私は参照価格制度に反対します。
厚生省は医療費削減のために薬の値段に参照価格という制度を取り入れようとしていました。これは日本の医療費のうち、薬代の占める割合が25%と多いのは薬価差益があるために医者が自分の利益を得ようとして薬をたくさん出すからだと考えて、薬価差益をなくす方法としてドイツにならって参照価格制を行おうとしていました。
ここで薬価差益について少し説明します。
日本では昔から医者から薬をもらうことが当然のことと思われています。保険で支払われる薬の値段は国によって決められています。医療機関は薬屋さんから保険で支払われる値段より安く薬を仕入れればその差額が利益になります。これは日本の医療機関の経営が技術よりも薬価差益によって成り立つような仕組みになっているためです。
実際、国の経営する大学病院や国立病院でさえ、安く薬を仕入れて薬価差益をいかに多くするかを考えています。最近は薬価が毎年下げられるため薬価差益は、薬の保管にかかる経費や使用期限が切れて廃棄される薬を考えるとほとんどなくなっているようです。
今度は、参照価格について説明します。
例えば、Aという薬と、Bという薬の効能がほとんど同じとします。しかし値段はAは一錠150円、Bは50円と違いがあります。参照価格ではAとBは効能が同じだから、どっちも100円と決められます。もしAを使ったときはAは一錠150円ですが、保険で支払われる
のは100円ですので差額の50円は患者さん負担となります。
収入の少ない人は安い薬しか使えないことになります。
日本の国民皆保険制度はすべての国民が区別なく、平等な医療を受けられることができる世界に誇れる制度です。もし参照価格制度が薬に取り入れられれば、次には手術料、検査材料にと次々に同じような制度が始まり、経済状態によって差のある医療を受けるようになるのではないかと思います。
先日、日本で初めて脳死による心臓移植手術が行われました。移植を必要としている人は、重症度によって順位が決められています。アメリカでも優先順位があるのですが、実際は原則が簡単に破られて、医療機関に多額の寄付をした人が優先されることがあるようです。
収入の多少によって、受けることができる医療に差があってはいけません。
厚生省は参照価格は薬価差益をなくし、医療費を削減するために必要だと言っていますが、不透明な薬価の決定や日本でしか通用しない薬の承認などの問題を解決することが先決でしょう。
平成11年4月14日の新聞報道によると、厚生省は今回は一旦白紙に戻すことにしたようです。
これも先日の反対署名運動で、全国およそ600万人の皆様のご協力を得られたためと心から感謝いたしております。
「参照価格制度について」