製作ノート -2ページ目

雑感20

私は長らくフィルムカメラだけを使ってきた。フィルムで撮影した写真を見返すのは面白い。フィルムで撮影した写真は、成功でも失敗でも、最低1枚◯円というコストがかかるから。

好きなカメラで、なかなか手放せないカメラがある。コニカのマニュアル一眼レフで、これに装着可能なヘキサノンレンズが素晴らしい。

私は、このカメラで撮った昔の女を見るたびに、いま目の前にいるようだと感じる。
解像度や画質ではなく、空気としかいえない、曖昧な感覚が写る。

私は、ようやくこの歳になって、フィルム派を脱し、いまデジタルカメラを検討しているが、ヘキサノンレンズをコンバータかなにかで装着したい。

このレンズによる、ポートレートは素晴らしいを超えて、あー、あのとき、あの人を撮ればよかった、彼が遠隔地に行く前に撮ればよかった、彼女の泣いた美しい顔を撮ればよかった、そんなことを考える。

雑感19

おばあちゃんには、もっと電話をしてあげるべきだった。

何度か、電話があったり、慣れない携帯電話の操作のせいか、つたないメールがあったり、寂しかったのだろうと思う。

私はいつも、飲んでるか?お酒を飲めているなら大丈夫や、などと軽口を叩いていたが、それだけではなくて、もっと話をしたかったのだろうと思う。

いま、自分が一人になって、もちろん付き合う女性がいることもあるけれど、お酒を飲んで、毎晩飲んで、飲んで、ああ寂しいなと思うのは多分みんな変わらない。

角瓶を見る度に、いつも思い出す。

雑感18

あるとき、弟から電話があって、精神的に不調だという。

もともと、タフなタイプではなかったし、必要以上に顔色を見る性格だが、温厚で優しい、誇りに思う弟だ。

私を真似たのか、夜、飲み歩くようになり、60分飲み放題の安いスナックに通い、種が違うから酒に強くないのに、無理をして飲んで、そのくせ食事には気を使わない。風体も少しも似なかったが、歳を重ね、外見とも内面とも言い難い、表情や仕草が似通ってきた。

私は彼に、俺もお前ぐらいの歳は(女と別れたこともあって)生き急ぐ部分と、無気力になる部分と、酒と酒と酒と酒。

私にとって長らく付き添った女を失った5年間は悪いものではなかったが、おそらく多くを失い、多くを得た。また危ういことも、一度や二度ではなかった。

私はいつも彼を心配している。