フィスコ

■要約

コンフィデンス<7374>は、「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」というビジョンの下、2014年8月に創業した。主力事業である人材事業ではクリエイターを募集・採用し、ゲーム業界向けの派遣・紹介・受託業務サービスを提供し、メディア事業では自社メディアサイトの運用及びメディア運営支援サービスを展開している。後発参入にもかかわらず、取引社数は約120社、創業以来累計で約190社に上り、(株)バンダイナムコスタジオ、(株)Cygames、グリー<3632>といった大手企業をはじめ、中堅以上のゲーム会社の大多数と取引実績がある。

同社の競争優位性は、高い採用力と営業力を背景とした人材のマッチング力にある。求職者数最大化と求人数最大化によりマッチング総量を最大化するために同社は、分業化・標準化に基づいた組織設計をし、オペレーションは極力簡易化することで、効率的な組織運営を展開している。この結果、同社は2017年3月期~2021年3月期の売上高年平均成長率(CAGR)62.5%、営業利益の年平均成長率72.0%と、2014年8月以降高い事業成長率及び収益率を実現している。同社によると、人材派遣業界の営業利益率は10%以下が多数のなか、同社の2022年3月期の営業利益率は16.8%と高水準を維持していることからも、同社の強みが、高い事業成長率及び収益率実現に寄与していることが窺える。

1. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比24.0%増の4,425百万円、営業利益で同23.3%増の745百万円、経常利益で同22.3%増の737百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同32.9%増の530百万円となり、売上高及び各利益は過去最高業績を達成した。また2021年6月に公表した業績予想比では、売上高が0.9%増、売上総利益が3.8%増、営業利益が3.5%増、経常利益が2.9%増、親会社株主に帰属する当期純利益が6.6%増と全指標で予想を上回って着地した。中期成長戦略に掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を目指し顧客深耕に取り組んだ結果、主力の派遣事業が堅調に推移した。また、主要なKPIのうち、ストック型収益モデルの基礎となるクリエイター派遣配属数は、前期末比120人増の740人(期初想定は700人)と着実に増加したほか、クリエイターの稼働率についても高水準で推移した。

2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績について同社は、売上高を前期比17.5%増の5,200百万円、営業利益を同14.0%増の850百万円、経常利益を同14.9%増の848百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同10.3%増の585百万円と見込んでいる。主力のゲーム会社各社は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でも堅調に推移していることから、中期成長戦略で掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を引き続き推進することで、さらなる成長を目指す。またメディア事業では、収益の柱をアドネットワーク収益からプロモーション受託に転換する方針を掲げている。

3. 成長戦略
同社は、中期成長戦略として「顧客深耕及び事業連携の好循環(エコシステム)確立による事業拡大」を掲げ、(1) 対象顧客の網羅・深耕、(2) 提供サービスの多様化、(3) エコシステムの確立、を推進することで、3~5年後に売上高100億円を目指している。また、長期成長戦略として「対象市場の拡大とマッチングソリューションによるデジタルエンターテイメント領域※への展開」を掲げ、(1) 対象市場の拡大、(2) 受託事業の拡大による知見の蓄積、(3) マッチング範囲の拡大・高度化、を推進することで、デジタルエンターテイメント領域への展開を実現する考えだ。

※ゲーム、デジタルライブ、デジタル配信、SNS、e-スポーツなどを含むデジタル化されたエンターテイメントを提供する領域。メタバース上で提供されるサービスも含む。


中期成長戦略としては、顧客深耕により顧客当たり派遣人数の最大化を目指すほか、派遣事業で構築したネットワークを生かし、人材紹介・受託業務のクロスセルによりさらなる収益拡大を図る方針だ。また、人材派遣・人材紹介・受託メディアの各事業が相互に連携し好循環を確立・拡大することで、経営効率も高めていく。

長期成長戦略としては、対象市場及び受託事業の拡大で知見を蓄積し、デジタルエンターテイメント領域への展開を目指す。近年急速に浸透しているメタバースとゲーム業界のスキルは親和性が高いことから、同社及びクリエイターのノウハウを生かしたデジタルエンターテイメント領域への進出は、実現可能性が高いと弊社では見ている。既存の事業資産を活用した多角化戦略と言え、将来像がイメージできる魅力的な成長戦略であると評価できる。

4. 株主還元策
同社は、将来の事業拡大と財務体質の強化のために必要な内部留保を行いつつ、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針とし、配当性向30%超及びDOE(株主資本配当率)10%超を目標としている。この基本方針に基づき、2022年3月期は1株当たり40.0円(前期はなし)の配当を実施し、配当性向は33.8%、DOEは15.7%となった。2023年3月期については、1株当たり45.0円(前期比5.0円増)を予定しており、配当性向は35.2%、DOEは11.6%となる見込みだ。

■Key Points
・2022年3月期は主力の人材事業がけん引し、過去最高業績を達成
・好調な外部環境などを追い風に、2023年3月期も増収増益を見込む
・顧客深耕とエコシステムの確立により、3~5年後に売上高100億円を目指す。長期的にはデジタルエンターテイメント領域への展開を計画
・配当性向30%超及びDOE10%超を目標とし、2022年3月期は1株当たり40.0円の配当を実施
 

 

■事業概要

コンフィデンス<7374>は、「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」というビジョンの下、2014年8月に創業したゲーム・エンターテイメント業界向け人材派遣・人材紹介・業務受託及びメディア運営会社である。後発参入にもかかわらず、取引社数は約120社、創業以来累計で約190社にのぼり、バンダイナムコスタジオ、Cygames、グリーといった大手企業をはじめ、中堅以上のゲーム会社の大多数と取引実績がある。

1. 市場動向
同社が主にサービスを提供しているゲーム業界は右肩上がりで成長を続けており、国内ゲーム市場コンテンツ規模※は2014年の9,886百万米ドルから2018年には16,586百万米ドルまで増加し、2023年には21,249百万米ドルと予想されている。また、世界のゲーム市場コンテンツ規模※も同様に成長基調で、2014年の75,592百万米ドルが2018年には124,427百万米ドルとなり、2023年には172,663百万米ドルと予想されている。一方、ゲームのデバイスについてはモバイルゲーム市場規模が伸長している。これらのゲーム市場の規模拡大により、同社の主要顧客であるゲーム会社各社の業績は堅調に推移している。このような環境の下で同社は、今後も堅調な拡大が見込まれる国内市場に加え、将来的には海外展開も視野に入れていることから、さらなる業績拡大が見込めると弊社では見ている。

※出所:経済産業省「コンテンツの世界市場・日本市場市場の概観(令和2年2月)」。


ゲーム業界における派遣事業という観点で見ると、同社の営業利益率は競合他社と比較し高水準で推移していると言える。一例を挙げると、2022年3月期の同社の営業利益率は16.8%であるのに対し、競合他社は8.2%、0.8%、11.3%となっている。これは同社の競争優位性が発揮されている結果である(詳細は後述)。


「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」をビジョンに掲げ、人材事業及びメディア事業を展開

2. 事業内容
同社は「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」をビジョンに掲げ、クリエイターがキャリアアップにより自らの夢を実現し、携わった作品が評価され、所属する組織・業界・社会が発展する未来を共に創り上げていくことを目指している。具体的には、クリエイターにはエンターテイメント業界に携わり、キャリアを高め、夢を実現することをサポートし、取引先企業にはエンターテイメントコンテンツを創るコア人材と情報を提供することでサポートしている。

同社の主力事業である人材事業は、クリエイターを募集・採用し、ゲーム業界向けの派遣・紹介・受託業務サービスを提供しており、人材派遣事業、人材紹介事業、受託事業からなる。またメディア事業では、自社メディアサイトの運用により広告収入を得ているほか、子会社の(株)Dolphinにてメディア運営支援サービスを提供している。

(1) 人材事業
a) 人材派遣事業、人材紹介事業
主力の人材派遣事業では、ゲーム会社向けにゲーム・エンターテイメント業界の知見が豊富な即戦力人材を顧客のニーズに合わせて派遣している。求職者の中からクライアントニーズに合わせてエントリーレベルから業界での豊富な経験を持つ者まで幅広いレベルのクリエイターを採用し、取引先企業のニーズとクリエイターのスキルをマッチングすることで配属者数を拡大し、2022年3月末のクリエイター配属数は740人となっている。また、クリエイターに対しては、ビジネススキル研修やゲーム開発に必要な知識・スキルに関する研修などを通じたキャリアアップを図っている。一方、人材紹介事業では、ゲーム会社向け及びIT・Web業界向けに事業の中核を担うハイスキル人材を紹介し、リサーチから入社承諾まで一気通貫で支援する。このほか、豊富な業界経験及び高いスキルを有するプロフェッショナル人材をプロジェクトベースで提供する「フリーランス」も展開している。

クリエイターの一例を挙げると、ゲーム会社向けでは、予算・スケジュール・人員構成などプロジェクト全体を統括するゲームプロデューサー、スケジュール管理など制作現場を管轄するゲームディレクター、ゲームの企画を行うゲームプランナー、ゲーム開発のプログラミングを担当するゲームプログラマー、シナリオライター、カスタマーサポートまで多岐にわたる。また、IT・Web業界向けでは、プロジェクトの納期・予算・人員編成など全体の統括を行うWebプロデューサー、制作現場の管理を行うWebディレクター、デザインを担当するWebデザイナーなど幅広い。

b) 受託事業
受託事業はゲーム開発・運営のうち外部委託可能な業務を代行する事業で、主にゲームタイトルのデバッグ※業務を受託している。ゲームタイトルのデバッグ業務は守秘性が高いことから、2020年4月に新宿区に専用オフィスを立ち上げ業容拡大の準備を整えるとともに、営業・管理体制の強化を図っている。また、人材派遣事業との連携により、新規案件のリード獲得数増加に努めている。デバッグ業務のほか、英語・中国語・韓国語をはじめ幅広い言語に対応した多言語ローカライズサービスやカスタマーサポートも行っている。

※コンピュータプログラムのバグ・欠陥を発見及び修正し、動作を仕様どおりのものとするための作業のこと。


(2) メディア事業
女性向けメディア「Lovely」、占いメディア「Plush」、ゲームメディア「GAMEMO」などのメディアサイト運営により広告収入を得ている。また、メディアサイトの運営ノウハウを基にSNS運用代行などのプロモーション支援も行っており、ゲーム業界のみならず幅広い業種に対応している。現在の収益構造は広告収入が大半を占めているが、プロモーション支援受託に注力することで売上拡大を図る方針を掲げている。

 

 

3. 同社の強み
コンフィデンス<7374>の競争優位性は、高い採用力と営業力を背景とした人材のマッチング力にある。求職者数最大化と求人数最大化によりマッチング総量を最大化するために同社は、分業化・標準化に基づいた組織設計をし、オペレーションは極力簡易化することで、効率的な組織運営を展開している。この結果、2014年8月以降、後発参入にもかかわらず高い事業成長率及び収益率を実現している。

(1) 採用力
同社は、ゲーム業界に特化することで効率的に集客を行い、安定的な採用を実現している。ゲーム業界は人気業界のため能動的エントリーが多いものの、リファラル採用(知人からの紹介による採用)も一定割合を維持することで、年間応募者数は約1万人となっている。また、社員満足度の高さも採用力につながっている。幅広い職種から未経験者にも業務を紹介し、実践によるスキルアップの機会を提供しているほか、毎月実施している面談などによりクリエイターの不安や不満を早期に解消することで退職率を低水準に抑え、就業期間の長期化を実現している。一方、ゲーム業界に精通していることから、人材市場の環境変化に応じて求人広告を掲載していることに加え、広告媒体の費用対効果を逐次分析、出稿配分を変更している。これらの結果、採用LTV※は約19倍と、効率的に利益を生み出す仕組みを構築している。

※採用LTV(Life Time Value)は、1人当たり採用コストに対して1人が入社から退職までどれだけ売上総利益を稼得したか計算したもの。


(2) 営業力
同社は、経営陣の人材業界に対するノウハウとゲーム業界に特化することによる知見の早期蓄積により、高い営業力を実現している。全社員に占める営業職は約40%と高水準であることからも、企業・求人開拓力を重視していることが窺える。企業開拓に当たっては特定の顧客に依存しないよう取引社数を拡大する方針で、多数の顧客によりリスクが分散され一定水準の売上総利益率を確保している(2021年3月期の取引社数は102社、派遣事業の売上総利益率は32.7%)。また、継続的な顧客深耕により顧客当たり派遣数は増加傾向にあり、1社当たり配属数は2017年3月期の2.36人から2021年3月期には5.77人まで拡大している。

(3) マッチング力
同社は、ゲーム業界への知見から、顧客のニーズとクリエイターのスキルを勘案したマッチングを行うことで、高い精度のマッチングを実現している。また、豊富な求人数とクリエイター数も高い精度のマッチングに寄与している。一方、短期間の成約を実現するオペレーションを構築しており、約70%の求職者が採用面接から1ヶ月以内に配属先が決定している。これらの結果、クリエイター年間平均稼働率は98.8%(2020年4月~2021年3月)と高水準の稼働率を実現している。

(4) 効率的な組織運営
同社は後発参入にもかかわらず高い事業成長率及び収益率を実現しているが、これは分業化・標準化に基づいた組織設計をし、オペレーションは極力簡易化することで、効率的な組織運営を展開していることによる。このうち標準化については、事業KPIを設定したプロセスマネジメントを実行している。これにより、生産性向上を図るとともに、利益減少リスクを早期に発見し、損失を最小限にとどめている。

競争優位性に基づいた事業戦略及び効率的な組織運営により、同社は2017年3月期~2021年3月期の売上高CAGRが62.5%、営業利益のCAGRは72.0%と急成長を実現している。同社によると、人材派遣業界の営業利益率は10%以下が多数のなか、同社の2022年3月期の営業利益率は16.8%と高水準を維持していることからも、同社の強みが、高い事業成長率と収益率実現に寄与していることが窺える。
 

■業績動向

1. 2022年3月期の業績概要
コンフィデンス<7374>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比24.0%増の4,425百万円、営業利益で同23.3%増の745百万円、経常利益で同22.3%増の737百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同32.9%増の530百万円となり、売上高及び各利益は過去最高業績を達成した。また2021年6月に公表した業績予想比では、売上高が0.9%増、売上総利益が3.8%増、営業利益が3.5%増、経常利益が2.9%増、親会社株主に帰属する当期純利益が6.6%増と全指標で予想を上回って着地した。中期成長戦略に掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を目指し顧客深耕に取り組んだ結果、主力の派遣事業が堅調に推移した。

事業セグメント別概要は以下のとおり。

(1) 人材事業
売上高は前期比24.5%増の4,353百万円、売上総利益は同24.9%増の1,481百万円、セグメント利益は同24.4%増の1,166百万円と、高水準の利益を維持しながら堅調に推移した。主力のゲーム会社向け派遣事業の配属者数を拡大するため、新規取引先開拓のみならず、既存取引先のさらなる深耕に取り組んだことにより、派遣事業が堅調に推移した。

主要なKPIのうち、ストック型収益モデルの基礎となるクリエイター派遣配属数は、前期末比120人増の740人(期初想定は700人)と着実に増加した。また、クリエイターの稼働率についても高い水準で推移しており、第1四半期99.4%、第2四半期99.9%、第3四半期99.7%、第4四半期99.6%と、期を通して好調に推移した。

(2) メディア事業
売上高は前期比6.6%増の77百万円、売上総利益は同6.5%減の46百万円、セグメント利益は同3.1%増の13百万円となった。主要なKPIであるページビュー(PV)数は前期比0.4%増の137,787千PVと前期同水準で推移したものの、PV数当たりの単価は前期比で下落しており、アドネットワーク事業の売上高は減少した。これに対し同社では、収益の柱をアドネットワーク収益からプロモーション受託に転換する方針を掲げている。


財務安全性についての懸念はなし

2. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の資産合計は前期末比884百万円増の2,437百万円となった。流動資産は同849百万円増の2,268百万円となった。これは主に現金及び預金が784百万円、売掛金が69百万円増加したことによる。また、固定資産は同34百万円増の169百万円となった。

負債合計は前期末比133百万円減の782百万円となった。これは主に借入金が90百万円、未払法人税等が56百万円減少したことなどによる。純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益530百万円の計上などにより、同1,018百万円増の1,655百万円となった。

経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末比26.6ポイント上昇の67.6%となったほか、現金及び預金は1,724百万円であることから、財務安全性についての懸念はないと弊社では見ている。

2022年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは461百万円の収入となったが、主な要因は税金等調整前当期純利益の計上733百万円、法人税等の支払267百万円などによる。投資活動によるキャッシュ・フローは64百万円の支出となったが、主な支出は無形固定資産の取得10百万円、敷金及び保証金の差入による支出47百万円などによる。財務活動によるキャッシュ・フローは387百万円の収入となったが、主な収入は株式の発行による収入473百万円などによる。この結果、期中の現金及び現金同等物は784百万円増加し、当期末残高は1,724百万円となった。投資活動によるキャッシュ・フローが支出であるものの、営業活動によるキャッシュ・フローで賄える範囲内であることから、健全と弊社では見ている。
 

 

■今後の見通し

2023年3月期の連結業績についてコンフィデンス<7374>は、売上高を前期比17.5%増の5,200百万円、営業利益を同14.0%増の850百万円、経常利益を同14.9%増の848百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同10.3%増の585百万円と見込んでいる。また、中長期的な成長を踏まえ、2023年3月期の財務目標として売上高成長率15~20%、売上高総利益率30%超、営業利益率15%超を前提とした事業計画を策定している。主力のゲーム会社各社はコロナ禍でも堅調に推移していることから、中期成長戦略で掲げる「顧客当たり派遣人数の最大化」を引き続き推進することで、さらなる成長を目指す。

事業セグメント別見通しは以下のとおり。

(1) 人材事業
売上高は前期比16.6%増の5,070百万円を見込んでいる。ゲーム会社各社の業績はコロナ禍でも堅調に推移しており、ゲーム開発に必要な人員を継続的に募集していることから、主力の人材派遣事業ではクリエイター配属数の拡大を進める。また、人材紹介事業においても、ゲーム会社やIT・Web系のクライアントを中心に人材採用意欲が旺盛であることを背景に、紹介人数の拡大を図る。受託業務事業においては、ゲーム会社からのデバッグ業務案件を中心に一定の需要が継続的に見込めるため、人材派遣事業のネットワークを利用したクロスセルを行うことで、案件数の維持を見込んでいる。

(2) メディア事業
売上高は前期比68.5%増の130百万円を見込んでいる。コロナ禍によって広告市場が鈍化している傾向にあるほか、グーグルの検索アルゴリズムアップデートの影響が見通しにくいことから、PV当たりの単価やPV数が安定的に推移するかどうか不透明な状況にあるとしている。これらに対応するため、記事制作の質向上や漫画コンテンツの増産を目指すともに、メディア事業に関連する受託案件を増加させることで収益構造の転換を図る方針だ。

 

 

■成長戦略

2021年6月にコンフィデンス<7374>は、中期及び長期の成長戦略を策定した。中期成長戦略として「顧客深耕及び事業連携の好循環(エコシステム)確立による事業拡大」を掲げ、(1) 対象顧客の網羅・深耕、(2) 提供サービスの多様化、(3) エコシステムの確立、を推進することで、3~5年後に売上高100億円を目指している。また、長期成長戦略として「対象市場の拡大とマッチングソリューションによるデジタルエンターテイメント領域への展開」を掲げ、(1) 対象市場の拡大、(2) 受託事業の拡大による知見の蓄積、(3) マッチング範囲の拡大・高度化、を推進することで、デジタルエンターテイメント領域への展開を実現する考えだ。

1. 中期成長戦略
(1) 対象顧客の網羅・深耕
同社は、一層の顧客深耕によりクリエイターの新たな就業機会を獲得し、顧客当たり派遣人数の最大化を目指す。具体的には、開発スケジュールをヒアリングすることで将来のニーズを把握したり、同一顧客の他部門を紹介してもらうことにより新たな人材ニーズの発掘を図っていく。これらを推進することで、ゲーム業界における派遣事業者として圧倒的No.1を目指す。顧客深耕による事業拡大は確実かつ効率的な手法であることから、顧客当たり派遣人数の最大化は十分期待できると弊社では見ている。

(2) 提供サービスの多様化
従来は人材派遣事業、人材紹介事業、受託事業がそれぞれ独自で部署開拓を行っていたため、顧客ニーズを識別できず、潜在的な機会ロスが発生していた。このため、派遣事業で構築したネットワークを生かし、人材紹介・受託業務のクロスセルによりさらなる収益拡大を目指す。この結果、人材紹介事業では顧客接点が増加し魅力的な求人獲得が可能となり、受託事業では開発スケジュールを認識することで、ニーズの正確な把握や適切なタイミングでのサービス提供が可能となる。顧客との接点が増加し、サービス提供が多様化することで、顧客当たりの収益の増大を目指す。

(3) エコシステムの確立
人材派遣・人材紹介・受託メディアの各事業が相互に連携し好循環を確立・拡大することで、経営効率を高め、ゲーム業界へのサービス提供機会増大を目指す。エコシステムの確立としては、メディア事業の運営ノウハウを利用して人材派遣事業や人材紹介事業の集客増大を図るほか、未就業のクリエイターの受託案件での就業、受託案件のOJTによるクリエイターのスキルアップ、高スキルのクリエイターの就業による請求単価上昇などを推進していく。また、エコシステムの拡大としては、人材派遣事業で構築したネットワークにより、受託案件の増加や人材紹介実績の増加を見込むほか、派遣機会の増加、メディア事業の集客ノウハウを活用したゲーム会社のプロモーション支援などを推進していく。このように各事業が循環性を持つことで経営効率アップを目指す。既存のネットワークを活用することは新規開拓と比較しコスト削減が見込めることから、利益率向上が期待できると弊社では見ている。

 

 

■コンフィデンス<7374>の成長戦略

2. 長期成長戦略


(1) 対象市場の拡大
業界・エリア・形態の多様化・拡大を図り、ゲーム業界特化からWeb・エンターテイメント領域への進出を推進していく方針だ。業界の多様化としては、主力のゲーム業界に加え、その周辺領域であるエンターテイメント・Web業界での人材ビジネス展開を進める。エリア拡大としては、知名度向上と事業規模拡大を目的に、1~3年以内に福岡・大阪に拠点を設置する予定であるほか、将来的には海外展開も視野に入れている。形態の多様化としては、人材派遣・人材紹介と契約形態の異なるフリーランス領域に参入していく。フリーランスとのネットワーク形成による高スキル人材のチーム組成と多様なサービス展開を目指す。弊社では海外進出に期待している。現時点では海外進出の時期など具体的なことは未定であるが、M&Aを活用した海外展開などもあり得ると弊社は見ている。

(2) 受託事業の拡大による知見の蓄積
受託事業は主にゲームタイトルのデバッグ業務を受託しているが、メディア関連の受託サービスを拡大し、人材プールの規模・多様性を拡大することで、多様な人材サービスの提供を目指している。メディア関連の受託サービスとしては、ゲーム会社が新タイトルを発売する際のプロモーション支援(SNSやインフルエンサーによる集客)や、ゲーム会社またはゲームタイトルを対象としたオウンドメディア開発・運用代行を実施する。また、人材プールの規模・多様性としては、プロモーション支援、デバッグ支援のほか、翻訳、開発など様々な受託業務をこなすことで、多様な人材プールを確保していく。このほか、社員相互に新たなスキルを身に付ける機会を得られるようLab(laboratory)を設置し、ここで得たスキルを使った新たなサービスを提供する方針だ。

(3) マッチング範囲の拡大・高度化
同社は、マッチングソリューションを拡大することでデジタルエンターテイメント領域への展開を目指している。具体的には、ゲーム会社とのネットワークを利用して、ゲーム業界のXR技術と様々な業種の企業をマッチングするとともに、人材派遣事業・受託事業で蓄積したノウハウによりマッチング後の企業に対して知見を持った人材が支援することで、様々な企業を対象にしたデジタルエンターテイメント領域に進出することを目標としている。既存顧客であるゲーム会社とゲーム会社の技術をビジネスに活用したい他業界の企業をマッチングすることのみならず、プロモーションや人材支援も併せて提供することにより、様々な業種の企業へアプローチしていく。近年急速に浸透しているメタバースとゲーム業界のスキルは親和性が高いことから、同社及びクリエイターのノウハウを生かしたデジタルエンターテイメント領域への進出は、実現可能性が高く、2022年5月12日に発表した役員人事はゲーム業界への知見を持つ役員のみならず、IT業界への知見も豊富な役員を加えていることから同領域への進出を意図したものであると弊社では見ている。既存の事業資産を活用し、新たな人的チャネルを利用した多角化戦略と言え、将来像がイメージできる魅力的な成長戦略であると評価できる。

 

 

■株主還元策

コンフィデンス<7374>は、将来の事業拡大と財務体質の強化のために必要な内部留保を行いつつ、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針とし、配当性向30%超及びDOE10%超を目標としている。

この基本方針に基づき、2022年3月期は1株当たり40.0円(前期はなし)の配当を実施し、配当性向は33.8%、DOEは15.7%となった。2023年3月期については、1株当たり45.0円(前期比5.0円増)を予定しており、配当性向は35.2%、DOEは11.6%となる見込みだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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