らんまんの話 | 米の心

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初めて?NHKの朝の連続ドラマを最後まで見たかもしれません。牧野富太郎という人が元になっていなければおそらくは見なかったでしょうか。最後まで見たということで感想を少し。

まず最終回についてはおおよそスエコザサを持ってくるのかなというのは途中まで見ていて検討がつきました。植物図鑑の完成をとか様々な最後の持っていき方というのはあったかと思いますが、このドラマのモデルは牧野富太郎ですが、話としては牧野富太郎と妻スエコといったところへのフォーカスが強かったように思います。実際に、なかなか金銭感覚が悪いなどで牧野博士が妻に迷惑をかけるシーンというのは多かったようで、それを支えた妻というところが話の中心となって行くというのは仕方のないことかもしれません。

その意味では牧野博士が主役ではあるものの、主役である牧野博士がでしゃばるというか目立つというよりは、周りの人、時代というところへの丁寧な表現というところが印象深い作品となりました。NHKは丁寧に作るときは本当に丁寧に調べて作り上げるんですが、(だいぶ前のネタですがハゲタカのドラマとかも上手だったように思います。)牧野博士だけではなく、周りの人のエピソードについても調べ上げてそれをきっちりと描こうとしている印象を受けました。

ただ、周りを丁寧に表現していったのもあって、半年では牧野富太郎の生涯を描ききれなかった感じがありますね。最後の方で南方熊楠(朝ドラ見ていて思うのですが本名で出るのと、モデルとして出るのはどういう使い分けなんですかね?)のエピソードなどもちらりと触れるシーンがありましたが、後半はエピソードを十分に描くには尺が足りず、駆け足で話が進んでいった印象を受けますね。

朝ドラというものに何を求めるのかといった話にもなるのかもしれませんが、私個人として今回見た印象からすると、結局牧野富太郎という人の凄さというところについては分かりづらいドラマだったように思います。絵がめっちゃ上手な植物大好きな人というのは伝わったかなと思いますが、植物学の父と呼ばれる牧野博士の何がすごいのかというところを描くことがあまりできていなかったように感じますね。ただ、植物を見つけてはなんじゃこれ〜といって興味を持っているだけというか、本来ならばそこからどう同定して行くのかなどといったところが植物などに触れる上での楽しさの一つでもあるのですが、その辺りについては個人的には掘り下げて欲しかったところです。もっと植物学の舞台裏といったところを描こうとして欲しかったというか。

ただ、朝ドラとしてみたときに、そのようなより専門的なところを掘り下げることは多くの人にとって関心がある人の方が少数派ですし、地味な作業なども多くそこを描いたところで面白みのあるドラマになったかというのは別の話です。朝ドラ以外であればもっとそこを掘り下げるというのもできたかと思いますが朝ドラだからこそ深く掘り下げなかったのかもしれません。

まぁ、学問などおの専門店きな分野へのドラマなどのアプローチは、製作者側も十分な理解をする必要もありますし、簡単には描くのが難しいところはあるようにも思いますね。

しかしだからこそ、その辺が薄く、結果牧野博士がどうすごかったのか、何がすごかったのかということが分かりづらく、植物好きで周りの人に助けられて図鑑作りましたって感じで、存在が非常に主人公としては薄いものになってしまったように思います。

これまでも実在の人をモデルに朝ドラはしてきたわけですが、その中でも牧野富太郎という人物というのは、世界的な知名度のある人である分、そのあたりのフィクションとリアルそのあたりの難しさも出てしまったのかもしれませんね。

ただ、時代背景などを描くのはうまく、そのため、それぞれの時代のエピソードなどは楽しく見ることができました。

最終週の最初にそれまでナレーターをしていた宮﨑あおいを出演させたのは、おそらく製作者側の当初からの狙いだったのではないかと思います。牧野コレクションについてはそれこそつい最近ようやくその整理というのが完了したと言われています。それほどに莫大なものであったわけですが、学問でありますし牧野博士が見出したものを継ぐ人たちがいてこその意味がある、そこを描きたかったのだろうなと思います。

そこを描くというところも含めて、この物語、ドラマにおいては牧野博士が主人公ではあるけれど、その牧野博士で終わる話ではない、だからこそ周りの人たちを丁寧に描こうという意思があったのではないでしょうか。

また、みていて感じたのはある程度やはり今の時代というところへの意識もあってのことかなという印象も受けますね。

まぁ、本当に牧野博士の性格などもあって家族は苦労していたところが多いのですが、そこに対して苦労、借金などについては暗い方向に持って行かず、明るい雰囲気で済ませていた印象がありますね。この辺りも、朝ドラというものであるがゆえに暗い暗い話にするよりは、朝見ていても気持ちよく見れるようにという気遣いもあったのかなと思います。

スエコザサの命名が最終回となったらんまんですが、やはりその中で中心的な人物であったのは、牧野博士といよりはその妻、スエコだったように思います。スエコが夫家族を支え続けたのは事実であり、そちらの方がエピソードとしても面白く描けるからかもしれません。

今の時代背景を見ても、女性のあり方などへの意識もあるいはあったのかもしれませんね。

だからこそ、スエコを演じていた浜辺美波の演技というのも非常に印象的だったように思います。

牧野博士の存在感がない分、話の中心になることが多いのもありますが、演技が上手い方ですね。牧野博士の反省を描いたドラマということで、後半になると子供ができ、孫ができとのなるのですが、特に年を取ってからの、お年寄りの仕草、体が弱っている仕草というのがうまかったように思います。

白髪に見せるとかして他の役者も年を取ったといった演出はされているのですが、所作が若々しく、若い頃とあまり演技が変わらない人も多かったのですが、浜辺さんは所作がゆっくりになるとか丸みを帯びた猫背になっていくるなど、気を張っていない日常の見せ方にしっかりと年齢を感じさせるものがあり、それは印象深かったように思います。

あまり朝ドラなどを見ない私の感想をまとめるとすれば、牧野博士の生涯、偉業をきっちりと描いて欲しいという人からすれば不満があり、おそらく途中で見るのもやめてしまうかもしれないかなと思いますが、朝ドラとして牧野博士を取り巻くものを描いていったものとすれば楽しめるものだったのではないでしょうか。

これを機に植物、牧野富太郎という方に興味を持った人がいるとすれば、個人的にはそれだけでも嬉しく思いますね。半年間、ありがとうございました、お疲れ様です。