鳥居をくぐってすぐ惹きつけられてしまった↓
雌雄ともににらみをきかせている
松江の「小泉八雲記念館」で購入した「神々の国の旅案内」の中で、
ハーンが美保関神社を訪れた時の記述がある。
「神社の石畳の広い参道はゆるやかな坂になって水際まで続く。そこの石段にも船がつないである。幅の広い入口を見上げると石の大鳥居が立ち、巨大な石灯籠が見える。対の唐獅子が高い台座の上に据えられ、四メートル以上もある高さから人々を見下ろしている。」
現在では海岸沿いに車用の道路がつくられてしまったので参道は海まで続いてはいない。
だが、海から船で直接参拝するのに適した方角を向いているのである。
ハーンが形容する「巨大な灯籠」とはこれだろうか?
狛犬も四メートル以上の上から見下ろしているわけではない。
だが、ハーンが見た狛犬は確かにこの二頭だったのは疑いない。
年月に劣化してはいるが見事な造形である↓
台座の部分はあとから取り換えられたのかしらん?
いや、この獅子は四メートルも上に置いてしまっては人々の視点から見えなくなってしまう。
現在の高さがオリジナルに近いのだろうと思う。
石がはがれている部分はあるが、どっしり筋肉を感じさせる力強い四肢と渦を巻く毛並の表現。そして冒頭の銅製?の目。
ハーンも印象深く見たに違いない。
奉納された年号を見ると「嘉永元年」となっていた。1848年はハーンが生まれる二年前。すると、ハーンが見た時にまだ四十年ほどしか経っていないから、まだ新しく生き生きしていたにちがいない。
●石は「来待石(きまちいし)」と呼ばれる柔らかいものだそうだ。
「来待石は、石質が軟らかく、切り出しや加工がしやすいのが特徴です。また、風化が速いため、切り出した直後は灰色がかった色調であったものが、短い期間で、黄褐色の古めいた風情ある外観になっていきます。苔も付きやすく、日本庭園をつくるのになくてはならない素材のひとつといえます。」
ハーンが見た時にはまだ灰色だっただろうか。
百五十年以上も経てば風化もするだろうだろう。
それでも、今なお見るべき狛犬であります。