注目度は極めて高い。ここで確かなことは、各候補ともに脱炭素を政策面で重視していることだ。

 脱原発の推進論者である河野太郎規制改革相は、党内のパワーバランスを意識して長期視野での原発ゼロへと態度を緩和させ、一方で再生エネ導入を最優先する姿勢を示している。岸田文雄前政調会長もコロナ対策以外では当然のように脱炭素を重点課題に置いている。更に、今回の総裁選の台風の目となりそうな高市早苗前総務相は、より具体的に環境・エネルギー政策を統括する「環境エネルギー省」の新設を主張、これは菅義偉首相が看板政策として打ち出し、株式市場にも多大な影響を与えた「デジタル庁」にも似たアナウンス効果をもたらしている。

 こうした新総裁候補を横目に、関連銘柄が軒並み活気づいている。例えば再生エネの開発・運営を行うレノバ <9519> は前週末から一直線の上昇波を形成し最高値街道をまい進中、メガソーラー建設のウエストホールディングス <1407> [JQ]も今週8日にマドを開けて買われた後、更に上値を慕う展開で連日の上場来高値更新となった。このほか、再生エネや水素、電気自動車(EV)、蓄電池、そしてアンモニアと、これら「脱炭素」から分岐した一連のテーマでくくられる銘柄群はにわかに発生した強烈なマネーフロー、文字通りの上げ潮相場に乗る形となっている。

 では、ここからの上値余地が大きい銘柄は何か。カーボンゼロの担い手として再生エネは不動の4番バッターだが、これ以外に水素とアンモニアはクリーンアップを打てる有力なテーマとして株式市場で強烈な存在感を示すことになるだろう。今回のトップ特集では、ここから株価変貌の可能性を内包する有望株を3銘柄ずつ計6銘柄厳選エントリーした。

●アンモニア関連で頭角を現す要注目3銘柄

◎伊藤忠エネクス <8133>

 石油製品や電力・ガスなどのエネルギー商社で伊藤忠商事 <8001> が過半の株式を保有する。22年3月期業績はトップラインが前期比8%強の伸びを予想、増収効果を背景に営業利益も同6%増の205億円を見込むなど安定成長が続く。水素やアンモニア燃料の分野で親会社との連携が強い。直近ではシンガポールでの舶用アンモニア燃料サプライチェーン構築に向けた共同開発を加速させている。また、宇部興産 <4208> なども交え20年代半ばにかけて実用化されるアンモニア燃料船の燃料供給網作りで協業を続けていく計画。時価予想PER9倍前後でPBR0.8倍台と割安感があり、4ケタ大台絡みは買い場と判断される。信用買い残も枯れた状態で、5日移動平均線を下支えに戻り足が強まる公算も。

◎東亜ディーケーケー <6848>

 環境用や工業用など電子応用計測器の専業メーカーで、地球環境分野に力を入れている。水・大気・ガスなどを事業領域に世界的な環境保全意識の高まりを背景に他社の追随を許さない独自の商品ラインアップで商機を捉えている。また、ライフサイエンス事業を主力展開する米ダナハーのグループ企業ハックとは資本・業務提携を結び、環境保全をテーマにグローバルベースで計測機器の需要開拓を図っている。再生エネ分野では、水素やバイオマスのほか、アンモニア発電で脱炭素に必要な独自技術によるソリューションを提供しており、今後の活躍余地が大きい。株価は年初来高値圏での強調展開が続いているが、ここ出来高も増勢で注目度が高まりつつあり、4ケタ台活躍に向け上昇ピッチが速まりそうだ。

◎東洋エンジニアリング <6330>

 石油化学や肥料などのプラント 建設大手で足もとの業績は回復歩調にある。21年4-6月期営業利益は前年同期比3.2倍の18億2300万円を達成、22年3月期通期では前期比55%増の25億円を見込んでいるが増額が濃厚。アンモニアやバイオマスなどのプラントで高い実績を持つ。東シベリアと日本間のブルーアンモニアバリューチェーン構築では、7月初旬に伊藤忠などと協業で事業化調査のフェーズ2をスタートすることで合意している。一方、8月下旬には新潟県でバイオマス発電所建設プロジェクトを受注したことを発表している。株価は8月16日に1040円の年初来高値をつけてから調整局面に移行し800円台半ばまで下押しているが、時価は拾い場を提供している。

●水素関連で輝き放つ要注目3銘柄

◎ダイハツディーゼル <6023> [東証2]

 船舶用ディーゼルエンジンで世界屈指の実力を有し、海運業界の収益変貌を受けて同社にも恩恵が及ぶことが予想される。地球環境問題を経営上の最重要課題の一つに掲げ、ESGへの取り組みに注力していることはポイントで、ファンド系資金など機関投資家の買いを誘引しやすい。また、「ゼロエミッション船」分野の技術開発で先行している点が注目され、水素専焼技術を確立して外航船向け水素燃料推進プラントの実現に向けた取り組みを進めている。22年3月期営業利益は前期比31%増の13億円予想と回復色を強める見込みだが、更なる上振れも視野に入る。株価は今月6日に580円の年初来高値をつけた後、上昇一服しているが、早晩切り返しが有望。0.4倍台のPBRは見直し余地が大きい。

◎新日本理化 <4406>

 化学素材メーカーで界面活性剤のほか医薬中間体なども手掛ける。オレオケミカル分野で先駆した実力を持つとともに、EV向け駆動オイルや水素添加技術などで高い技術力を有する。水素の研究拠点として、京都R&Dセンターを設立し5月から業務を開始している。高圧水素化をはじめ高度な製造技術が同社の強みだが、親和性の高いビジネスパートナーとの交流や共同研究を今後積極的に進めていく構えだ。22年3月期は売上高が前期比12.5%増の275億円と2ケタ増収予想で、営業利益は同2.4倍の7億円を見込む。株価は昨年12月に344円の高値をつけているが、当面はその水準を意識した戻り相場が想定される。20年3月期に3円復配を果たしており、PBR0.7倍台で割安感も十分。

◎山王 <3441> [JQ]

 電子機器用デバイスの金メッキ加工を手掛けており、世界的に販売好調な自動車向けや商用サービスの本格化で加速する5G基地局向けなどの需要を獲得している。また、同社は水素の精製に必要な水素透過膜の開発で先駆しており、脱炭素関連としてのテーマ性も豊富だ。電解メッキによる水素透過膜とその製造方法について既に昨年4月に特許を取得しているが、直近では8月中旬に水素透過膜開発に関する技術の進捗について発表している。21年7月期業績予想は期中2度にわたる上方修正を行っており、営業利益段階で前期比29%増の2億3000万円を見込んでいる。株価は足が速く、早晩2000円大台回復から昨年12月下旬につけた2155円の上場来高値更新も意識されてきそうな気配がある。

株探ニュース(minkabu PRESS)

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―“信用しない”が前提に、カギ握るIDaaS―

 9月、デジタル庁が発足した。コロナ禍で浮き彫りとなったデジタル化の遅れを取り戻すべく、今後官民ともにいっそう取り組みが加速していくことになる。株式市場では昨年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の注目度が急上昇したが、その際サイバーセキュリティーにも関心が集まった。あらゆる分野でデジタル化が進めば、それだけサイバー攻撃による被害がより深刻なものとなることから、DX推進と同時進行で対策の強化が急がれる。こうしたなか、性悪説に立ってセキュリティー対策を行う「ゼロトラスト」の概念が広がりをみせている。

●ゼロトラスト対応サービス続々

 ゼロトラストは、利用者や端末、ネットワークなど“すべてを信用しない”という前提でセキュリティー対策を講じる考えのこと。これまでは、ネットワークを内部と外部とに分け、その境界で防御するという方法が一般的だった。しかし、クラウドサービスの利用拡大やテレワーク の普及により、社外から業務システムにアクセスする機会も増えており、社内外にかかわらず防御策をとる必要が出てきた。こうした課題への解決策として注目されているのがゼロトラストで、この概念を取り入れたセキュリティー対策への関心が高まっている。

 NTTグループのドコモ・システムズと日立製作所 <6501> 、米シスコ・システムズ日本法人は8月26日、ゼロトラストネットワーク技術を活用した「次世代テレワーク基盤」を構築したと発表した。テレワーク環境の安全性と利便性の両立を実現したもので、既に7月からドコモ・システムズで利用を開始している。インターネットイニシアティブ <3774> は8月25日、ゼロトラストネットワークアクセスの新サービス「Safous(セーファス)」を新たに開発し、海外向けに提供することを明らかにした。野村総合研究所 <4307> 傘下のNRIセキュアテクノロジーズやNTTPCコミュニケーションズ(東京都港区)も、今夏からゼロトラストに対応したサービスの提供を始めている。

 また、富士通 <6702> と米パロ・アルト・ネットワークスは4月にゼロトラストネットワーク事業での協業を発表、KDDI <9433> はゼロトラスト型のリモート環境を実現するクラウドサービスを今春から提供している。

●中小型の関連銘柄に注目

 ITインフラ構築大手のJBCCホールディングス <9889> は8月27日、ゼロトラストセキュリティーサービス「マネージドサービス for SASE Plus」の提供を行うと発表した。専門のエンジニアと24時間365日体制の運用センターが連携し、セキュリティー改善の提案やテレワークに必要なVPNの設定・運用を支援する。これにより、社内外のどこからでも同じセキュリティーレベルを確保でき、安全で快適なクラウドへのアクセスが可能になる。

 ラック <3857> [JQ]は日本マイクロソフトと協業し、ここゼロトラストセキュリティーに向けた取り組みを推進している。同社は各種ゼロトラスト関連サービスも手掛けており、今後の展開が期待される。22年3月期見通しは小幅ながらも増収基調を継続、営業利益はシステム刷新や販管費の増加などにより前期並みを予想する。一方、純利益は前期の特別損失がなくなり大幅増益となる見通し。配当予想は24円で、足もとの利回りは2%台半ばと高めだ。

 ブロードバンドセキュリティ <4398> [JQ]は、ゼロトラストネットワークやセキュリティーの構築・運用を支援する「次世代ネットワーク・セキュリティソリューション」を提供している。このサービスは、NTTデータ <9613> などが出資するJSOL(東京都中央区)と共同で展開しており、ゼロトラスト実現に向けた検討段階から、その後の設計や構築、運用までをトータルサポートする。22年6月期業績予想は、売上高15%増収、営業90%増益の見通し。配当は前期から据え置きの10円を見込む。

 アセンテック <3565> は仮想デスクトップ関連の製品開発や販売を手掛ける。同社は4月にゼロトラスト・シンクライアント製品を開発する方針を明らかにし、5月にUSB型、7月にはソフトウェア型の製品を発表している。これにより、マルウェア感染や情報漏えいのリスクを回避するとともに、デバイス管理の運用負荷を軽減するという。同社は高成長路線をまい進しており、直近21年2-4月期業績も営業25%増益と好調。あす10日に決算発表を予定している。

 ディー・ディー・エス <3782> [東証M]は指紋認証ソフト・機器の開発会社で、独自技術に強みを持つ。同社は6月、ソフトクリエイトグループのエクスジェン・ネットワークスと代理店販売契約を締結し、エクスジェンが手掛けるID統合管理ソフトウェアの販売を行うことを明らかにした。ディディエスの多要素認証基盤とあわせて提供することで、ゼロトラストセキュリティーに取り組む企業を支援するとしている。

●ゼロトラスト実現のカギ握る「IDaaS」

 ゼロトラストが広がりをみせるなか、その実現に必要不可欠とされるのがIDaaS(Identity as a Service、アイダース)だ。IDaaSとは、IDやパスワードをクラウド上で一元的に管理し、多要素認証やシングルサインオン(一度の認証手続きで複数のシステムが利用可能となる仕組み)といった機能が搭載されているサービスのこと。これにより、ログインする際の確実な本人確認が可能となり、社内外を問わずセキュリティーを確保することができる。IDaaS関連の代表格としてはHENNGE <4475> [東証M]が挙げられ、マーケットでの注目度は高い。以下、関連銘柄の中から中小型で業績の良い銘柄をピックアップした。

 メタップス <6172> [東証M]は、SaaS一元管理ツール「メタップスクラウド」を展開している。社内のSaaS利用状況を把握するSaaS管理機能と、シングルサインオンを可能とするID管理機能が搭載されており、3月の正式リリース以降さまざまなSaaSとの連携を積極化させている。同社の1-6月期業績は、売上高については子会社売却に伴い小幅減収となったものの、営業利益は黒字転換を果たしている。

 サイオス <3744> [東証2]は、オープンソースやクラウド製品の開発・販売を手掛ける。同社は、グループ会社のサイオステクノロジーにおいてクラウド型セキュリティーサービス「Gluegent Gate(グルージェントゲート)」を提供している。足もと1-6月期業績は、売上高11%増収、営業5.4倍増益と好調。通期も増収増益の見通しで、配当は前期から据え置きの10円を見込む。

 ソフトクリエイトホールディングス <3371> は業務用ソフトの開発を柱にECソリューション事業に注力しており、業績成長を続けている。子会社ソフトクリエイトが6月、ゼロトラスト実現に向けたクラウド統合認証サービスの提供を行うと発表した。このサービスは、同じくソフトクリエ傘下のエクスジェン・ネットワークスとの協業によるもので、自社のクラウドサービスにエクスジェンのクラウド型ID統合管理サービスを組み合わせた。

●トレンド、SBテクなども

 トレンドマイクロ <4704> は3月からゼロトラストを実現するセキュリティープラットフォーム「Trend Micro Vision One」を提供、SBテクノロジー <4726> は今年に入りゼロトラストセキュリティーを短期間で構築するサービスを開始した。このほか、ゼロトラストやIDaaSに絡む銘柄として、ネットワンシステムズ <7518> やマクニカ・富士エレホールディングス <3132> 、GMOグローバルサイン・ホールディングス <3788> に加え、ソリトンシステムズ <3040> 、サイバートラスト <4498> [東証M]、ナレッジスイート <3999> [東証M]などをマークしておきたい。

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―交通渋滞の解消や地域経済の活性化に一役、関連企業の動向に関心高まる―

 パラリンピックの閉幕式が5日行われ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は日程をすべて終えた。次の焦点は25年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)に移ることになるが、目玉のひとつになるのが「空飛ぶクルマ」による移動体験だ。自動車では自動運転技術が進展するなど“陸”の移動革命が始まっているが、“空”の移動革命に向けた取り組みも着実に前進しており、今回は関連銘柄にスポットを当てた。

●関西電などエアタクシー実現へ

 関西電力 <9503> は8月27日、大林組 <1802> 、東京海上ホールディングス <8766> 傘下の東京海上日動火災保険、近鉄グループホールディングス <9041> 、SkyDrive(東京都新宿区)と共同で、空飛ぶクルマによるエアタクシー事業性調査を実施すると発表した。この事業は大阪府の「21年度 新エネルギー産業 電池関連 創出事業補助金『空飛ぶクルマの実現に向けた実証実験』編」に採択されており、10月から大阪ベイエリアでドローン による海上飛行実演と、空飛ぶクルマの実機や周辺技術・サービスの展示、説明を行い、一般のモニターを対象にアンケート調査を実施する予定。25年の万博開催時のエアタクシーサービスの実現に向け、空飛ぶクルマの認知度や社会受容性を高め、将来的な事業の可能性を検証するとしている。

 また、同日には大阪府が「空飛ぶクルマの実現に向けた実証実験」に対する補助金の交付を決定した。同補助金は大阪での空飛ぶクルマを活用したビジネスの実現を目指し、飛行環境の検証や運用面での課題などを検証する実証実験に対し、必要な経費の一部を助成するもの。三井物産 <8031> のエアモビリティ総合運航管理プラットフォーム事業、日本航空 <9201> の顧客期待などの社会受容性の向上/運用性の検証/機体輸送性の調査、ANAホールディングス <9202> の大阪市内中心部における離着陸場利活用に向けた可能性調査などが採択された。

 このほか、GMOインターネット <9449> グループは7月から、経済産業省などが運営する「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」に参画しており、主にセキュリティー技術分野で協力する。

●日機装は米社に部品供給

 空飛ぶクルマに明確な定義はないが、「電動」「自動(操縦)」「垂直離着陸」する移動手段を指すことが一般的。諸外国ではeVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)やUAM(Urban Air Mobility)とも呼ばれ、主に交通渋滞に苦しむ都市部での移動代替手段として各国で機体開発が進められている。日本でも地上交通インフラの影響を受けないという特長を生かし、都市部の渋滞による経済的損失回避に加え、道路や橋梁などのインフラ修繕負担の軽減を含めた持続可能な交通手段の構築、観光産業などの地域経済の活性化、災害救助などを通じた安全・安心な地域社会の構築などに貢献することが期待されている。政府は世界に先駆けて実用化したい考えで、経産省が8月31日に公表した22年度概算要求では次世代空モビリティ(ドローン、空飛ぶクルマ)の社会実装に向けた実現プロジェクトとして新たに38億円を計上している。

 企業の関心も高く、日機装 <6376> は7月、米ジョビー・アビエーションが開発を進めているeVTOLの構成部品を供給するサプライヤーに選出されたことを明らかにした。ジョビーは24年からの商用飛行開始を目標としており、両社は複合材部品の設計の初期段階から協力し、量産段階での製造のしやすさを考慮した最適な設計、競争力のあるコストの実現に取り組むという。

 住友商事 <8053> は6月から、出資している米ワンスカイシステムズ及び東北大学と共同で、多数のエアモビリティが飛び交う未来を予測し、量子コンピューティングを活用したリアルタイム三次元交通制御に関する実証実験を始めた。この実証では複数台機の最適航路・運航ダイヤのリアルタイム設計を行い、12月まで高層ビルが立ち並ぶ都市部でのエアモビリティ航行を想定した高精度軌道シミュレーションを実施する。

 パーソルホールディングス <2181> で技術系エンジニアリング事業を手掛けるパーソルR&Dは4月、SkyDriveと空飛ぶクルマの23年度事業開始を見据えたサポーター契約を締結した。具体的には、パーソルR&Dの航空機開発スペシャリストがSkyDriveに出向。互いに知見を持ち寄ることで、機体仕様の最適化を加速させる狙いがある。

●長大、東レなどにも注目

 また、21年9月期通期の連結業績予想と配当計画の上方修正を手掛かりに、足もとで年初来高値を更新した長大 <9624> にも注目したい。同社は3月、空飛ぶクルマ関連のインフラプラットフォームの開発・運用などを手掛けるエアモビリティ(東京都新宿区)と資本・業務提携した。同社はエアモビリティと連携することで、空飛ぶクルマの実装に必要な制度設計や課題解決、空飛ぶクルマの利用のために必要な地上インフラとの連携、新たなバーティポート(eVTOL垂直離着陸機用の離着陸ターミナル)の整備などを提案し、国内での空の移動革命に寄与する構えだ。

 東京センチュリー <8439> は空飛ぶクルマを開発するドイツのボロコプターに出資している。ボロコプターはシンガポールなどでの都市内デモフライトに成功しているなど、この分野でのリーディングカンパニーの1社とされている。東京センチュはボロコプターの日本を含むグローバルな事業展開に対して、多様な金融・サービスを提供することでシナジーの創出が可能だとみている。

 これ以外では、小型無人航空機(UAV)などの画像データを扱うイメージ ワン <2667> [JQ]、機体軽量化につながる炭素繊維複合材料を手掛ける東レ <3402> 、6月に開催された「Japan Drone 2021」に故障した際の落下速度を低減する緊急パラシュートシステムを出展した日本化薬 <4272> 、経済産業省と国土交通省が主導する「空の移動革命に向けた官民協議会」のメンバーに名を連ねているACSL <6232> [東証M]、物流eVTOLへの装着が可能な大型貨物ユニットの空力形状を開発済みのヤマトホールディングス <9064> 、地図データに強みを持つゼンリン <9474> に商機がありそうだ。

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―市場スタートから20年、コロナ禍の影響でオフィス需要など強弱観―

 投資家の高配当利回りを求める志向は強く、株式市場では高配当利回りを背景に海運株などが急騰している。そんな高利回り志向の投資家の根強い人気を集めているのが、REIT(不動産投資信託)だ。高い分配金(株式での配当金に相当)が見込め、かつ投資口価格(株価に相当)も比較的、安定した値動きでミドルリスク・ミドルリターンが期待できる金融商品として注目度は高い。折しも、日本の不動産投資信託「J-REIT」は2001年9月の市場での売買開始から20年を迎えた。見直し機運が高まるREIT市場の足もとの動向を探った。

●東証REIT指数はTOPIXを上回るパフォーマンス

 東証REIT指数は高値圏で堅調な値動きとなっている。7月中旬に2200.02と今年の高値をつけた後、一進一退が続くが、直近では2150前後と年初からは約20%の上昇を演じている。ここ急速に上げ足を速めている日経平均株価は年初から9%程度の上昇、約31年ぶりの高値に値を上げてきたTOPIXも同14%程度の上昇と、主要株価指標と比べても東証REIT指数の高パフォーマンスが目立つ。

 東証には約60のREITが上場しているが、その平均分配金利回りは3.3%前後と高水準にある。東証1部銘柄の単純平均配当利回りは1.7%前後に過ぎない。また、高利回りが下値を支える格好となり、投資口価格の値動きも比較的安定していることも、人気の要因となっている。

●オフィス需要には依然として強弱観

 国内外の投資家を含め根強い人気を誇るJ-REITだが、足もとの不透明要因となっているのは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要の変化だ。 テレワークの普及などの影響をどうみるかだが、「新型コロナ感染拡大の一服とともにオフィス需要は回復する」との見方がある一方で「テレワーク普及の流れは変わらない」との声も少なくない。ただ、「都心の一等地にある利便性の高いオフィスは、引き続き堅調な需要は維持される」(アナリスト)との見方は多く、ブランド力のある主要ファンドのオフィス系REITは中長期で投資チャンスを迎えているともみられている。

 また、巣ごもり需要が追い風となった電子商取引(EC)需要拡大で物流施設に対する需要は強いほか、テレワークによる追い風もあるマンションなどの住宅系のREITに対する底堅い需要を予想する声が多い。

●日本の超低金利環境の継続を海外投資家は評価

 とりわけ、超低金利が続く日本の金融市場の環境を評価する声は多い。米国ではテーパリング(量的緩和縮小)が話題となるなど、遠からず金利引き上げも視野に入っているほか、欧州も量的緩和の縮小思惑が浮上している。しかし、日本は超低金利の環境は当分続くとみられている。超低金利で資金調達し、高利回りのオフィスビルなどに投資するという投資戦略に変化はない。

 東証によると海外投資家は、今年に入り7月まで1月を除き買い越し基調を続け、累計で2400億円近い買い越しとなっている。また、地銀などを中心とする銀行も3月を除き買い姿勢を続け100億円近く買い越している。

 更にJ-REITでは、M&Aに絡む動きも起こっており、米投資ファンドのスターウッド・キャピタル・グループは4月にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 <3298> [東証R]に対して、敵対的TOBを仕掛けた。このTOBは、結局不成立となったが、その後、米インベスコ・グループからのTOBが成立し同投資法人は上場廃止となる見通しだ。同投資法人への敵対的TOBは日本のREITの割安さに着目したものとも言われている。それだけに、J-REITへの再評価余地は大きいと言えそうだ。

●ビルファンドやGLP、星野Rリートなどに再評価余地も

 個別銘柄では、オフィス系では代表銘柄の日本ビルファンド投資法人 <8951> [東証R]やジャパンリアルエステイト投資法人 <8952> [東証R]は中長期姿勢で投資妙味は大きそうだ。ともに、分配金利回りは3%前後と高い。また、グローバル・ワン不動産投資法人 <8958> [東証R]やいちごオフィスリート投資法人 <8975> [東証R]など。

 更に、物流施設型では、日本プロロジスリート投資法人 <3283> [東証R]やGLP投資法人 <3281> [東証R]、日本ロジスティクスファンド投資法人 <8967> [東証R]など。複合型の産業ファンド投資法人 <3249> [東証R]や、住居型のアドバンス・レジデンス投資法人 <3269> [東証R]なども注目される。加えて、先行き経済活動再開の動きが強まった場合、星野リゾート・リート投資法人 <3287> [東証R]などホテルリートが見直される可能性もある。

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―9月中間期末に向けて関心高まる、割安評価の高配当利回り株をリストアップ―

 中間決算期末を今月末に控え、3月期決算企業の高配当利回り銘柄への注目度が高まっている。企業業績のコロナショックからの立ち直りが鮮明となるなか、4-6月期(第1四半期)決算発表シーズンでは、通期計画を上方修正する企業が相次ぎ、配当予想を増額する企業も多くみられた。この時期に配当増額を決めた企業は将来的な業績成長に対する自信の高さがうかがえ、インカムゲイン、キャピタルゲインの両面から投資妙味が高い銘柄として押さえておきたいところだ。今回はこうした早い段階で業績見通しと配当予想を引き上げた企業のなかから、株価指標が割安で上値余地のある高配当利回り株を探った。

●21年度は業績急回復で増配相次ぐ

 日本取引所グループ(JPX)の統計データによると、東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックに上場する企業の20年度(20年4月~21年3月)の配当金総額は11兆4584億円(前年度比2.5%減)だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営環境が悪化したことを受けて配当を減額する企業が増え、11年ぶりの前年度比マイナスとなった。ただ、20年度後半から製造業を中心に業績が急回復に転じているうえ、コロナ禍における守りの財務で現金が積み上がった企業も多く、21年度の配当金総額は大幅に増加することが見込まれる。8月末時点の集計では、全体の3割超が増配を計画しているのに対し、減配予定の企業は1割にとどまる。

●高配当の割安株に見直しの動き

 足もとでは配当利回りが高く、指標面で割安感の強い銘柄に物色の矛先が向きやすくなっている。コンテナ船の市況高騰を背景に業績が絶好調で、驚異の大幅増配を打ち出した日本郵船 <9101> や商船三井 <9104> をはじめとする海運株が快進撃を続けているほか、高水準な中間配当を予定する日本製鉄 <5401> やジェイ エフ イー ホールディングス <5411> といった鉄鋼株も回復色を強めている。そのほか、高配当かつバリュー株の宝庫である銀行株などにも上値指向のものが目立つ。

 東京株式市場では、先週末3日の菅首相の退陣表明を受けて政策期待などから先高感が強まるなか、好実態の割安株に見直し機運が高まっている。以下では、4-6月期決算発表とともに、22年3月期通期の業績見通しと配当予想を増額修正した企業のうち、配当利回りが3%を超え、かつ予想PERまたはPBRが低位にある7銘柄を紹介していく。なお、9月中間配当を獲得するには、権利付き最終日の28日に株式を保有していることが必須条件となる。

※配当利回りは9月6日終値ベースで算出。

【ネツレン】 配当利回り3.86%

 高周波熱錬 <5976> は電気を熱源とするIH(誘導加熱)技術に強みを持つ金属熱処理加工メーカー。4-6月期(第1四半期)業績は主要顧客の自動車業界向けを中心に、部品販売や熱処理加工などの受注が急回復をみせ、経常損益は10億7200万円の黒字(前年同期は6億5200万円の赤字)に浮上した。好調な受注動向や原価低減の強化を踏まえ、22年3月期通期の同利益予想を従来計画の28億円から37億円(前期比2.5倍)へ上方修正するとともに、配当を前回の19円から過去最高水準となる25円へ増額している。配当利回りが3%を大きく超えているにもかかわらず、PBRは0.4倍台と極めて割安感が強く、上値に大きな期待を内包している。

【小野建】 配当利回り5.70%

 小野建 <7414> は多彩な鉄鋼商品や建設資材を取り扱う九州地盤の独立系鉄鋼商社。4-6月期業績は原材料価格の高騰を背景にメーカー主導で鋼材市況が上昇するなか、在庫出荷分を中心に利益が大きく改善し、経常利益は前年同期比4.1倍の31億5100万円に膨らんだ。併せて、22年3月期通期の同利益予想を95億5800万円(従来計画は60億9600万円)へ上方修正し、一気に17期ぶりに過去最高益を更新する見通しとなった。年間配当も前回の60円から92円に大幅増額し、配当利回りは5%台後半の推移となっている。一方、予想PER5.3倍、PBR0.46倍と割安感が際立っており、上値期待は強い。

【シチズン】 配当利回り3.60%

 シチズン時計 <7762> は新型コロナ感染拡大の影響を受けて、前期は経常利益段階で40億円を超える赤字に陥ったが、22年3月期は主力の時計事業と工作機械事業の回復で、一転して150億円の黒字へと変貌を遂げる計画だ。直近3ヵ月の4-6月期は消費が上向く北米で時計の完成品販売が急増したほか、前期に実施した構造改革の効果でムーブメント部門の採算が改善した。また、工作機械では中国や欧州を中心とする旺盛な設備投資需要を追い風に、自動車をはじめ幅広い業種から多くの受注を獲得した。第1四半期の好調な滑り出しを受けて、通期計画の上方修正に踏み切っている。株価は強調展開を続けているが、指標面に割高感はなく一段の上値が期待できそうだ。

【大建工】 配当利回り3.79%

 住宅用資材メーカー大手の大建工業 <7905> は足もとの好調な業績を反映する形で、22年3月期の経常利益予想を従来計画の104億円から139億円(前期比39.9%増)へ上方修正し、実に33期ぶりとなる最高益に大復活する計画を打ち出した。国内で新築住宅やリフォーム市場における需要が想定より増加し、床材やドアの販売が好調なうえ、米国で木材製品の市況価格が高水準で推移するなか、LVL(単板積層材)の高付加価値品なども伸びている。好決算を受けて、株価は約3年ぶりの高値圏に浮上したがその後は調整含みにある。予想PERは8倍台と割安感が強いだけに、水準訂正に期待したいところだ。

【白銅】 配当利回り3.38%

 非鉄金属商社の白銅 <7637> は8月10日に、22年3月期の経常利益が35億円(前期比68.0%増)になりそうだと発表。期初予想の30億円から上方修正し、21期ぶりに最高益を塗り替える見通しとなった。5G関連やデータセンターの需要拡大が継続するなか、半導体製造装置向け金属の販売が伸びることに加え、原価率の減少や原材料市況の好転もプラスに働く。業績好調に伴い、年間配当も従来計画の82円から94円へ引き上げた。なお、9月末は中間配当(46円)に加え、今期から新設した株主優待制度の基準日でもある。株主優待は300株以上保有者に対し、保有株数に応じて3000~5万円相当の株主優待ポイントを付与するというもの。積極的な株主還元姿勢も注目ポイントだ。

【堺化学】 配当利回り3.16%

 堺化学工業 <4078> は亜鉛を祖業とする化学メーカーで白色顔料の酸化チタン大手。電子材料、樹脂添加剤、衛生材料、有機化成品、触媒を手掛けるほか、バリウム造影剤や風邪薬「改源」など医療事業も展開している。足もとの業績は自動車や通信機器関連向け積層セラミックスコンデンサー用誘電体が回復基調にあるほか、酸化チタンは化学繊維・フィルムやグラビアインキ用途の引き合いが強い。第1四半期業績の好調を受けて、22年3月期通期の経常利益予想を従来計画の51億円から64億円(前期比59.5%増)へ引き上げ、配当も前回の40円から70円(前期は15円)に大幅増額修正した。株価は約半年ぶりの高値水準にあるが、予想PER7倍台でPBR0.5倍近辺と指標面からは依然として見直し余地は大きい。

【オプティマス】 配当利回り4.52%

 中古車の輸出販売を展開するオプティマスグループ <9268> [東証2]の4-6月期業績は、経常損益が7億300万円の黒字(前年同期は1億6700万円の赤字)と急改善をみせた。主力のニュージーランドで中古車需要の回復が継続したことに加え、前年同期がロックダウンの影響で低迷した反動もあり、中古車販売台数が急増したほか、為替の円安進行も追い風となった。好調な業績を踏まえ、22年3月期通期の経常利益予想を従来計画の9億3900万円から24億円(前期比90.0%増)へ、年間配当を前回の45円から100円(前期は50円)へそれぞれ大幅に上方修正している。配当利回り4.52%、予想PER4.6倍と超割安圏にあり、上昇余力は大きいとみられる。

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―レアメタル不使用でコスト面に魅力、低温性能、急速充電などで優位性誇る―

 脱炭素化に向けた電気自動車(EV)の世界的な開発競争が激化している。そのEV開発に向けて、航続距離などでのカギを握るのが車載蓄電池だ。現在はリチウムイオン電池 が主流となっているが、その車載電池の有力候補に「ナトリウムイオン電池」が急浮上している。ナトリウムイオン電池は、価格が高騰するリチウムなどレアメタルを使用せずコスト面で優位性を発揮するほか、急速充電などでの強みを持つ。市場の脚光を浴びるナトリウムイオン電池関連株を探った。

●世界最大手、中国CATLの発表が関心集める

 世界は「ガソリン車からEVへの移行」を目指す大きな潮流の中にある。そんなEVの中核を担っている部品、それが「リチウムイオン二次電池(バッテリー)」だ。リチウムイオンバッテリーは、鉛酸バッテリーやニッケル水素バッテリーと比較して、エネルギー密度の高さが1つの特徴となる。周知の通り、これまで長い期間をかけて、自動車メーカー各社が技術開発に精を出してきた。日産自動車 <7201> を例に挙げれば、同社EVの航続距離は2010年の200キロメートルから約10年後の19年には458キロメートルと実際に大幅に延びている。しかし、そんなEVの主流とも呼べる「リチウムイオンバッテリー」に挑戦する次世代車載電池が足もとで急速にその存在感を増している。

 次世代車載電池に関して、直近で市場の関心を集めたのが、車載電池最大手である中国の寧徳時代(CATL)だ。7月29日に同社は「(第1世代)ナトリウムイオン電池」を発表した、と中国メディアが伝えている。その報道によると、同社創業者の曾毓群会長は、ナトリウムイオン電池について「低温性能、急速充電、環境への適応性などの面で独自の優位性を持つ」と利点を指摘。更に同社は「ナトリウムイオン電池の産業化展開に着手しており、23年には基本的な産業チェーンを形成する計画だ」という。日本経済新聞の報道では、中国工業情報化省もナトリウムイオン電池の規格構築に乗り出す方針としており、新技術を柱にEVの領域で世界をリードしたい中国政府の思惑が透ける。

●レアメタル使用せず大幅なコスト優位性を誇る

 急速に存在感を増してきた次世代車載電池とは、まさにこの「ナトリウムイオン電池」のことである。現在主流となっているリチウムイオン電池では、リチウムと冠する名の通り、主要部材に「レアメタル 」を用いている。一方、ナトリウムイオン電池ではこれを用いないため、CATLの創業者が言及した利点以外に、大幅なコスト優位性を持つことが魅力ともなっているのだ。もちろん、現段階では容量の問題などの課題もあるとはいえ、今後の技術開発が大いに期待されている分野であることは間違いない。

●日本では民間に加え大学で研究成果が出る

 日本でも東北大学の研究グループが6月28日、ナトリウムイオン電池の実用化に向けて、課題となっている高性能電極の開発促進につながると期待される発表を行った。更に、豊橋技術科学大学の研究チームも7月に入り、高伝導性と電気化学安定性を兼ね備えたナトリウム固体電解質を開発したと発表。民間企業だけではなく、「学」の領域でも、盛んな研究の成果が出始めている。

 トヨタ自動車 <7203> を筆頭にガソリン車などで世界的にこれまで大きな存在感を示してきた日本も、EVにおいてもその位置づけを死守するために、中長期的には「官」の協力が今後期待されてくることになるだろう。株式市場での物色という観点からは、まだ直接的な対象となる銘柄はそれほど多くはない。しかし、技術開発が進み、市場が育つにつれ、化学・材料メーカー参入への思惑にもつながり、物色対象が次第に広がっていくことになろう。そこで今回は、今後注目を集める可能性のあるナトリウムイオン電池関連銘柄を紹介する。

●日電硝や住友化、クラレ、北興化学など注目

日本電気硝子 <5214> ~正極材に結晶化ガラス、電解質に酸化アルミニウム素材を用いた全固体ナトリウムイオン二次電池の開発を進めており、20年には実用レベルの性能を得られることを実証している。

クラレ <3405> ~ナトリウムイオン二次電池の負極材となるハードカーボン(難黒鉛化性炭素:商品名クラノード)を手掛けている。充放電に伴う体積変化が黒鉛よりも小さく、電池の長寿命化に寄与するほか、環境負荷の低い植物を原料としている。

北興化学工業 <4992> ~殺菌剤や殺虫剤などの農薬事業と電子材料、医薬品原料といったファインケミカル事業を主力とする。ファインケミカルにおいて各種複合酸化物の合成などを手掛けており、各種電池の中間材料などにも用いられていることから、正極材の材料を手掛ける関連銘柄の一角として思惑が高まろう。

セントラル硝子 <4044> ~半導体や光学用途向けに高純度無機塩・フッ化物を手掛けている。現在はリチウムイオン二次電池用電解液、キャパシタ用電解液を手掛けており同分野に注力している状況である。電池関連の一角として物色の矛先が向かいやすいと考えられる。

ニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]~電池用セパレータを国内外の電池メーカーに供給。リチウムイオン電池用セパレータにおいては、植物由来の高性能セルロース系セパレータを開発しており、車載用途や産業用電池に使用されている。現段階ではナトリウムイオン電池向けは手掛けていないが、関連銘柄の一角として人気化しやすい。

グンゼ <3002> ~金属集電体を使わず、金属集電体より高い電気抵抗を持ち、フィルムの導電性を制御する樹脂集電体を開発しており、全樹脂電池の量産化を促進している。現在は次世代型リチウムイオン電池向けだが、ナトリウムイオン電池の市場が拡大するうえでは、集電体など複合化学製品の一角として思惑的な動きが強まりやすいだろう。

住友化学 <4005> ~総合化学メーカー。エネルギー・機能材料部門では、リチウムイオン二次電池用部材(セパレータと正極材)を手掛けており、同時にナトリウムイオン電池に関する特許出願も多数ある企業だ。

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―怒涛のごとき買い注文流入、TOPIX30年ぶり高値が意味する新たなステージとは―

●菅首相の不出馬で兜町に衝撃走る

 きょう(3日)の東京株式市場は、まさに地殻変動を起こしたかのように大きく揺れた。朝方から買い優勢の地合いで、前引け時点で日経平均は243円高の2万8787円に買われていたが、後場は先物主導で一段高。買い注文が怒涛のごとく流入し、後場寄り早々に500円を超える上昇でフシ目の2万9000円ラインを一気に突破した。大引けは584円高の2万9128円と約2ヵ月半ぶりの高値圏に浮上して取引を終えている。なお、TOPIXは年初来高値を更新。これは、まだバブルの余韻が残る1991年4月中旬以来、実に約30年5ヵ月ぶりの高値水準となった。

 きょう午前、菅義偉首相が自民党総裁選挙への出馬を見送る意向であることが報じられ、市場関係者の間に驚きが走った。株式市場は変化を好む。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず国内経済が疲弊するなか、政局が大きく動くことは何はともあれ株価の刺激材料である。空売りの買い戻しを誘発するとともに、出遅れていた投資家の買い参戦を促す形で後場の急騰相場が演出された。

 次期総裁が誰になるかにマーケットの関心が高まるなか、菅首相再選の可能性はそれなりにあるとみられていた。そのなか、現職の総理大臣が不出馬という状況は想定外であったが、それだけに次のトップが誰になるかマーケットの関心が一段と増幅される形となっている。これは衆院の解散総選挙にも直接的な影響を与えることになり、また今後の株式市場を取り巻く政策面でも少なからず影響を及ぼすことになる。

●急浮上して消えた総選挙前倒しのシナリオ

 これまで、東京市場は新型コロナの感染拡大と並行して国内の政局不安が株価の上値を重くしていた。秋の総選挙で自民・公明の連立与党が大幅に議席数を減らす公算が大きいとみられたことも、「買い主体である海外投資家の日本株投資を躊躇させる背景の一つに数えられていた」(生保系アナリスト)という。そうしたなか、今週は週初から一貫して日経平均は上値指向を強めるなど、はっきりと流れが変わっていた。8月31日には日経平均が300円高で引け、実に1年ぶりに「月末安アノマリー」を覆したが、これも振り返れば暗示的で、政局の水面下の変化を予知していたかのような動きである。

 名実ともに9月相場入りとなった1日に東京市場では日経平均の上げ足が加速。今月半ばにも衆院解散・総選挙が行われるという見方がにわかに広がったことが、株価を強く刺激した。これについては菅首相自らが「(新型コロナが蔓延する)現在のような厳しい状況では解散できる局面にはない」という完全否定コメントを出していたが、本意ではなかったとされる。市場関係者の話では「“菅おろし”の動きが大きくならないうちに半ば強引に総裁選より前に解散・総選挙をやってしまおうという作戦で、事前に地ならしのつもりでメディアを使って観測気球を上げた結果、党内での反発があまりにも大きすぎた。その火消しに動かざるを得なかった」(中堅証券ストラテジスト)という。

 そうしたなか菅首相は、今度は自民党役員人事と内閣改造を行う方針を示した。既に二階幹事長が幹事長ポストを退く方向で話が決まり、それを目玉とする閣僚人事で支持率のアップを狙う作戦だったが、同時に総裁選を前にした一種の踏み絵でもあった。このように最後まで菅首相はファイティングポーズを崩さなかったわけだが、永田町事情に詳しいネット証券アナリストによると「関係者の話では、前日(2日)の二階幹事長との党本部での会談で、菅首相は(二階氏から)降りたほうが賢明だと諭されたらしい」という。そして、きょうの電撃的な総裁選不出馬の発表、事実上の辞任という形になった。

●マーケットの関心は“ポスト菅”に

 いうまでもなくマーケットの次の関心事は、自民党総裁選で勝利するのは誰かということになる。現状では、いち早く総裁選出馬を決め、自らも派閥の領袖である岸田文雄前政調会長は国会議員の票も集まりやすく優位に見える。ただ、「国民的支持は弱い。また、『令和版・所得倍増』を掲げてはいるが、実際のところ財政健全派で格差是正を主眼に置いているところがあり、株式市場的にはそれほど歓迎できる感じではない」(中堅証券ストラテジスト)という声がある。

 また、これまで態度を保留していた河野太郎規制改革相も出馬する意向を示した。今回の総裁選はフルスペックで行われる。国会議員票が383票、党員・党友票が383票の計766票を取り合う形になるのだが、河野氏は党員・党友票次第では十分に勝利できる位置にいるという見方も強い。国民からの人気という点では岸田氏を大きく上回るから“選挙の顔”としては申し分ない。ただし、「それ以前に推薦人20人を集めるのがそんなに簡単な話ではない」(ネット証券ストラテジスト)という指摘もある。

 そして、石破茂元幹事長も当然ながら出てくる可能性が高くなった。河野氏とともに国民的支持が厚い。菅首相が当初の予定通り出馬したと仮定した場合、“反菅”の票を岸田氏と二分する形となり、結果的に菅首相に有利に働くことが予想されていた。そうした面倒な思惑から解放され、ここはチャンスとみているかもしれない。ただ、やはり推薦人の確保に難儀する可能性が指摘されている。

 更に大穴的存在となるのが高市早苗前総務相。推薦人20人確保がどうなるかだが、「出てくれば台風の目となる」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。政策的にはアベノミクスを引き継ぎ、更にパワーアップさせるようなイメージがあり、株式市場的には素直に歓迎されやすいムードがある。国民的には認知度が低く、傀儡政権的な見方もされやすいところだが、それはそれで安定感につながる部分もある。

 いずれにしても今回の総裁選でのキングメーカーは党内最大派閥の安倍晋三前首相(細田派)で、菅首相が出た際には、政権交代時の恩義から菅氏を推すことは必至とみられたが、それが流動的になったことは高市氏にもチャンスが巡る可能性がある。市場では「仮に安倍氏が後押しすれば、麻生派もそれと歩調を合わせる公算は小さくなく、“高市早苗首相”が実現する可能性はゼロではない」という声も出ている。

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―半導体微細化の最先端、露光装置は海外企業独占も周辺装置や部材は日本勢が優位―

 レーザーテック <6920> の株価が9月1日に上場来高値を更新した。8月6日に発表した22年6月期の業績予想が営業利益270億円(前期比3.6%増)と増益ながら市場の期待に届かなかったため、株価は6日終値2万1640円から20日には安値1万9050円をつけるまで下落した。先端半導体に関連する投資活発化の恩恵を受ける銘柄との位置づけに変わりはないものの、成長の踊り場に突入したとの見方が広がったためだった。ただ、EUV(極端紫外線)関連分野での競争力の高さを背景に成長が継続するとの見方が根強く、株価は短期の調整のみで反発し、足もとの株価上昇につながっている。

 同社の成長を牽引するとみられるEUV対応の欠陥検査装置だが、今期は利益率が低い初期ロットが中心で、これが増益率が市場の期待に届かなかった要因の一つとなっている。しかし、来期以降はこうした商品構成の悪化は一巡する見通し。また、ここに来て関連市場も急拡大しており、EUV関連企業のビジネスチャンスは急速に広がっている。

●なぜEUV関連市場は拡大が見込まれるのか

 EUVとは、 半導体の微細化技術で用いられる露光光源の一種。半導体製造工程のなかで、EUV露光装置を用いて回路をチップ上に転写する時に用いられる。

 従来の露光光源の主流は、ArF(フッ化アルゴン)という193nm(ナノメートル、ナノは10億分の1メートル)の光源を用いているが、EUV露光の波長は13.5nmと短くなり、その分より微細な加工ができるようになる。

 現在の最先端半導体の回路線幅は5nmまで進んでいるが、EUV露光では、理論上は2nmまで細くできるとされている。線幅が細くなれば情報量を増やすことができ、同じ情報量なら小型化できるようになる。また、工程の簡略化などによりマルチパターニング(微細なパターンを形成するために複数回の露光を繰り返すこと)などで課題となっていた歩留まりの向上も期待できる。そのため、半導体各社はEUVに関する投資を積極化しているのだ。

●ASMLの上方修正で注目度アップ

 半導体微細化のロードマップ上の次世代技術として、1990年代には既に注目されていたEUVだが、光源の出力不足、マスクやレンズの素材開発などさまざまな課題があり、その活用は遅れていた。ただ、2019年に一部の量産ラインで用いられたことから、徐々に普及が広がっており、今後更に大きな市場へと成長が見込まれている。

 特に、ここ直近で株式市場においてEUVへの注目が高まっているのは、現在唯一のEUV露光装置メーカーであるオランダASMLホールディングADR<ASML>社が7月21日に21年12月期の売上高予想を上方修正したことがきっかけといえる。ASML製品に対応するレーザーテックのEUV対応マスク検査装置「ACTIS」は今期から売上高への計上が本格化する予定だが、前述のように、今期は不具合対応などで利益率が低い初期ロットが中心で、商品構成が悪化するため粗利益を圧迫する。ただ、23年6月期以降は粗利益の悪化に歯止めが掛かり、再び高い増益率となることが期待されている。

●EUV対応で国内メーカーには競争力

 現在、EUV露光装置を製造できるのは世界でもASMLだけだが、EUV導入により、光源だけでなく露光手法や使用する部材などが従来とは大きく変化するため、周辺装置や部材メーカーにもビジネスチャンス拡大が期待できる。波長が極端に短くなるため、従来の露光で用いられていた透過型のフォトマスクではなく、反射型と呼ばれるタイプが必要となるほか、露光用のレンズも反射型となる。半導体感光材料(レジスト)などの薬液もEUV対応が必要となるほか、マスクの欠陥検査装置も高性能が要求される。

 こうしたなか、国内メーカーはEUV対応が進んでいるところが多く、今後競争力を発揮しよう。

●EUV対応レジストメーカーなどにビジネスチャンス

 東京エレクトロン <8035> は、塗布現像装置で9割弱の世界シェアを誇るが、EUV露光装置向けではシェア100%を占める。また、ASMLとベルギーの研究機関であるアイメックが共同運営する研究所に次世代塗布現像装置を提供しており、更なる競争力アップに余念がない。

 三井化学 <4183> は、ASMLとEUVペリクル(フォトマスク用防塵カバー)を開発し商業生産を開始した。波長の短いEUVはさまざまな物に吸収されるため、レンズは透過型ではなく反射型が必要で、また空気中の成分にさえ吸収されるため真空条件下での露光も必要となる。露光の過程で高額なマスクの劣化は避けられないが、コスト低減の観点からもペリクルによる寿命延長が求められており、同社への引き合いも強まろう。

 東洋合成工業 <4970> [JQ]は、レジストの大手の一角。ArF用、EUV用レジストを合わせた需要量は20~26年に2.1倍に拡大するとの予測もあり、なかでもEUV用は急成長が見込まれている。同社のほかにもレジストでは、JSR <4185> 、東京応化工業 <4186> 、大阪有機化学工業 <4187> なども注目されている。

 HOYA <7741> は、半導体ウェハーに回路を描く原板となるマスクブランクスの世界シェアトップで、第1四半期(4-6月)ではEUV用が前年同期比70%増と高成長している。同じくEUV用マスクブランクスを手掛けるAGC <5201> も足もとで出荷が増えていることから、EUVマスクブランクスの供給体制の大幅増強に取り組んでおり、22年から増産体制をスタートさせる予定だ。

 このほか、レーザーテックの検査装置向けにEUV光源を提供するウシオ電機 <6925> や、EUV露光装置の開発からは撤退したものの、EUV関連コンポーネントが好調なニコン <7731> 、EUV露光計測装置を手掛けるキヤノン <7751> にも注目したい。

株探ニュース(minkabu PRESS)

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―太陽光発電を劇的に変える可能性、軽量・柔軟な特長に関心高まる―

 菅政権は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、経済産業省が7月に公表した新しいエネルギー基本計画の原案では30年度の総発電量のうち 再生可能エネルギーで36~38%(現行目標は22~24%)を賄うことが示された。風力は環境への影響調査などに時間がかかることから当面は太陽光に頼らざるを得ないが、国土面積当たりの日本の太陽光の導入量は既に主要国のなかで最大で、パネルの置き場所は限られつつある。そこで関心が高まっているのが、軽量で柔軟性を持つペロブスカイト太陽電池だ。

●政府は研究開発を支援

 ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの 太陽電池で、発電層を含む厚みが現在主流となっているシリコン系太陽電池の100分の1程度と非常に薄いため、軽量で曲げることができるのが特長。そのためネット・ゼロ・エネルギービル(建物全体でのエネルギー負荷制御と高効率システムの設置などにより、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現したうえで再生可能エネを導入し、年間の1次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物のこと)の普及につながる建物壁面への設置や、透明電極を用いて窓への適用など多様な設置形態が可能になる。また、太陽電池モジュールの基板に直接、層材料を塗布することができることから従来の作製技術に比べて、より安価に形成できることもメリットとして挙げられる。

 こうしたことから世界各国で、ペロブスカイト太陽電池が“シリコンに対抗しうるゲームチェンジャー”と位置づけられ、長期的にはシリコンと置き換えることを念頭に実用化を目指す動きが活発化。例えば、米国では国立再生可能エネルギー研究所が中心となって「米国先進ペロブスカイト製造コンソーシアム」が設立されている。国内では経産省が8月31日に開いた産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会のグリーン電力の普及促進分野ワーキンググループ(WG)で、脱炭素化に取り組む企業を支援する2兆円の基金から、ペロブスカイトの社会実装を視野に次世代太陽電池に関する研究開発のプロジェクト予算(21~30年度)として最大総額で498億円(基盤技術開発事業に上限80億円、実用化事業に上限120億円、実証事業に上限298億円)を配分する計画が示された。

 WGの資料によると、太陽光発電の世界市場規模は30年に約5兆円(うち次世代太陽電池は約500億円)、50年に約10兆円(同約5兆円)になると試算しており、ペロブスカイト太陽電池の関連銘柄に注目したい。

●社会実装に向け着々

 リコー <7752> は屋外・宇宙用途向けのペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでおり、色素増感太陽電池で培ったモジュール作製技術や屋内外共通で利用可能な低照度・高照度の性能両立化に強み。今月には九州大学と共同開発した薄型・軽量・フィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプル提供を開始するなど、さまざまな次世代太陽電池を手掛けていることから同社のビジネス機会は更に広がりそうだ。

 ニチコン <6996> は6月、リコー電子デバイス(大阪府池田市)及び京都大学発のペロブスカイト太陽電池のスタートアップ企業であるエネコートテクノロジーズ(京都市上京区)と共同でフィルム型ペロブスカイト太陽電池を活用した電子棚札システムを開発した。室内環境のような低照度下でも高い変換効率を有するフィルム型ペロブスカイト太陽電池と、微弱電流による充電が可能で長寿命の充放電サイクル特性を持つ二次電池、低消費電源回路を組み合わせることでメンテナンスフリーのシステムを開発することに成功した。

 サムコ <6387> は5月、京都大学化学研究所にペロブスカイト太陽電池向けALD(原子層堆積)装置を納入したと発表。このALD装置は容積を小さくし、ガス消費を抑えた効率的な反応室構造を採用しているほか、オープンロード(反応室開閉)式の装置にグローブボックスを装備しており、大気にさらすことなく試料の出し入れが可能だという。

 ホシデン <6804> は4月、ペロブスカイト太陽電池事業に参入すると発表した。関係会社のホシデンエフディが持つタッチパネル製造ラインは、ペロブスカイト太陽電池生産との親和性が高く、既存設備の有効活用が可能。将来的には韓国やベトナムにあるフィルム基材タッチパネルの製造ラインを活用することにより、フレキシブル太陽電池の量産も視野に入れている。

 産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所は4月、21年度「被災地企業等再生可能エネルギー技術シーズ開発・事業化支援事業」として、ケミプロ化成 <4960> [東証2]が応募した「ペロブスカイト太陽電池用材料の開発」を採択しておりマークしておきたい。

●フジプレアムなどにも注目

 このほかでは、研究開発に取り組んでいるカネカ <4118> 、フィルム型の実用化に向け注力する積水化学工業 <4204> 、京都大学と開発を進めているフジプレアム <4237> [JQ]、グループ会社が関連試薬を手掛ける富士フイルムホールディングス <4901> 、エネコートテクノロジーズに出資している三菱マテリアル <5711> 、ペロブスカイト化合物を取り扱う堺商事 <9967> [東証2]に商機がありそう。また、ペロブスカイト太陽電池モジュールで高エネルギー変換効率を達成している東芝 <6502> とパナソニック <6752> も見逃せない。

株探ニュース(minkabu PRESS)

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