既製服はなぜ肩が凝るのか | 米の心

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社会人などになり、シャツにスーツと着る機会が増えると単純なディスクワークしかしていないにも関わらず結構肩が凝ったりすることがあります。これは、スーツやシャツに慣れていないというものももちろん理由にはありますが、それ以上にそのスーツやシャツが既製品のために体に合っていないからだという可能性があります。

では、なぜ既製服だと肩が凝りやすいのかということについていくらか説明をさせていただきます。

一つ目の理由は、体に合っていない服を着ることによって生地にテンションがかかり、緊張している状態になるからです。テンションがかかっているということは、常に体のどこかで引っ張り続けているということです。シャツやスーツと言ったものの場合、そのテンションがかかる場所は、肩と腕周りなどにかかりやすいため、そのテンションがかかったところが疲れやすいということです。

しかし、普段着るTシャツなども既製服でそれほどサイズが厳密ではなくとも、それほどに肩などに負担がかかるということはありません。これはなぜでしょうか?

その理由は、一つは、Tシャツなどの素材に使われるのが綿など比較的柔らかい素材であることです。Yシャツと呼ばれるものについても、もちろん綿100%というものもありますが、その場合現在通常にある形状記憶をしないため、大変皺が入りやすく、その手入れに手間がかかるため積極的に着るという人はそれほど多くありません。また、特殊な加工で綿100でも形状記憶するものもありますが、あれは一種のノリなどで皺が入り難く、形状記憶しやすくしているだけであり、そのノリなどがなくなれば他のものと変わりがなくなってしまいます。30回ほど洗濯すれば効果は薄くなるとのことなので、半年から1年も着続ければすぐに他のシャツと変わらなくなってしまうということですね。

また、Yシャツなどが疲れる理由は、もう一つ、前でボタンを締めて着るというその着方にあります。通常Tシャツなどである場合、その縫い目が前面にあることはなく、前面に強いテンションがかかることはありません。しかし、Yシャツの場合ボタンをかけるところを中心に左右にテンションがかかります。そしてその左右のテンションはボタンだけで支えるのではなく、生地が肩からボタンにかけて引っ張られる形になり、肩にテンションがかかるということになります。よくスーツなどを着ている人で、肩からボタンに掛けて生地が張っている人がいますね、スーツにコートと上物は基本的に前で留めて着るものが多く、そのために肩が疲れやすいものがおおいというわけです。スーツやコートの場合は、加えてそれ自体が重いために余計というわけですね。

ではなんでテンションがかかることがいけないのかというと、もちろん、服などをきる際に体のどこかでその重さを支える必要があるため、その意味では、どこかに力がかかっているのは確かですが、肩で持つ場合、既製品はその個人の肩に対応できません。そのため。肩や背中などの面でその重さを持つのではなく、点で重さを支えてしまいます。(人の肩はそれほどみんな滑らかなものではないですから当たり前ですね。)そうすると負荷が集中する点が生まれ、疲れやすい環境になるということです。

これは腕周りなどについても同様ですね。作業をする際も常に腕周りというのは動かす機会が多いのですが、その度に既製服の場合テンションがかかってしまいます。例えば腕を上げた際、腕の下側の布地が緊張してしまうとそれだけの負荷がかかりります、生地にテンションがかかるというのは、収縮性の低いものを引っ張り続けているのとかわりません。腕周りの疲れは肩に着ますから、結局肩が疲れるというわけです。

テンションというのはなにも布地が小さいから生まれるわけではありません。大きめのものでも緊張が起こることは非常に多いです。布地が大きいと、体に合っていないため、布地が集中してしまうところができます。するとそこは布地が集まることによって皺や力の分散が旨くできない点となり、それが他の点での緊張を生むというわけです。分かりやすい例で言えば、厚着した際などでしょうか?厚着した際布地の行き場がなくなり、固まることによって異常にそこが凝りやすいなどのことがあります。布を逃がすことができて初めて無駄に緊張はなくなるということです。

これは、スポーツ競技用の服などを着たときに反対のことを感じるのではないでしょうか?発汗性にすぐれ布が集中し難いような作りになっているものが多いです。それは、布地からくるストレスを分散できるからですね。なのでスポーツウェアは着心地が悪くないものが多いです。アンダーアーマーやヒートテックなどの体に密着させるものは体に合っていれば疲れませんが、よっているところがあればやたら疲れたりしますね。ちなみにヒートテックはその性質上、直接着ないとあまり効果が得られるものではありません。

Yシャツが疲れる理由はもう一つ、日本では多くの肩がYシャツの下にアンダーシャツをきることも原因の一つと言えます。

そもそもYシャツと呼ばれるものそのものが日本で言う下着にあたるものであり、直接着るものです。西洋は日本より温度が低く、また湿度も低いという環境というのもあるのでしょうが、本来の性質はあくまで下着です。乳首が見えるのがいやという話なども効きますが、そもそも下着なのでシャツだけいることそのものがある程度色っぽい話らしいですね。後は彼らの肌の色も何気に影響があるのかもしれませんが。

ともかく、日本でアンダーシャツとして下着を着て、その上からシャツを着ると、特に腕周りに不必要なヨリが生まれます。下着の脇回りの布地とYシャツのそれがバッティングするからですね。これにより腕周りには常にテンションがかかりストレスを感じやすい環境になるというわけです。

オーダーメイドをした服が軽いという話はよく聞きますが、それは面で服を着て、無駄な緊張がないからです。靴などもそうですね。グッドイヤーウェルト製法の既製靴は非常に重く感じますが、手縫いのものはそうではありません。ビスポークの場合足の形をとることによって、その靴の重さを均等に分散することができるからです。既製靴は足の点で持つために特に革靴などは重く感じてしまいます。

もし、体に合わないシャツを着ていて肩が凝るなどで悩まされているとしたら一度オーダーメイドすることをお勧めします。ただし、オーダーメイドする上での注意事項がいくつかあります。

まず、上の下着(アンダーシャツ)は基本着ないこと。下着が体にフィットしないためどううまく仕立てていただいても下着によって無駄なテンションができてしまいます。また、同様の理由でスーツだけ仕立ててもある程度疲れやすいものになってしまいます。まぁ、スーツがかわるだけでもだいぶかわりはしますが、Yシャツによって起こる疲れが発生するためです。よって、スーツだけでなく、シャツもつくっておくことをお勧めします。

シャツの場合はパターンオーダーで十分ですし、安いところであれば、パターンオーダーで注文しても既製シャツと値段が変わらないところとかも結構あります。綿100パターンシャツ2枚で12000前後とかそのくらいですね。ある程度のシャツを買うと一枚5000前後はするのでそれならシャツをパターンオーダーするだけでもだいぶ変わると思います。

ちなみに、下についてフィット観などはあるものの、疲れやすさとかではスーツの上着などほどには現れません。ただ、シルエットという意味ではその人の形に合ったシルエットを出すことはやはり仕立物でないと厳しいところがあります。

服の緊張によるストレスは仕事の効率も下げますし、体にも悪影響を及ぼします。そもそも日本とスーツというのは環境上合うものではないため、なぜこれほど当たり前にスーツを着る文化になったのか不思議で溜まりませんが、ださい既製服のシルエットで体を虐めるのであれば、一度オーダーしてみるのも面白いと思います。スーツの現場で働く人にとってスーツは起きている時間一番長く着るものであり、それは40年続くものです。そういう環境下にあるからこそ、スーツやシャツを単純に値段などだけで判断して着ない方がいいかもしれませんね。