耳の痛い話 | けこですのブログ

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又買ったらしい。餌袋を膨らませたアキラ先輩。
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みなさんはヘリコプターに乗った事がおありだろうか?
ヘリコプターなんて遭難救助でもされない限り乗る機会はないと思っていた。
観光で乗る飛行もあるのだが、上空から見る景色にそれなりの価値がなければ
乗る意味はないし、第一料金がお高い、に違いないと思っていた。

私が経験したのはもう20年も前。この国に移住して間もない頃。
キャンパーバンでニュージーランド南島を巡る道すがらの事だ。
クライストチャーチからダニーデンに向かう途中、ティマルと言う場所がある。
マウントクックの麓のこの場所で宿泊のためキャンパーバンを止めた。

キャンパーバンは移動する家のようなものだが、どこにで止められる訳ではない。
バンの受け入れ可能なキャンプサイトに場所を借りる。
このサイトにあったのがマウントクック観光のヘリコプターの大きな看板。
サイトの事務所で受け付ける、と書いてあったので行って見た。

ちょっと詳細を聞いてみようと思っただけである。決断も決心もない。
料金は300数十ドルだったと思う。頑張って支払えない額ではなかった。
次の日は天候も良いし、午前中の飛行が予約できると言う。
よし、経験だ!私は経験、という言葉に滅法弱いのだ。

次の日の朝、バンを走らせて所定の場所へ行くと、ヘリコプターが待っていた。
何しろ寂しい場所で、他の客もいなければ待合所らしい物も無い。
舗装も無いだだっ広い地べたにヘリが一台と操縦士らしいお兄さんがいるだけ。
とにかく乗り込む。その頃は一家四人、子供は12歳と7歳。

ヘリコプターと言うのは恐ろしい。何せ足元がガラス張りで素通しなのだ。
高い場所が苦手な私は後悔したがもう遅い。ローターの回る爆音がし始めた。
足元がふんわり浮くような心地がしたかと思ったら、
まるで速度の速いゴンドラのように、一直線にマウントクックの山頂目指して舞い上がる。

飛び始めてみると意外なもので、思っていた程の恐怖は感じない。
緑の峰々を足元に見て、次第に雪景色に変わる高所へ向かうのだが、美しい。
ヘリは一面の雪景色の中に舞い降りた。足跡一つ無いパウダースノー。
冬場はスキーヤーを運ぶのにこのヘリは大忙しなのである。なるほど。

15分ばかり新雪の上ではしゃいだ後、又ヘリに乗り込む。来て良かった。
ところが、である。操縦士が早く帰りたいのか、そういうものなのか、
ヘリコプターの降下がやたらと早い。行き道の倍の速度で地上に向かう。
その間の数十分私はずっと叫び続けた。「耳が痛い!痛い、痛いいいい!」

いや、この時の耳の痛さは後にも先にも無い。
頭の両側からぐりぐりとドライバーを突っ込まれているのではないかと思う位。
両方の鼓膜は破れたに違いない、地上に降りたら救急車を呼ぼうとさえ思った。
三千メートル近い高度からこの速度で降下したのでは耳は助からないに決まっている。

これ以来私の耳は加圧に極端に弱くなった。
忘れもしない、四年前の日本への帰国。台風直撃で飛行機は七転八倒。
着陸のタイミングを図って旋回する飛行機の乗客達は阿鼻叫喚の騒ぎ。
機体はミシミシ、ガタガタと音を立て、急降下、急上昇、スクロールを繰り返す。
震えながらしがみついて来る娘を無視して叫ぶ。「耳が痛い!」。
墜落の恐怖も何もあったものではない。私は「今」死んだ方がマシな程耳が痛いのだ。

さて、今は、いいものが出来た。ワインの栓抜きのような形状の耳栓。
これが事の外お高く2000円近くする。効果が疑われるので安物はお勧めしない。
普通の耳栓では無いのも同じだが、これさえあれば加圧もへっちゃら。
耐えてきた日々が嘘のようだ。

この耳栓は頂き物の印伝の小さながま口に収まっている。
パスポートに添えて同じ引き出しの中。
遠い距離も耳の痛さも人類の英知が克服するのだ。
なんと、なんと、明日は明るい!


余談ですが...旅客機には胴体に一対、翼に一対の脚が付いている。
その内胴体部分の脚はタッチダウンした衝撃で足についたレバーが働き、地上の気圧と機内の気圧を同じにできるような仕組みになっていると聞いた。
つまり、プシューッと来る訳だ。これ、もう少し序々には出来ませんかね?