築二百年の古民家の扉をあけると「時の海」が広がっていた
ひとつひとつの光は数字のデジタルカウンター
浅い水の底に散らばり、それぞれの速度で1から9までの数字を点滅し続けている。
せわしなく変わるものもあれば、ほとんど光らないものもある。
まるで個々の人生の様。
1998年、作家が直島を訪れた時、「直島家プロジェクト」はまだ存在しなかった。
その発端となった第一号の作品なのだ。
古民家にはおばあさんが一人住んでいた。
施設に入ることになり後を託されたベネッセが、当時ヴェネチアビエンナーレで注目され始めていた宮島氏に作品を依頼した。さびれゆく島の村に作品をつくることに意味はあるのか? 最初は逡巡したそうだが、彼がこの作品を制作したことが後々直島を大きく変えていくことになったのだろう。最初の一歩、大事です。
デジタルカウンターの速度を決めたのは村の人。
1998年2月に五歳から九十五歳が集まって「タイムセッティング会」が行われたそうだ。※ベネッセサイトの詳しい解説をお読みください(^^)
二十年後の2018年、ふたたび人々が集まってカウンターをリセットした。
すでに亡くなった祖父母がセットしたカウンターを次の世代がリセットしたり、新たに島にやってきた人が参加したり。
様々な「継承」がそこで行われたそうだ。
この場所は通りの角にあるので「角屋」と名付けられている。
この角の部分は新しくつくったそうだが、もとの佇まいを上手に「継承」しているように見える。
建物も、中に満たされるべき人の想いも、カタチを変えて「継承」されていく。
現代アートは決して新奇なものではなく、時の文脈の中のあるべき場所に存在している。
この日、解説してくださったKさんのおかげでそう思えるようになりました。
ありがとうございます。
また、きっと機会をつくります。