いい子のあくび 高瀬隼子

2023年7月10日 第1刷発行

作品紹介・あらすじ

第74回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞

芥川賞受賞第一作。
公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。

郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。


スマフォを見ながら自転車に乗っている中学生にわざと除けないで”ぶつかったる”佐元直子。

普段の私は、痛い思いをしたくないから歩道でも後ろからきた自転車にまで気を付けて歩いている。でも、避けたくない気持ち、怒りの気持ちはよく分かる。

 

東京では、駅に近づけば近づくほど人が人に憎しみを持ち、怪我をさせても不快にさせてもいい、むしろそうしたい、と思うようになる不思議がある。…と書いてあった。確かにそういう一面もあるかも。駅で弱い女性にわざとぶつかる事件もよくあるようだ。

人の悪意を描くのが本当に上手な作家さん。

 

2話目の”お供え”は会社内での人間関係問題。

仕事を辞めればそういう関係もクリアされる。

気が合わない人がいても死んでしまえと祈るほどではなかったのは幸運だったのか。もう名前も忘れてしまった…

 

3話目の”末永いお幸せ”は、結婚観のお話。

歳をとって葬式ばかリ増えてくると結婚式は幸せの象徴なので嬉しい行事だ。人身売買とか見せびらかしとか自己満足とか、細かいことは感じなくなるのはやはり歳を重ねて鈍感力が鍛えられた証拠かしら。