久しぶり(2年半ぶり?)に、にっぽん丸に乗船し、ライヴをやらせていただきました。たくさんのお客様からご好評をいただき、嬉しい限りです。


19歳の頃から何度となくにっぽん丸とふじ丸の船内で演奏させていただき、アジア諸国、ラテンアメリカ諸国、ウラジオストクやジュノー、サンフランシスコまで、いろいろな国や街に連れて行っていただきました。にっぽん丸は35周年になるんですね…あの頃19だった僕がもう52なんですから、当然ですよね。

今回は横浜港から二泊三日の短いクルーズでした。

初日は仕事はなかったので、ひとりのお客さんとして、内田貴光さんのイリュージョンマジックショーを愉しみました。

とくに、数字をテーマにしたマジックがあまりにも、あまりにも凄すぎて空いた口が塞がりませんでした。そして同時に、ある別のマジシャンのことを思いだしていました。

その名は菅原英基。僕より5歳ぐらい年上だったと記憶しています。僕が19〜20代前半の頃、にっぽん丸でよく一緒になったテーブルマジシャンでした。小さな室内で、ほんの数名のお客さんを相手に凄いマジックを見せてくれる人でした。

ある日の夜中、いつものように、みんなで夜食部屋で呑んでいたとき(スタッフも出演者もみんな若かったのです)、すっかり酔っ払ったあるスタッフが言いました。「ねぇマジシャン!(菅原さんのこと)、なにかマジックやって見せてよ!」

プロのマジシャンに、酔った勢いでこんなだいそれたことを頼めるぐらい、みんな若くて気心の知れた間柄だったのです。

すると菅原さんが、「じゃあ誰か、自分が持ってるもので一番大切なものを僕に預けてください」と言いました。

そこで、ある女性スタッフが指につけていた指輪を菅原さんに差し出しました。すると菅原さんはすぐそこにあったティッシュで指輪を包み、ライターで火をつけて、ボワッ!と、一瞬で燃やしてしまったのです。

菅原さんは両手を広げましたが、指輪は跡形もなく消えていて、しかもティッシュの燃えカスすら残っていません。

みんな、「えー??」と眼を丸くしていました。が、驚かされたのはこのあとです。

その指輪が…とんでもないところから出てきたのですよ…!!ほんとに信じられないところから…

いったい何故あんなことが起きるのか…あのときの驚きと衝撃は未だに忘れられません。思い出す度にちょっと鳥肌が立つぐらい…

内田貴光さんのショーを観ながら、約30年前のそんな出来事をずっと思いだしていました。

翌日の自分のライヴも無事に終わり、翌々日に横浜港からいよいよ下船というときでした。久しぶりに再会したスタッフの皆さんと喋っているとき、内田貴光さんのショーの話になり、「僕、久しぶりに菅原さんのことを思いだしていたよ〜」と言うと、「菅原さんは亡くなったんだよ」と…。

今年の前半に菅原英基さんは亡くなられていたそうです…。

急に彼のことを鮮明に思いだしたのは単なる偶然だったんでしょうか?

僕に生涯忘れられないインパクトを残してくれた偉大なるマジシャン、菅原英基さん。心よりご冥福をお祈りしますm(_ _)m