打者大谷 | 米の心

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今年のMLBでは日本人選手の活躍が素晴らしいですね。横浜からMLB挑戦となった今永投手ですが、4月の最優秀新人に輝くなど非常に好調なスタートと言えるのではないでしょうか?

今永投手については一発病、ホームランが打たれやすいなどといったデータがどう出るかともいわれていましたが、所属していた横浜ベイスターズのホームは全球団の中でも最もHRが出やすい球団の一つでありPFが悪い球場の一つとして知られています。今永投手は横浜時代にノーヒットノーランを達成していますが、達成したのはホームの横浜ではなく、北海道の札幌ドームでした。

札幌ドームから新球場へと変わったため今のエスコンがどれほど打たれやすいかというのはわかりませんが、ノーヒットノーランが出たのが札幌だったというところには少なからず球場の影響はあったかと思います。やはりHRが少ないと言えば、強気で攻めることができますし、ピッチングにも影響することでしょう。

ちなみに今所属しているシカゴカブスのホームであるリグレー・フィールドも打者有利の球場と言われています。21年から23年のスタッツでは、HRが平均以上、3Bはナリーグ3番目とのこと。ただパークファクターでみると101なので圧倒的に打者有利というよりは、やや打者有利くらいの指数といえそうです。

横浜は打者有利なところでしたから、そこから比較するとやはり投げやすさはあるのかもしれません。

同時期にMLBに加入した今永投手と山本投手ですが、この4月に関しては今永投手の方が少なくとも適合できていたように思えます。

この辺りは、前準備の過程の違いもあるでしょう。

今永投手は昨年、バウアーとチームメイトになっています。バウアーからMLBの情報を多く入手しただけではなく、バウアーが日本のプロ野球にフィットしていく過程も目にしています。バウアーはデビューでは上々だったもののの、その後巨人や広島に攻略され、HRをよく打たれていました。これは、アッパースイングが中心のMLBでストレートを低めに投げるのではなく、高めに投げることが多いそのままを日本に持ち込んだためであり、結果レベルスイングの多い日本では高めのストレートを痛打されることが多かったわけですが、のちにストレートの使い方を変え、日本のプロ野球にフィットしていきました。

今永投手はMLBで高めのストレートを非常に有効に使えており、一方の山本投手はストレートも日本時代同様アウトコース低めに使うことが当初多かったように思います。この辺り、バウアーから学んだことを今永投手が有効に示すことができたのがこの4月の成績に現れていたのではないでしょうか?

さて、好調の今永投手ですが、今年のMLBで日本人で異次元な活躍をしているのが大谷選手ですね。

今年は投手ではなく、打者での起用がベースということもあって圧倒的なパフォーマンスを見せています。大谷選手の打球の速さは凄まじく、きちんとミートしたボールは野手が反応するのが極めて難しいように思います。セイバーメトリクスは打球速度と角度により、HRの有効性を訴えるものです。ゆえに、打率は軽視する傾向のある指数と言えますが、打球速度が早ければ、守備的な指数の影響を下げるということを大谷選手は示してくれているように思います。

言ってみれば、内野手が反応できないほどの打球速度であるならば、フィールドの中でも対応できない=打率や出塁率の高さというところに繋がっているというわけです。

大谷選手が好調なのままさに、その打球速度が高く反応できないほどのものであるためであり、ゆえに昨年同様HRを量産しているだけではなく、打率などでも優れた数値になっているのはそのためかと思います。

MLBを代表するバッターの一人に、バリーボンズという選手がいました。彼はドーピング疑惑があり、その中でMLB最多HR記録を打ち立てましたが、当時の活躍は凄まじく、誰よりもボールを引きつけたところから速い打球で場外のHRも量産しました。ボンズは優れたHRバッターであっただけでなく、コンタクトもうまいバッターであり全盛期は打率で370と非常に優れた数値を示しました。

コンタクトがうまく、そして打球が速ければ打率につながるということをボンズもまた示しているように思います。

大谷選手がこの強い打球を打てる限り、この打撃の好調というのは続くのではないでしょうか?

大谷選手が好調な理由は本人の状態だけではなく、チームの状態も大きいでしょう。エンゼルスはトラウトというMLBでトップの選手のいるチームでした。一方で、そのトラウトは怪我が多くなり、レンドーンなどの他の期待された打者もやはり主力としてシーズンを通して活躍する機会があまりありませんでした。結果、大谷だけをマークすればいいといった環境も多かったですし、どうしても前後も含めて強力打線を1年間維持することの少ないチームでした。

しかし、今はMVP選手を並べて打線を組めるようなチームであり、前後も強力なバッターであるがゆえに、大谷だけに厳しく勝負する、歩かせるなどといった安易な選択が難しいチームとなっているわけです。

昨年非常に多く故意敬遠をされた大谷選手ですが、今年は四球そのものが減っているということなので、その辺り投手との駆け引きも違うドジャースという強力なチームに在籍しているという点も後押しになっているのは確かかと思います。

さて、大谷選手といえば、日本球界からドラフト指名された時、MLBへいきたい意向を示し、結果日本ハムが説得し、誰も成し遂げたことがない二刀流という選択に挑戦することとなりました。また、MLBに挑戦する時も、二刀流ではない方がいいのではないか?打者に、投手に絞ってはという話もあったように思います。

二刀流として成功を収めた後、そのことを口にする人というのは少なくなりました。

ただ、こうして打者に絞った大谷選手の活躍を見てみると、結局のところ何が正解だったということはなかったのではないかという気持ちにさせてくれますね。

二刀流であれほどの活躍をしたのですから、強いチームで打者に絞れば活躍するというのも当然にありうることです。

しかし日本球界でトップクラスの活躍をした選手でも、野手では成績が3割くらい現状する選手がほとんどです。イチロー選手すら、日本時代よりは成績を落とした数値があったりしています。おそらく、日本時代より成績が圧倒したというのは大谷選手だけかと思います。

その大谷選手が、では打者として最初からプレーしていたらどうでしょうか?そのようなたらればに意味がありませんが、やはりMLBを代表する選手に成長したのではないかと思います。

これが、おそらく投手であっても同様でしょう。

そして、その世界線しか見れないわけですから、どの選択をしたところで、結局他の選択をすればよかったとは言わせない文句のない活躍をするわけです。

今回は二刀流という選択をし、その中で打者に専念する機会というのがあったことで、打者に絞れば大谷選手がどれほどすごいのかということをたまたま目にすることができているといえます。

改めて本人の野球に対してのストイックなものがそうさせているのかなと思いますが、改めてすごさを感じさせる活躍だといえます。

二刀流となると、どうしても中途半端になりがちです。そのどちらでも超一流であるところを見せた大谷が、もし、片方に絞ったらどれほどの活躍を見せるのか、それを垣間見ることができるという意味では本当にある意味で貴重な今シーズンともいえるのかもしれません。

最近の野球漫画がオオタニみたいな選手を描けなくなったというのも当然かもしれません。