食べ残しのフィッシュアンドチップスに群がるカモメ。
忘れないうちに書いておこうと思う。
30年も昔に死んだばーちゃんのお葬式の夢だった。
私と子供達が布団を敷いて寝ようとしているのだから、お通夜だ。
ばーちゃんのお棺は布団と同じ並びにある。
お棺の蓋は開いていて、白装束のばーちゃんが見える。
そのばーちゃんの頭が動いた。
私の方を見て目がうっすらと開く。
そして又閉じた。
ほんの一瞬だけばーちゃんが生き返ったと思った。
それどころかしばらくすると今度は頭が持ち上がった。
ばーちゃんはお棺の中で上半身を起こす。
周りに居た人々は散りじりになって逃げてしまった。
「どうした、ばーちゃん?」。
「オムツ替えてくれんかな?」。
ばーちゃんが自分の着けていたオムツを差し出した。
「ええよ、ちょっと待ってな」。
私が替えのオムツを探すうちに、
ばーちゃんは棺桶の縁を掴んで起き上がり
フラフラと家の外へ出て行ってしまった。
私も続いて外に出る。
ばーちゃんの体は庭先に横たわり、浮いていた。
「ああ、ええ気持ちじゃ」。
外は何故か昼間で、太陽が暖かく、光が溢れていた。
細い細い雨も降って、光の中で輝いていた。
「そうやな、ばーちゃん、こんな日にお花見に行ったな」。
それは過去にあった事実ではなくて、只の私の願望だった。
ばーちゃんは応えなかった。
「ばーちゃん、お布団引こうか?」。
しばらくして私が問いかけると今度は応えがあった。
「いや、私は棺桶に戻るよ」。
ばーちゃんの真っ青な顔にはほんのり血の気がさしていた。
それからばーちゃんはゆっくりと棺桶の縁を跨いだ。
そこで夢は終わった。
夢はどこか現実とリンクしていながらちぐはぐで捉えどころがなく、
奇妙で不思議な物と相場が決まっている。
生まれてこの方何千何万とそんな夢を見て来た。
それがここのところずっと私の夢は余りにもリアルだった。
冷蔵庫の卵が切れかけているとそれを買う夢を見る。
排水口の汚れが気になるとそれを掃除した夢を見る。
うたた寝の間には毎日の常備薬を飲む夢を見る。
これが困る。卵は買っていない。
排水口も汚れたままだし、薬はまだ飲んでいない。
自分の夢に惑わされるのだ。
久しぶりに夢らしい夢を見た。
そして少し泣いた。
