「ぼたんが咲いたんでもってきたんよ」
毎月母の庭を手入れにきてくださるT原さんが朝9時にベルを鳴らす。
上の赤いのはチューリップ。
白い小さいのはサクラソウ、紫色はなんだっけ?
もう三十年も来てくださっているT原さんはおいくつ?
「私より十歳ほどお若いはずよ」と母は言うのだが
もう少しは上に見える。
今日、はじめてストレートにお訊ねすると
「昭和11年生まれです」とストレートにこたえてくださった。
昭和8年生まれの母と三歳しかちがわない。
今年87歳になるT原さんが、
今年90歳になる母の庭を、今月も二時間半かけて入念に手入れしてくださっている。
1990年代に、五十代後半からシルバー人材センターに登録して
今でいう「ヘルパーさん」として派遣され
料理も掃除もなんでもこなしてこられた。
「わあたしは、がっこ(学校)行ってないんです」
母の世代は女性に学問は要らないと言われていたのだ。
ずっと身体を使う仕事をしてきたことで
今もこれだけお元気なのだとしたら、その方が幸せにみえる。
「ヨガを週に二回、山歩きの会にも二つ入ってますぅ。
どっちも私がいちばん上になってしまいましたけど(笑)」
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「ちょっとこんなんもってきましてん」
↑柵の外側から根っこが侵入しているのでそれを断ち切るために掘る道具。
柵の外側はマンションがオーダーした草刈り業者が表面だけを刈り取るだけだから、根っこは残っている。
それを、自分が担当している母の庭に侵入させまいと奮闘してくださっている。
↑「このカキツバタも根っこの下に芋のある雑草がはいってきてるんです」
根元を分けて見せてくださった。
↑「ネジリ草です」
ちょうどきのうの朝ドラで、少年時代の牧野富太郎が「右回りと左回りがあるんやな」とみつめていた。
↑おや?一本だけちがう草が残されている↑
「名前はわからんのですけんど、去年きれいな花が咲いてたんでのこしてあるんです」
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T原さんはお昼前に帰られた。
午後三時↑ボタンが大きく開きはじめた↑