現在「聖人」と呼ばれている人が、その生きていた時代にも皆々から愛されていたと思った大間違いだ。

 

ミラノの守護聖人となって大聖堂の地下に眠っている16世紀の聖カルロ・ボロメオは、大聖堂で暗殺未遂に遭遇した。

 

法王の甥として二十歳そこそこで枢機卿に任命され、トレント公会議を成功させ、三十一歳で大司教としてミラノにやってきた。

すると、まるでルターのように免罪符の売買に反対し、修道院の豪奢を糾弾しはじめた。

 

既得権益を脅かされた側が、でしゃばってきたボロメオを亡き者にしようとしたのである。

 

その場面を描いた大きなタペストリーが大聖堂に飾られていた↓

↓このタペストリー、これまで何回かは見ていたはずだけれど、今回解説していただいてはじめて何が描かれているのかを理解した。

↑右で祈るボロメオを狙って、左から銃弾が発射されている。

 

この銃弾は枢機卿の赤い服には当たったが、ボロメオ自身は無傷だった。

それはひとつの「奇跡」として語られていくことになる。

 

「この時、銃弾で穴の開いた衣が、この後ご案内するアンブロージョ教会にあるんです」とガイドさん。

これは是非見ておきたい。

↓教会の宝物館の展示物を探し回った末、係員にたずねて発見!

覗き込むと、赤い蝋で封印された枢機卿の緋の衣が見えた。

これは多分、ほんとうにその時のものだろう。

 

大聖堂にはこの暗殺未遂事件以来、大司教が司教館から地下道を通って入ってくる特別な入口が付け加えられた↓現在もそれは不思議な形で見ることが出来る↓