本紹介:魚の不思議な世界 | 米の心

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今回ご紹介するのは、一色出版から出ている神田真司さん編著の遺伝子から解き明かす魚の不思議な世界です。

生き物の本って実はなかなか自分好みというか、知りたいことについて記述している本を探すのは苦労したりします。子供向けの本であったり、写真などのビジュアルが中心的であったりと、科学、生命学的なアプローチをしている本というのは意外に探すのに苦労したりします。それが、より分野が狭めら得たら余計にそんな感じですね。

私は、脊椎動物ではなく虫などの進化やDNAとかキチン質をどう作っていくかとか色々興味あったりするのですが、虫などは特に子供向けの本が多く、この虫はこういうところがすごいんだよみたいな本はあっても、そこの説明とかどう進化したとか、そういうことが書いてる本というのはなかなkなかったりしますね。

この本は、タイトルの遺伝子から解き明かすというところにもあるように魚について遺伝子的なアプローチをしている本であり、なかなか非常に面白い本だったように思います。

内容的にいえば、専門性が高い内容になってしまうのですが、その点は深いレベルまでの理解を求めるのではなければ、それほど専門的な知識がなくても読める内容になっているのはいいですね。

この本の初版が出たのが2019年ですから、割と新しい点も嬉しいですね。

魚とまとめられがちですが、改めて魚の整体というところを考えると、その分野の研究というのは面白そうです。

海の水、塩水に対応できる魚であり、生きている場所が海とつながっているのであれば、魚は自由に移動ができ、その中で交配し、進化もしていくことが可能です。一方で、淡水魚の中には例えば湖の中に生息していたりと、行動が限定されるものも少なくありません。隔離された環境の中にどう生命、魚が誕生したのか、それがどう進化をしていったのかというのは非常に面白い議題ですし、隔離された環境だからこそ、他からの介入がない分、よりその進化というところへのアプローチで知り得るものも大きかったりします。

魚がどう生きていくかということを考える中で、浸透圧というのは非常に大きなポイントの一つになります。

海に生きている魚も、淡水で生きている魚もその環境の浸透圧と体内の浸透圧はイコールではありません。そのため、浸透圧を調整する必要があります。そうしなければ、細胞から水が流出してしまったりするからです。

魚自身がそうして浸透圧を調整する必要があるということは、魚になる前においても同様であるということになります。

つまりは、魚が産んだ卵においても、どうやって海水の浸透圧から卵自身を守るのかということをする必要があるわけです。

鳥の卵でも、呼吸をしていると言われるように完全に外部から中に入ることができない状態ではありません。魚の卵も同様で、イオンや尿素などの分子の小さいものは出入りすることができ、それは浸透圧のストレスが卵にかかっているということを意味します。

では、魚の卵はどうやってその浸透圧から、守っているかなどといった割と興味深いところについても記述があり面白いですね。

魚というひとまとめされる種類についても、どれだけ多様であり、その多様化の中にはどういった進化がありそのようなことについて理解が深まると、魚への興味というのも高まるのではないでしょうか。

この本は遺伝子からのアプローチということともあり、遺伝子組み替え等の技術についてどうであるかということについても章立てされています。

遺伝子組み換えという言葉そのものはよく耳にしたりするのですが、では実際にどうやるのか、などというとなかなかイメージがつかないところがあります。例えばメダカのどこかの遺伝子を組み替えたいと思ってもその狙ったところを狙った形に組み替えるためにはどうすればいいのかというのは難しそうな気がしますね。

例えば大きくするだとかどこかの色を変えたいと思ったところで、ではそれに関わる遺伝子の情報がどこにあるのかということを判明させる必要があります。関係ないところに色を変えるという配置を組み入れても、意味をなさない可能性が高いからです。

よって、それをするためにはゲノム解読がされる必要があるということになります。ゲノムの解読と編集それがあって組み換えを意図した形で反映することができるというわけです。

解読といっても、それはそれ相応のデータを集めることなしにするのは難しいでしょう。一匹のメダカのゲノムだけで解読しろというのは到底無理な話です。

ということもあって、ゲノム解読や編集をする、そういう研究をするためには、まずはそのメダカなりを飼える必要が出てきます。飼えるということは、完全人工養殖が可能な状態、つまりはその生き物がどうやって生きているかということがわかる必要があるということになります。

ラットなどが実験動物として有能なのは、飼いやすく、成長が早く、結果がすぐ見れるからです。寿命の長い生き物はそれだけ回転のサイクルも遅く、実験結果がわかるまでにも時間がかありますし、そもそもその生物について把握していくにもライフサイクルが長いために時間がかかり、研究がなかなか進まなかったりします。

陸上の生物ですらそうなわけですから、魚などの水の中で生きている生物についてはそのあたりのアプローチは非常に難しいものがあります。

絶滅危惧種になったうなぎは、日本人の愛する食べ物ですが、そのうなぎについてすらその生態系はよくわかっていないというのが現状なところからもそれはわかる話かもしれません。

魚は進化の中では哺乳類などと早くに分かれたとされていますが、進化というのはそもそもが積み重ねの中で発生するものであり、人間とも共通することが多かったりします。基本はあるものをどう発展させていくかという話であるからです。天使のように人間の背中に羽が生えるみたいなことは、生物の進化からすると考えにくく、それがあるとすればそれは元々がより別の生き物であるか、別の進化の過程にあると考えるともなるわけです。

魚の進化の話、今どういう研究がされていて、どういうことがわかってきたそういうことについて専門用語などもあるものの魚の謎についてその疑問に応えてくれる良本といえるのではないでしょうか?

魚に興味ある人だけではなく、進化や生物学に興味がある人も読んで楽しめる本だと思います。