<老子語録>
◉「攻遂(こうと)げ身退(しりぞ)くは、天の道なり」
春は春のなすべきことを終われば、その地位を夏に譲る。
夏も秋も、それぞれ葉を茂らせ実をみのらせば、冬にその地位を譲る。
人間も、一応の仕事ができ、功名を遂げたら、その地位から退くのが、
天の道に従うゆえんである。
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◉「三十輻(さんじっぷく)、一轂(いっこく)を共にす。其の無に当たりて、車の用あり」
車には轂(こしき)が一つあって、そこから三十本の輻(や)が出ている。
それが、「三十輻、一轂を共にす」である。
しかし、車のいちばん大切な所は輻でも轂でもない。
轂の中にあいている孔(あな)の空虚な所、すなわち無の部分である。
そこに心棒がはいっているから車が回転する。
このように、万物の働きは、いつでも無から起こってくる。
すなわち、有の働きはすべて無から出てくる。
物があるということは、要するに物の働きがあるということであるから、
有は無から生ずるという老子の根本思想にも通じる。