2021年。41日。


この物語を毎年この日に書くようになって、今年で4年目になる。不思議なもので、毎年桜のこの時期になるとスマホ片手に文章を書き始めている。


この1年のニュースといえば、弟のところにかわいいこどもが元気に生まれたこと。そして、母が元気に70歳になったことだ。


母は今、新米おばあちゃんとしての経験をたくさんしている。数十年ぶりに抱っこをしたり、持ち前の陽気なキャラクターであやしたり、おもちゃや服を買ってあげたり、キャッキャキャッキャと、とにかく孫への至れり尽くせりの大サービスっぷりが止まらない。


そんなこんなで、うちの子も弟んとこの子も、もれなくおばあちゃんが大好きだ。実家に帰っておばあちゃんを見たときのテンションの上がりっぷりは、こちらが嫉妬するほどだ最近じゃ、好きすぎて久しぶりに会うとはにかむくらいだ。もはや戦隊モノのキャラクター以上の人気ぶりの母。


そんな母は、孫をいつも決まって満面の笑みで抱っこする。


「お父さんが生きてたら、きっとこんなふうにしてあげたかったんだと思うんだ。だから、私がその分までたくさんしてあげなきゃね」


母は孫に変顔をしてあやしながら、そんなことをたまに言う。そして、その言葉を聞いて、オレも同じことを思ったりする。



父は昔からとんでもない暴れん坊だったけど、その何倍も愛情たっぷりのひとでもあった。特にオレたち兄弟に対しては、他の家の何倍も厳しかったと思うけど、その何倍もやさしかった。飴と鞭を通り越して、ハチミツとタバスコを使い分けるような人だった。そんな父だ、相手が孫となれば、母の言うようにそれはそれはひたすらタバスコなしで溺愛したにちがいない。

だからその分、今母がこうしてたっぷりのハチミツをくれているんだと思うと、2人には本当に感謝しかない。



昔から、孝行をしたいときに親はなしと言うけれど、ホントその通りだ。父がいなくなり、オレにもこどもができて、あらためてそう思うようになった。そして同時に、


なにかできることはないかなぁ。

今からなんかできないかなあ。


父がいなくなってから、ずっとそんなことを考えるようになっていた。


父にできなかった孝行は母にする。


最初に思いついたのは、もちろんこれだ。でも、これだけじゃやっぱりなにかが足りない。ずっとそう思っていた。そして一年前の今日、オレはあることを思いついた。




スタンハンセンがチャンピオンベルトのように掲げているこのクォーターダラーリング。このリングを、毎年41日につけようと。この日だけは、結婚指輪ではなく、父が20代の頃に横須賀で作ったというこのカタミのリングをつけて家族と過ごそうと。そして毎年、父への想いを込めて、我が子をぎゅっと抱っこしようと。


父を感じながら、父ができなかったことを、オレが代わりにする。母と一緒に。それが、オレが去年からひそかにはじめた父へのささやかな孝行。



父よ。


アナタの孫は、今年はじめての桜を見たよ。

来年は、家族みんなではじめての花見をしよう。


いつもありがと。


んじゃ、また桜の季節に。






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