日本海側で美味しいと言われている魚が、主に日本海側に住んでいる種類という理由であれば、日本海側の魚は美味しいものがいるということになります。カニなどの甲殻類などに、ウニなどは基本的には寒いところが多いですから、そういった生き物の印象が強く、日本海側のほうが美味しいと思われる方がいる様ですね。
私が、東日本大震災の後、宮城にあるとある和食料理を提供するお店に行った時のお話ですが、太平洋側の海でとても仕入できる状態ではなく、苦肉の策として秋田から魚を仕入れているというお話がありました。料理する人にとっては、身の締まりがどうしても違うそうです。
日本海側の方が水が冷たく、身の引き締まった魚がいる様に思えて、同じ種類であれば、三陸海岸や瀬戸内の方がうまいとされるのは、それこそその潮の違いによるものです。沖縄などの魚がやわく、美味しくないというイメージがある人にとってはある意味で、冷たい水の日本海側を信仰したくなる気持ちがあるのかもしれません。
日本海側の地形をみるとわかりますが、基本的には滑らかな地形であり、海流がぶつかりあうようなところが少ない地形です。三陸海岸のような複雑な地形をしているところは見当たりません。瀬戸内にしても、大小無数の島があり、その潮の流れはベテランでもなければ読む事はできないといわれる複雑な海流をしています。そういう地形であるからこそ、瀬戸内や三陸海岸の魚は美味しいと言えます。
潮の激しさは、魚の身を引き締めますし、潮がよくぶつかるところは、えさが豊富で魚が肥えます。肥えた脂ののりつつ、かつ、引き締まった魚がそういう地形に生まれるのはそのためです。
逆に、養殖のものはそれほど、潮があるわけではありませんが、えさは豊富です。そのため、脂ののりすぎたような魚が出来上がる傾向にあります。しかし、ブリやハマチなどといった魚では、天然モノは油が少ないという事で、むしろ、養殖物のほうがスーパーなどでは好まれる傾向にあり、意外にも養殖物の方が高値で取引されてますね。タイなんかも、近年では養殖物の価値が高まったいる気がします。
南の島の魚が柔らかいと感じるのは、もちろん、温暖な気候である事も理由にあるでしょうが、それ以上に、潮の問題があります。南の島は潮のぶつかるところが多くないために、海流が弱く、結果身が柔らかい魚が多いという事になります。逆に言えば、そういうある程度海流があるところであれば南でも美味しいところはみつかるかもしれません。
ただ、瀬戸内などはかつては、日本でも有数の魚の名所でしたが現在はその範囲は年々限られてきていますね。一つは水温の上昇による魚の変化です。昔は多くいたアイナメなどの魚はすでにほぼ見当たらなくなってしまいました。また、潮とは別に工場などからの排水の関係でそこの魚を食べたいとは思わない場所が多いのも確かです。岡山やその向かいの坂出それに、広島の沿岸部などでそのまま魚をとって食べたいと思えるところは比較的に少ないと言えます。今、瀬戸内で魚をとろうとすればある程度島に渡る必要があるかもしれません。
九州、四国、本州の間が織りなす奇跡的な空間は魚の名所ですが、(まぁ、いわゆる関サバ、関アジのとれるところですね。)あそこは漁業組合の関係がうるさいですし、素人が入れるものではありませんですし。
ちなみに、上に上げた関サバなどについては、すでのブランドとしてきちんと組合が掲げているもので、近場でとれた偽物を関サバなどといって売る輩がいるのでお気をつけ下さい。
もっとも、日本海側だからまずいといっているわけでもありません。要はその潮がどうなっているかを見極めないとそこの魚がうまいかというのは分からないという事です。北海道などは、実に新鮮なものが多くて美味しい魚が多い様に思えますが、北海道で美味しいのは、ウニやカニなどで実は魚で美味しいものというのはあまりぱっと出てこないものです。青魚などが好きな人にとっては、北海道での生活などは少し恋しいものになるかもしれませんね。
そういうことを色々考えていると、最近青森はなかなか面白いところに感じています。八戸にいけば、三陸海岸を味わえますし、北に行けば、函館との境でマグロなども楽しめますし、日本海側の幸も楽しむ事ができます。山に入れば、山菜キノコも豊富でしょうから、そういうものを食す人にとってはいいところであるように思えます。(いってないので何とも言えませんが)
ちなみに、大間のマグロといえば、有名ですが、その向かい、戸井のマグロもまた美味しいらしいです。大間ほどの値段はしないで食べれるという事で人気もあるそうですが、実は、大間と戸井でマグロの質は少し違うそうで、それはえさの違いだとか。漁業権の違いほどの距離でもえさがちがい、それで身が変わるのですから、日本海側とか太平洋側などというように大雑把なくくりで美味しいまずいは量る事はできそうにないですね。