草にすわる(白石一文) 2006年6月20日
光文社
「わたしのまちがいだった。わたしの まちがいだった。
こうして 草にすわれば それがわかる。」
洪治は3年間と4ヶ月勤めた不動産会社を辞めた後、
バイトをしながら食いつないでいたが、急性胆嚢炎を患い、
いまは実家で無為な日々を過ごしている。
彼女はいるが、その関係にも倦み始めている。
閉塞した日常を壊すものは何もない。
ある日、彼女から昔の不幸な出来事を聞かされた洪治は、
彼女が貯め込んでいた睡眠薬を飲んでしまう・・・。
絶望。その果てに彼が見たのは…(表題作)。
年老いて仕事への情熱を失った高名な文学者が、
予期せぬ形で孫と出会うことで生命のありがたみに気づく「砂の城」。
「覚醒の物語」二編と初期に別名義で発表した一編を収録。
以上HPより
☆ 草にすわる
生きる意味を見失っても ふたりでなら生きられる。
共に生きる人がいれば 生きて行ける。
人は人に必要とされ 生きていてほしいと求められて
生きられる。
そんなことを考えました。
☆ 砂の城
名声を手に入れても 家庭がうまくいかなければ
むなしい。
しあわせは なんでもない平穏。
改めて そんなことを感じました。
この小説は、新幹線の中で読んだのですが、
書かれていることが深いので、
ひとりきりの雑音のない部屋で
集中して読んだほうが良かったように思います。
☆ 花束
新聞社と銀行という、興味深い世界が舞台。
わたしの父が新聞社の元会社員で
わたしが元銀行員だから。
でもあんまり理解できなかった。
難しい世界だわ。
ただ、自分の信念を持ち続け、
上司にもこびず流されず
仕事をする男が痛快で、
胸のすくおもいがした。
わたしが男だったら、
きっと腰巾着になってやがて捨てられるタイプ
なような気がするので、
こういう男性をとてもかっこよく思う。