一昨日、慶應中等部へ進学することに決まったKくんが制服で教室に来てくださいました。

 

チャコールグレーのジャケットにネクタイ姿のKくんは、晴れ晴れとにこやかで、私まで幸せな気持ちになります。

 

ああ、これが本当のKくんのお顔なのだなぁ……。

 

毎年感じることですが、受験勉強真っ最中のころと入試を終えてからとでは、6年生の表情はまるで違います。

 

子どもながらにいろんなものと闘ってきたことに気づかされます。

 

Kくんもまた試練を乗り越えてきた12歳の「戦士」でした。

 

お母様が手記をお寄せくださいましたのでご紹介いたします。

 

 

なかなか思い通りにならずに悩んでいる方、きっと勇気がわいてくると思います。どうぞお読みください。

 

 

受験体験記   2019年 春 

 

西大和(合格)、北嶺(青雲寮コース合格)、愛光(合格)、

慶應普通部(不合格)、渋谷渋谷(不合格)、高輪(算数合格)、

聖光(不合格)、慶應中等部(合格、進学)

 

 息子の中学受験が終わりました。我が家にとって決して平坦な道のりではありませんでした。お恥ずかしい話もありますが、振り返ってみたいと思います。

 

 息子には、3歳年上の姉がいます。4年生からサピックスに入塾し、中学受験勉強を開始しました。母親の私自身は公立中学校・高校の出身で、東京の中学入試に関する知識が全く無く、不安に思っておりました。

 そんな折、書店で南雲先生の著書に出会い、心から感動しました。豊富なご経験に基づいた的確なアドバイスと率直なご意見が頼りとなり、なおかつ受験生への思いやりが感じられて、素晴らしい著書です。覚えるほど何度も読み返し、参考にさせていただきました。おかげさまで娘は浦和明の星、渋谷幕張、桜蔭、豊島岡、慶應中等部(二次辞退)、全てに合格することができました。

 

 さて、息子も同じく4年生からサピックスに入塾しました。算数は好きなのですが、国語が苦手でした。

娘の時の経験上、国語は家庭での学習が最も難しく、優れた先生にご指導いただかなければ効果が無い科目だと痛感していました。そこで、夏に思い切って南雲国語教室の体験授業を受けてみることにしました。

 南雲国語教室には、国語が得意になってさらに磨きをかけている優秀な生徒さんがいらっしゃいます。

実力不足の息子がついていけるのか、自信がありませんでした。意外にも息子が通いたいと申しましたので、お世話になることにしました。引き込まれるような先生の面白いお話に魅力を感じたようでした。

少し遠かったこともあり、お教室に通う分、サピックスの課題に取り組む時間は少なくなりましたが、南雲先生の授業の中で集中して解き、解説を聞く方が、確実に力がついたと思います。記述に対する抵抗感がなくなり、偏差値は少しずつ上がっていました。

 

ところが、4年生の後半から、5年生の前半にかけて、息子がサピックスに通うことを拒否するようになりました。理由は明確には分かりません。メンタルの弱さが遠因だと思います。怠けているだけかと思い、私も夫も厳しく叱責しました。塾の時間になるとプチ家出を繰り返し、冷たい雨の中を街中探し回ったこともありました。息子は情緒不安定になり、中学受験は諦めようと考えました。このまま勉強嫌いになって読書すらしないようなら、中学受験への挑戦は、取り返しのつかない大失敗だったかと後悔しました。

 

しかし、息子は南雲国語教室と小人数制の算数教室に通い続けました。学校の先生からも親からも叱られてばかりいたのですが、南雲先生は違いました。「字が雑で汚い」と他では怒られても、南雲先生は「よい字です」「ていねいに書けています」とコメントくださり、息子は南雲先生の漢字テストだけは精一杯丁寧に書いていたと思います。記述が書けた時は、褒めてくださいました。奇跡的にできた時は答案に「最高点です!」とコメントがあり、やる気が出たようでした。信頼し、尊敬する南雲先生のおっしゃることは、素直に聞き入れていました。「心をこわさない」ようにご配慮くださって、本当に頭が下がる思いでした。

 

数多くのお薦め図書もお借りしました。先生は息子の性格をよく見抜いていらしたようで、夢中になって読める本を貸してくださいました。「面白いから読んだ方がいいよ」と息子に言われて、私も一緒になって読みました。楽しんで読書できるようになったことも、大切な財産です。

 

その後、息子と相談しながら、他塾への入塾を検討しました。結局、家からは遠いサピックスの大規模校舎に移ることにしました。通塾時間の長さはネックでしたが、「乗り鉄」の彼は電車の中では気分良く勉強していました。また、親身になって息子に寄り添ってくれる家庭教師の力も借りました。

 

 6年生になってからも、南雲国語教室で週1回の講座を受講しました。帰り道はいつも上機嫌で、南雲先生の授業でのお話を教えてくれました。

 

6年生秋から冬の大事な時期に、胃腸炎や高熱でたびたび体調を崩しました。疲れが溜まっていたのだと思います。

やる気スイッチが見当たらない日もありました。塾の課題に過去問、模試の直しとやるべきことは山積みで、私の方が焦り、もどかしくて親子喧嘩になりました。

一方、図書館で長時間モーレツに勉強している日もありました。先生方の示してくださる優先順位を基に「やることリスト」を作成し、なるべく本人のやり方を否定しないで、「よく頑張っている」と評価することを心掛けました。

1月最終週まで、南雲国語教室とサピックスに通い続けました。

 

 1月校には全て合格しました。点数開示のある2校では、算数に次いで国語の成績が良く、嬉しく思いました。

事前に地方の寮がある学校を親子で見学していました。学校の先生方に熱意があり、サポート体制が見事でした。寮生活をしながら勉強とスポーツを両立するのも良いことだと考えました。本人も好印象を持ち、志望校の選択肢が増えました。

 

2月1日の慶應普通部は不合格となりました。SS慶應普通部での成績からすれば、受かってもおかしくはないと考えていただけに、ショックは大きかったです。普通部の理科には特有の生物分野問題が出題されます。図鑑を読む等して懸命に対策しましたが、最後まで苦しめられました。他の難関校も残念な結果でした。

 慶應中等部の一次試験には合格したものの、二次試験の合格は厳しいと考えていました。二次試験は2月5日午後の招集で、午前中ぎりぎりまで親子3人で面接の特訓をしました。息子は緊張のあまり涙が止まらなくなりました。二次試験は、まず体育実技があります。できなくても一生懸命に取り組む姿勢と、指示に従って動くことが肝要と心得ていました。ところが息子は、さんざんしくじり凹んだ状態で面接控室にやってきました。親子面接では、息子は「分かりません」と答えてはいけないと思ったのか、しばし沈黙の時間が流れてしまいました。縁故もなく、寄付金も見込めそうにない我が家。二次試験での加点要素は何1つ無かったと思いますが、それでも合格しました。一次試験ができたのではないかと推測します。

 

息子は今、中学校での行事や部活を楽しみにしています。最後まで彼なりに必死に努力し、合格を掴めて良かったと思います。親としては反省点ばかりです。これまで幾度となく、もう無理だと投げ出したくなりましたし、回り道をしました。お力添えをいただいた全ての皆様に深く感謝しています。

南雲先生には、本当にお世話になりました。温かいご指導のおかげで受験勉強を継続することができました。国語は勿論のこと、他にも大切なことを学ばせていただきました。心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。