本紹介:花と昆虫のしたたかで素敵な関係 | 米の心

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いちばんやさしいweb3の教本というインプレスから出ている本が話題になっているようですね。話題といってもTwitterを見る限りでは炎上の方ですが。web3.0の世界は割と胡散臭さというのがまだあったりするのですが、盛り上げていこうという人たちによる動きでそれがマイナスに働いてしまった感じがします。

私自身色々と本は読むのですが、専門的でない分野について入門書的な記述をされてしまった場合は、騙されてしまうこともありそうだと少し気を引き締めることになりそうです。(まぁ私は大抵一つでその分野理解できないので色々な人の書き手を読んでようようとわかってくるような感じだったりするのですが。)

ITなどの世界だと、結構最新の表面上のところばかり追いかけていると元々の考え方などを含めて理解が追いついておらずそれがネックになるケースもあり、その典型かもしれません。私が目にした範囲ではまだ出版社から何かしらの動きとかはなさそうですが、かなり大きな話になっていきそうな気がします。

さて、今回ご紹介させていただくのは、石井博さん著ペレ出版から出ている「花と昆虫のしたたかで素敵な関係」。

この本はまえがきにこう書いてあります。興味を持っていても、専門的な本か、子ども向けの本ばかりで、その間の本がほとんどなくてそこを埋めような本が欲しかったと。私が、実際にここの場でご紹介している本というのも割とそのようなスタンスの本が多いです。

実際それまでその分野を学習してきていない人にとって新たな分野について興味があってもその加減というのは難しかったりします。理系のようなものであれば根本的に数学の理解度が必要な場合もあったりしますし、本当にやろうとすると本格的に本腰をいれてってなることも少なくありません。

まぁ専門的な分野までの理解をしようとすれば別ですが、そうではない場合って子ども向けでもなければ、専門書でもないというところへのニーズというのは結構あるかと思います。

とはいえその間のような本でも、割と読んでいて面白かったな、知りたいところが知れたなというのと表面的にさらっているだけかなという本もあったりでそのあたりは読んでみないとわからないこともあるように感じています。

この本はタイトルにもありますが、花と送粉者、特に昆虫についてメイン書かれた本です。

はちみつなどでよく蕎麦のはちみつだのみかんのはちみつだのってあったりしますね。なんのはちみつかというのは味わいも変わってきますが、アレルギーなどがある人からすれば非常に重要な話にもなります。蕎麦アレルギーの人は蕎麦の花からとれたはちみつは取らない方がいいでしょうし、みかんのはちみつとかかれてそこにそばのはちみつが混ざっていたりしたら大変なことにもなりうるかもしれません。

しかし、養蜂家の人はハチに対してどのはちみつをとってこいなんてことを命令しているわけではないのです。つまり、それははちがその蜜を集中的に取るということをしているということなります。

他の花などもある中で、ではなぜその花の蜜ばかりを集中してとるということになるのかと考えると、なかなかどうしてだろうという話にもなってきますね。この本は、そのような花と送粉者の関係について書かれた本となります。

もっとも、養蜂家がハチに蜜を集めてもらう場合は、ある程度の恣意性というのを示すことができます。

例えば、鉢の立場で言えば、蜜をより効率的に集めたいということになります。となると、例えばみかんの花が集中して咲いているような場所があれば、それは効率的に集めやすい場所となります。養蜂場からの距離が近ければ、それも集めやすさのポイントになります。

人間が、繰り返すことで技術が向上していくように他の生き物もまた繰り返すことで技術が上がり、効率よくこなせるようになります。これによりハチからすれば一度とったことがある花というのはとったことのない花より効率的に蜜を集めやすいものという形になるわけです。

そもそもなぜ植物が花を咲かせて、送粉者(花粉を運んでくれる生き物)を利用して受粉をさせるのか、といったところから始まり、送粉者にはどのような生き物がいるのか、例えばハチがイメージつきやすいですが、ハチにも分類があれば、他にもハエやチョウ、鳥やコウモリがどのように送粉者として関係性を示しているのかということについても書かれています。

また、せっかく花粉を運んでくれても、他の植物のところへいってそこで花粉が落ちれば効率が悪いわけですから、同じ植物同士で花粉を運んでもらう必要があります。また、それも同じ木、同じDNAの者同士であれば、そもそも雌雄にわけて受粉させるとういことのメリットがなくなりますので、異なる木に受粉するように植物は努力しているわけです。

鳥はどのような花を好むのか、ハエはどのような匂いの花を好むのかといった、視覚や嗅覚に関わるところから、蜜を吸うための口の構造と植物の関係性などといったところまで、様々な要素が絡む中で植物と送粉者というのはその生態系ができていると言えます。

そのことについてアプローチされている本であり、かといって専門的なところは省いているので読んでいてもわかりやすく、なかなかにいい本だと思います。

この本は、最後のその関係性が崩れていっているよという要因についても記述があります。

例えば、その原因の一つとして農薬についての機銃があります。

農薬はなぜ巻くかといえば、虫を寄せないようにするためというのが一つの理由かと思います。

現在使われている農薬は哺乳類に対しては毒素が低いと言われているもののようですが、では、送粉者にとってはどうでしょうか?

生き物の毒というのはそもそもどのようなモノに対して効果的かといえば、基本的に近しいものに対してというものが多いです。耐性がなくDNA的に近いものであれば、毒が聞きやすく、相手に毒が効くのであれば、同じ環境において有利な立ち位置を築くことができるというわけです。

となると、農薬そのものは虫を寄せないようにするわけですから、送粉者の中にはそれが好ましくないものなどもでてくるかもしれません。そうなると送粉者と植物の関係性が限定的になりやすく、例えば、それがミツバチだけに限定されてしまえば、ミツバチに対して致命的な何かがあれば、一気に受粉という問題ができなくなるリスクが出てくるということにもなります。

受粉を生き物、虫を利用して行うというのは非常に効率的なことであり、一つ一つ人の手でやるとなるととても手間がかかり、コストが高まるということにもなります。

つまり、人間社会的にも植物と送粉者との関係性が保たれているというのは大きな話といえます。

そのあたりの関係性の崩れている様々な理由が最後の章にまとめられているというわけです。

植物は菌根菌などと共生したり、動けないからこそ、様々な生き物との関係性で生き延びてきたといえます。動物でも植物を消化できないものはバクテリアや微生物との強制で消化を助けてもらい生き延びてきました。

そのあたり、植物の受粉と送粉者との関係性にアプローチを置いた本として、この辺りに興味がある人にとっては面白い本かと思います。