本日の朝日新聞の読書欄に、あの話題作『下克上受験』(桜井信一著 産経新聞出版)の書評が載っていました。


この中で、ちょっと気になる部分がありました。



「本書が出て、著者は実在の人物か、本人が書いているのかと話題になった。内実まではわかりません。」というくだりです。




確かに、読者としては桜井氏が実在するのか、実話なのかを確認する方法はありませんから、怪しまれても仕方のないことかもしれません。


でも、桜井信一さん(ペンネームですが)は確かに存在しますし、書かれていることも実話です。


桜井さんご自身が、後書きで、出版社の方にすべての証拠資料を提出している旨、書かれていますが、私も、この出版関係者の方から直接、桜井さんに関するいろいろなお話を伺っております。


実際に、桜井さんから、お嬢さんの指導に使用した教材を譲り受けたという方も知っています。



お嬢さんの進学先は、その学校の生徒さんたちへの配慮もあって最高機密となっており、私も一切聞いておりませんが、きっと○○中学だろうな、と想像しています。(全くの見当外れかもしれませんが……笑)



さて、関係者の方のご厚意で、書店に並ぶ少し前に初版本を頂戴しました。



読んでみて、とにかく、桜井さんの頭の良さに舌を巻きました。


ものごとの本質を見抜く、卓越した眼力をお持ちの方です。


情報収集力、目的を達成するために必要なことを抽出し、その方法を考える力、そして何より、人の気持ちをおもんぱかる力がすばらしいのです。


たとえば、塾に電話で相談するときは、授業前の夕方を避ける方がよいということなどは、我が子のことに夢中になってしまうと気づけないものです。


でも、桜井さんは、通塾経験がないにもかかわらずそうした事情を察したうえで、電話をされています。



何より共感できたのは、桜井さんがあらかじめ予習をしたうえでお嬢さんに教えるときに.以下のような反省を繰り返すところです。



「自分が先に理解すると急に娘が馬鹿に見えてしまう。優位に立ったとたん見下すという最悪の展開だ。」


これは、私を含め、子どもたちに教える立場の大人全員が自戒をしなければならないことです。



生徒たちを馬鹿よばわりして、いばりくさっている講師、教師たちはたくさんいます。(私の知る限り、能力の低い人ほど、こういう態度を取ります。)



品格と教養を備えた一流講師ほど、生徒に敬意をもって接するものですが、桜井さんは、そのレベルにあるわけです。



ただ、桜井さんがいら立ちを収めるために講じた手立ては、とてもとても真似できるものではありません!(何をされたのか、ぜひ、読んでみてください。びっくりします)



ときに抱腹絶倒し、ときにはもらい泣きをしながら読み終え、桜井さんのお嬢さんの学力が劇的に伸びたのはどうしてだろうと考えてみました。



やはり、お嬢さん自身に、理解力と集中力がなければできないことです。そのうえで、以下のことも大切な要因だったように思います。


・家庭学習の習慣がすでについていたこと
・とてもとても素直な性格であったこと




さて、このような本を読むと、桜井さんのいうところの「エリート」である保護者の方は、少し複雑な思いをされるのではないでしょうか。



「下克上」をする方は爽快ですが、される方は……。



我が家だって負けていられないとばかりに、
「偏差値41だった子が70になったんだから、あなたもがんばりなさい」と発破をかけたくなります。



私も、ついつい次女に、言ってしまいました。

「この本を読んでみれば? やる気が出るかもよ!」


そうしたら、言い返されました。

「かあちゃん。人の成功話なんて、参考にならないんだよ」


ごもっとも。


この本は、真似をするためのお手本ではない、ということだけは、お互い、肝に銘じておきたいものです。