仁田、坂木の若年コンビの報告を受けた竹添は
(…何か隠密裏に調査されているのだろう…いつ、出動の命があっても良い様に隊を引き締めねば)
(しかし、仕事とはいえ女相手とは苦虫を噛み殺しておいでだろう)
と、熊襲と笑いながら相談したものだ。

さて、今宵も今宵とて、出掛けて来た冬獅郎だが、ベテラン二人の心配を余所に足取りは軽かった。
暖簾を潜ると、女-お千代の顔が輝いた。
いつもの様に上がり框に足を向けるが、お千代が頬を染め上を指差す。
冬獅郎は残念そうにため息して

「すまねぇな。今晩は、あましゆっくりできねぇ」

「何だいつれないねぇ」

「やっ、用心棒の口にありついてな。初日くれぇはまじめにせんとな。手当がいいんだ。あっ、そうだ。手当でたら芝居にでも行こうぜ」

「ほんとかい?約束だよ」

「あぁ」

冬獅郎は片目を瞑って見せた。
怪しまれない様に一度寝てからは誘いも明け透けだ。
それを上手くかわしている。
同じ女は二度とは抱かない、馴染みの女は作らない。昔から乱菊と約束している事だ。愛娘にさえ『身持ちが悪い』と思われている身では、儚い操立てだが、冬獅郎にしたら精一杯の気持ちの示し方ではあった。

「それでさぁ、その客が、あんまりうざったいんで『あたし共は学のない酌婦
実のところ、この女との会話が苦ではなかった。
冬獅郎は確かに乳が好きだ。
だが、単に大きければ良いなら井上織姫にも好意を抱いただろう。しかし、彼女は趣味の外だった。
冬獅郎は自分の人生を自身で背負った、ある意味達観した威勢の良い女が好きだった
実のところ、この女との会話が苦ではなかった。
冬獅郎は確かに乳が好きだ。
だが、単に大きければ良いなら井上織姫にも好意を抱いただろう。しかし、彼女は趣味の外だった。
冬獅郎は自分の人生を自身で背負った、ある意味達観した威勢の良い女が好きだった。
故に、目の前の女が嫌いではなかった。悪い女だとしても。
噂話は無責任に煙を立て、尾ひれを着けて広がるものだ。

「たいへんですたいへんです」

「お前は八五郎か?」

「お言葉ですが、竹添一席。自分、その様な名ではございません」

「知っとるわ」

「オヤジギャグすよ」

側に居た末席の坂木が囁くと

「なぁるほど、若者には解らんヤツな」
と、頷いてみせる。

「で、何がたいへんなんだ?」

「あっ!そうだった。隊長に馴染みの女が出来て、足しげく通ってるって噂で、副隊長のお耳な入ったらどうしようかと」

「それはないだろう」

「そうですよね。副隊長が、お気の毒ですよね!」

「あ~そういう意味じゃなくてな」

「んじゃ、どういう意味なんです?まさか、『浮気は男の甲斐性』とかおっしゃるんで?」

「そんな事思うかっ。俺が言いたいのは隊長が他の女に心変わりなぞするはずなかろうと言うことだ」

そう、上司夫妻には最近『また』子供が増えた。しかも、また双子だ。恐ろしい繁殖能力である。繁殖能力=隊首の執着なのだろうから、浮気などあるはずもない。現在は都合、15人の子持ちだ。

しかし、仕えて長いおじさん連とは違い若者二人は得心が行かない。で、張り込む事にした。
叢に潜んでいると、噂の頃合いに冬獅郎が姿を見せた。
泥染めらしい濃い目の緑の縞大島に素色(極淡い橙がかった灰色)の半襟と錦糸で細かい百合を刺繍した半襟より濃い目の角帯を浪人結びにした着流し姿だ。
(…おめかししてはる…)
二人は顔を見合せため息する。
死覇装姿でも十二分に佳い男なのだが、どこか、遊びなれた雰囲気を漂わせ粋な感じがする。

一刻ほどして冬獅郎は阿太っぽい女に見送られ店を出てきた。
女は冬獅郎の袷に手を差し入れると、押し広げる様にして唇を押し付けた。
それを許し受け入れているだけでもショックなのに、冬獅郎は女の顎を掬い上げて薄い唇を女のしれに圧し当て耳元で何事か、囁いて踵を返した。
女は、少女の様に頬を染め冬獅郎を見送ってから店に戻って行った。
乱菊の器量に及ぶべくもないが、胸だけは匹敵するほど大きい。

(隊長…乳派だっのか…)

二人は同時に思った。

「しかし、あの女必ずや後ろぐらい事をやっているにちがいない」
「それを暴いて、隊長の目をお覚まし申し上げねば」

「無論」

二人は頷きあって、それから毎日勤務後は、敬愛する副隊長のため女を張った。

その結果虚の巣を計らずも引き当てて手柄を立ててしまい、目を着けた理由を問われ笑って誤魔化すのは別の話である。

ともかく、生存しているだけで目立つ冬獅郎の夜歩きが、尾ひれに腹ひれ背びれに小判鮫まで着けて、瀞霊廷をのたくるのには、そう時間が掛からなかった。


連載じゃぁ、ありません。終わってないのが山ほどあるので。
ただ、大人な話を書ける環境作らないと書けないから、リハビリ代わりなのです。
だって、アメバすぐ消すんですもの。
つか、ビ●シブは危険だわ…底無し沼があちこちにある。
…銀●は上手く脱出したのだけれど、ヘタ●アに肩まで沈みそう。
まっ、新しくボーイズサイトを作る根性ないからやらないけど…。
趣味のブログで病気の話を延々するのもあれなので簡単に。
薬が増えたら眠くて眠くて。
痛いか眠いかの二択なので、自堕落してます。
日乱、飽きてないです。困ったことに。
当座は季節に追いつくことが目標です。
オスプレイより怪しげな飛行ですが、
お時間のある時にお付き合いください。