さて慶応の優勝で終わった今年の夏の甲子園、応援がどうだとか様々にもその後に言われたりスッキリしない終わり方になってしまったのは残念ですが、各高校3年生が卒業し、次のチームづくりへと移行を迎えているかと思います。
その中で次のチームづくりにむけて大きなポイントとなるのはやはり来春から導入される飛ばない金属バットの導入でしょうか。
新たな基準では、最大直径は現行の67ミリから64ミリ未満になり、また反発を軽減するために金属部分を分厚くしているとのことです。これによって木製バットに近い打球にになるとも言われていますね。
金属バットが飛ばなくした理由は様々にあるかと思います。一つは飛ぶバットでの怪我防止や投手の負担を軽減するというもの。飛ばなければそれだけヒットの確率が減りますから投手の負担が減りますし、打球速度が遅くなればそれだけ怪我のリスクが減るというわけです。
ただ、これに関しては個人的には、そちらの理由はメインではないと思っています。
それよりもずっとU18で結果が出ておらず、国際大会に弱いとされていること、そして高校野球で超高校級ともてはやされた選手でもなかなかプロで通用しないケースが多いということの背景の方が大きい気がしますね。
現状プロ野球界は投高打低の傾向がありますが、打てる打者を育てたいという思惑はやはりあるのかと思います。
ただ、個人的には高校時代に打者が金属バットで飛ばす環境、その中で揉まれてきたからこそ現在の日本の投手王国というのはできたのだと思います。なので、金属バットが飛ばなくなった場合、果たしてそれが打者の育成につながるのか、現状の日本の投手力にどう影響を与えるのかという点は疑問です。
WBCで日本が今年優勝しましたが、その原動力となったのは、世界トップクラスの投手力にあったと言えます。また、その世界トップクラスの投手力があるにも関わらず、データ、対戦経験が相手の選手にはない投手が多いというのも非常にアドバンテージになりました。
これは、NPBでプレーをする日本人選手が多い一方で、世界トップのリーグであるMLBとの接点が少ないからです。
それがゆえに短いイニング、1巡であればアメリカ代表といえども打ち崩すのが難しかったわけですね。
これを元に考えると、短期決戦のWBCでの優勝を目指すべき目標とするのであれば、投手力の高さで勝負するという方が、環境上は理にかなっていると思います。
もちろん、飛ばないボールになったからといって投手力が低下するか、というとそこは一概にはいえないですが、今年のWBCの優勝の背景に現在の野球界の環境は影響したのではないかと考えています。
さて、飛ばない金属バット、これについてですが、導入すると決めるのは勝手ですが、やはりそこには2点ほど課題があると考えています。
1点目は、飛ばない金属バットを導入する上でのコストです。
金属バットの性能が向上したと言われていますが、最新の金属バットを追いかけ、それを購入している様な学校は私立の一部の強豪学校くらいではないでしょうか?(これは勝手な私の偏見的な印象での意見です。)
例えば、昔は少年野球などで新しいバットを購入するということはほとんどなく、それまでにあったバットを使うということが多かったです。その中で自分に合うバットを探して使っていたりしましたね。
きちんと野球をする人であれば自分に合うバットをそもそも購入する、最近はサブスクで借りるサービスなんかも出てきている様ですが、バットの買い替えにはそれだけコストがかかりますし、予算も限られている中でバットをこまめに買い換えているケースというのはそれほど多くはないのではないかと思います。
つまり、バットにかける予算は限定的であるというわけです。
しかし、今回のバットが導入されるとなれば、今までのバットを使うわけにはいきませんから、バットはそれぞれの部活で一通り揃える必要があります。現在メーカーから出ているものは通常のバットより高いとも言われている中でこの出費というのは馬鹿にできないでしょう。
また、個々でも自分で練習したり、バッティングセンターで使ったりとなると金属バットを用意する必要がありますから、やはりそれも負担になるといえます。
この辺り、その負担を考えるとより強豪であり、後ろがしっかりしていて予算に余裕があるところの方がやはくに揃えることができるかと思うので、その意味では新しいバットにフィットするまでも早く、今以上に来年あたりであれば予算のある高校とそうではない高校で差が出る可能性があるのではないかと考えています。
ただ、上述の様に細かく買い換えることは基本的には少ないバットではあるかと思うので、そこは数年くらいのスパンで考えると、揃ってくるでしょうし、その後に新たに購入するなどの負担も少ないと考えると、この問題が発生するのは一時的な話とでもなるのではないでしょうか?
もう一つ気になるのは、その基準を満たした飛ばないバットであるかをどう判断するかといった点です。
通常の練習で従来のバットを使っても問題ないですし、従来のバットでも直径が新基準に収まるものはあると思います。金属の厚みは見た目ではわかりませんし、あえてそういうラインを狙ってくるバットというのも金属メーカーが作ってくるかもしれません。
そもそも直径の差は肉眼で確認できるものとは考えにくいため、各大会ごとにそれが基準を満たしたバットであるかをどのようにスムーズな進行の中で調べるのかは気になりますね。
一つ一つのバットのメーカーや商品名を調べる、簡単な方法であれば新基準の直径の輪を通るバットのみ持ち込み可能とかになるでしょうか。
この辺り不正をしようと思えばできそうですし、不正の意図がなくても持ち込んでしまうケースがあった場合、果たしてその試合をどう判断するのか気になるところです。
まぁこの辺りは、サブスクモデルのビジネスとの相性が短期的にはいいとも思いますので、上述でも記述しましたが、その様なサービスを提供するメーカーや野球専門店が絡んでくるかもしれません。
この辺りもしばらくやっていけば、それになれ、対応していくものかと思います。今の中学生などからすればそもそも飛ばないバットである環境を前提として練習してくるでしょうし。
一方でそれにはある程度の時間がかかることともいえますので、ここ3年くらいでしょうか、今の2年生、1年生が主力になるあたりから数年というところはどういう動きになるのかそれも含めて見守っていきたいですね。