1番バッターの話 | 米の心

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今年のプロ野球セリーグは混戦となっています。今年は、といいましたが、個人的には割とセリーグはずっとこんなイメージですね。ただ、どこかのタイミングで1チーム抜け出したりするけど、どこか団栗の背比べなところがある印象があります。パリーグもSBが今年は抜け出したりしていますが、シーズン中を振り返ると6位までゲーム差がほとんどないという年もよく見るので、本当はそこまでそれぞれのチーム実力差がどれほどあるのかというと、監督の采配であったり、チーム状況といったものの方がよほど大事なのかもしれません。

ヤクルトの塩見選手が、怪我をしたそうです。ちょっと、復帰には時間がかかりそうで、ヤクルトが優勝した年のキーマンであり、ヤクルトが浮上するためには塩見選手の存在というのは非常に大きいかと思うのでその塩見選手の一軍登録抹消の影響というのは大きいように思います。

昨年のセリーグの覇者は阪神でした。

阪神は、その投手力の高さなどが評価されますが、一つ阪神の強みと言えるのは、近本選手の存在かもしれません。

たまに3番などを任されることもある近本選手ですが、阪神においては1番バッターとしてその役割を任されることが多く、ドラフトで加入後長期離脱がなく、5年間規定打数を達成している選手です。

野球は27アウトを取られるまでに、いかに得点を多く取るかという競技になります。そして、3アウトを一つの区切りとし、攻守が後退し、3アウトとなると一旦リセットされます。よって、アウトが1アウト、2アウトとなるほどに得点の可能性が低くなるスポーツということになります。

セイバーメトリクス的にバントが意味がないというのはそのためであり、アウトカウントを与えることのメリットが統計的に少ないとしているからです。

ノーアウトから攻撃できるチャンスというのは延長がなければ9回あるわけですが、そのうちで、先頭打者が誰であるかということを攻撃側が意図的に決めることができるのは、1回のみです。まぁ、セリーグなどでは9番バッターとなった投手がアウトになることで意図的に打順調整することはありますが、出塁するか否かなどがあり、確定的にノーアウトで打順を迎えることができるといえるのは、初回の1番バッターの攻撃ということになります。

セイバー的に2番に強打者を置くべきであるというのは、1番バッターが出塁した時、ノーアウトでランナーがいるという状況を作れるからです。

ノーアウトからの得点の確率、1アウトからの得点の確率、2アウトからの得点の確率を考えた時、ノーアウトからが一番高いわけであり、その一番確率が高いところに一番強打を期待できる打者を置くことで、得点の可能性を高めようというわけです。

日本の野球は従来4番に強打者を置くことが多かったです。

この場合、1番バッターが出塁したとしても、4番のバッターにノーアウトで打順が回る可能性はそれほど高くないと思います。日本の野球だと2番に送りバントをさせるケースが考えられますが、その場合だと最低でも1アウトとなっていますし、2、3がアウトであれば2アウトで4番が打順を迎えます。

2アウトだと、歩かせるということもできますし、思いっきり強気で攻めることもできます。2アウトだと守備シフトなども様々な可能性に合わせる必要がありません。2アウトが得点の可能性が低いというのは、偶発的な要素をより守備側から見ると減らすことができるからです。

また打者はカウントによってバッティングを変えます。例えば、2ストライクと追い込まれば、よりミート打ちなどへの意識が高くなります。

これは、ランナーとアウトカウントについても同様です。

ノーアウトランナー1塁であれば、ランナーが盗塁するかどうかという話にもなりますが、セイバー的には盗塁はそれほど重視しないので、盗塁を考慮しないとすれば、その場面で最強打者はノーアウトですから、強打、HRなどの長打を狙っていくバッティングをすることができます。追い込まれると、バッターによっては考え方が変わるかもしれませんが、それでもノーアウトというところからすればある程度積極的に自分のバッティングを優先することができます。

これが、もし、2アウトで得点圏にランナーがいる場合だとどうでしょうか?よりランナーを返すというところへの意識が重視され、HRを狙うのではなく、軽打を狙っていくかもしれません。これは2ストライクなど追い込まれれば余計その傾向がでやすいとなるでしょう。

セイバー的にはそもそもグラウンド内は偶発的な要素が強く結果打率への信頼性が低いわけですが、それはHRを狙うバッターを評価するということになります。HRを狙えるバッターにも関わらず、それをランナーがいるということを理由に狙わなくなるというのはある意味では本末転倒と言えるでしょう。その意味でも、セイバー的には2番が最強打者がいいという根拠になるわけです。

日本の4番が一番いいバッターというのは、確かに得点圏で最強の打者を迎えることができるかもしれませんが、その持ち味の強打というところを帰ってそのカウントとランナーが生かしきれないというケースが発生するリスクがあるというわけです。

もし、2番や3番が繋いで、ノーアウトで4番となるとビッグチャンスかもしれませんが、そうではないならアウトカウントがいずれの形である中での4番であり、これはチャンスではあるもののバッターからしても点を取りやすいアウトカウントとは言い難いとなるわけです。

そうであるならば、2番バッターに強打者を置き、ノーアウトで最も打者が打ちやすいカウントで一番いい打者に迎えるという選択になるというわけです。2番最強打者がいいというのもまた、アウトカウントから考えていった上での合理性があるというわけですね。

実際のところMLBでは初回の得点が一番多いそうです。初回は投手も立ち上がりがどうであるか不安ですし、その中で一番意図的な打順で攻め立てられる回であると考えると、それは妥当といえるのかもしれません。

ちなみに、一時期流行ったオープナーという考え方もこの初回の失点が多いというところから来ています。それであれば、初回を全力で飛ばして行く投手で押さえ込めば、2回以降試合をコントロールできるというわけです。

まぁ、2番がいいのか、4番がいいのかはそれぞれの意見があるとして、何れにしてもその前提は、1番が出塁していることです。

1番がアウトになり、1アウトランナーなしからとなると、やはり得点の可能性はかなり少なくなるからです。1番が出塁してこそなんぼというわけです。

逆に言えば、1番が期待できるチームは自然得点の可能性を高く見積もることができるとも言えます。出塁は得点と相関性が高く、アウトカウントが少ないほど得点につながりやすい(攻撃回数が多い)ですので、当然と言えば当然ですね。福本豊さんがいた時の阪急であったりが強かったのもそうですし、赤星選手がいた時代の阪神が強かったのも、1番バッターがきちんと仕事をしたからというのは大きかったように思います。

ヤクルトを見ても、1番山田の時代にいい結果を示しましたし、近年強かった時代は、塩見選手が1番として機能を果たしました。

1番バッターの役割というのは、感覚的なだけではなく、セイバーメトリクス的にみても重要であり、それは実際に結果を出しているチームを見てもその傾向にあると言えます。

今年開幕で好調だったチームの一つが横浜ベイスーターズでしょうか?

なぜ強かったのか?ドラフト1位で指名した期待のルーキーである度会選手が機能したからです。

逆に横浜はなぜあれほどの中軸があるにもかかわらず、セリーグを抜け出すことができず3位前後を近年うろついていたのか、それは、1番バッターを固定することができなかったからです。

1番は、結果が出なければ他の打者に取って代わられることが多い打順です。最も攻撃の起点となる打順だから当然かもしれません。逆に1番が固定できないチームは勝ちきれないチームになりやすいということでもあります。

また、1番を担えるだけの実力がある選手であっても、怪我などでの離脱リスクが高い選手であれば、それはチームの成績を安定させづらいものになります。それこそ塩見選手が1番で頑張っていた時のヤクルトは強い時代を築きましたが、怪我で離脱して以降、なかなかヤクルトは浮上することができていません。

1番をできるほどの船首の代わりがそう簡単に見つかるわけではないというのもある意味では当然というわけです。

野球はHRを打てるバッターがつい主役になりがちです。実際非常に魅力的であり、花形とも言えるのが強打者である彼らだと思います。

ただ、彼らにしてもそれを支える選手がいてこその千両役者になれるわけであり、その上で鍵を握っているのは、1番バッターというわけです。

1番バッターが、どれだけいい選手であるか、どれだけ怪我が少なく試合に臨めるかといったことのチームへの影響は非常に大きいと言えます。

だからこそ、そこを固定できているチームというのは結果として強いチームであることが多いというわけです。