お香は、嗅ぐのでも匂うのでもなく「聞く」ものなのか。

日本古来の遊び、「聞香(もんこう)」を体験した。

簡単に言えば、焼いて良い匂いがする木の香りを楽しむのが香。

↑上の写真で四角の中にちょこっと乗っている木片が香木。

それを炙ってたつ香りを楽しむ。

簡単なようだが、これにけっこう作法がある。香道(こうどう)という言葉もある。

 

冒頭の写真の姿になるまでにも、決まったプロセスがありそのための道具がある。ここに来なければ一生見ることはなかっただろうその道具がこれ↓

「歯医者さんみたい」ね、と誰かが言った(笑)

いちばん上が木片を雲母の板上に乗せるためだけの道具。真鍮に銀メッキ。

 

冒頭の磁器の器に灰を盛り、下に熱い炭を仕込ませる。灰を尖った円錐形にし、真ん中に炭までとどく「火の道」を開けて熱が昇ってくるようにする。そのうえに雲母の板が乗っていたのだ。灰や炭はそれ自体に匂いがしない特別なものをつかっている。

木片がじりじり熱されているのだが煙はない。香りも出ているのか出ていないのか判然としない。線香みたいにすぐにわかるような強い香りではまったくない。

 

講師の方が「出香(しゅっこう)」と声がかかり、香炉がメンバーのまわりをまわりはじめる↓このように鼻に近づけて何度か吸い込んで記憶する↓

今日の「聞香」。「三種香」は、ただ香りを楽しむだけでなく、

三種類の香をまわして、どれが同じで、どれが違うのかを当てる。

つまり、二番目にまわってきた香は、最初のと同じか?違うか?

三番目にまわってきたものは、前の二つのどちらかと同じか?違うか?

これを当てる。

 

まわってきた三種類が全部違う香りだと思ったら、縦に三本の線を書き「緑樹の林」と称する。

※どうして?とは訊ねないでください(^.^)

二番と三番が同じだと思ったら二本目と三本目の上部をつないで「隣家の梅」と称する。

※どうして?とは訊ねないでください(^.^)

小松は悩んだ結果これにした。組み合わせは五種類ありそれぞれにこうした「どうして?」と訊ねたくなる名前がつけられている↓

 

★三種類の香は六国と称する。

すなわち「伽羅」「羅国」「真南蛮(まなばん)」「真那賀」「寸門陀羅(すもんたら」「佐曽羅(さそら)」。

これらの名前はそれぞれ産地名に漢字があてられて変化したもの。たとえば「マラッカ」「スマトラ」。

 

六種類は同じ種類の木で、産地によってその香りが変わるのだそうだ。香木というのは基本的に一種類だったのか。

 

「三種香」では、これら「六国」のうち三種が任意に選ばれ、それぞれを三つの小片に切り分け、それぞれ紙に包んで小さな袋に入れる。そこから任意の三種を取り出して焚いている。

 

だから、今まわっている三種類は全部同じである可能性も、全部違っている可能性もあるのだ。

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今日は果たして、どの組み合わせが正解だったのか?

今日の正解は三種全部が違う「緑樹」

なんと十人中何四人が正解。かなりの高率であった。

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香道には武家と公家の流儀があり、今回は武家風。

公家風にはもっと華美な器がつかわれて、作法ももう少し複雑になるそうな。

 

京都に住んで中央の政治にかかわらなかったお公家様たちがこのような文化をつくっていったのだろう。

 

香を楽しむときには、ハンドクリームさえつけられない。香水なんてもってのほか。欧米人のグループに気軽にお勧めするには、もしかしたら適さないあそびなのかもしれない。