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角川書店単行本
平成17年1月25日
角川書店文庫
次期首相の本命と目される大物代議士を父にもつ柴田龍彦。
彼は、四年前に起こした不祥事の結果、精神に失調をきたし、
父の秘書を務めながらも、日々の生活費にさえ事欠く不遇な状況にあった。
父の総裁選出馬を契機に、政界の深部に呑み込まれていく彼は、
徐々に自分を取り戻し始めるが、
再生の過程で人生最大の選択を迫られる…。
一度きりの人生で彼が本当に求めていたものとは果して何だったのか。
『一瞬の光』『不自由な心』に続く、気鋭の傑作長編。
以上HPより
今、世間でも政治の世界の報道が多い。
わたしには、よくわからないことばかり。
政治家の発言を聞いても、それは表の発言であって、
裏がどうなっているのか・・・何を信じていいのかわからない。
熱く語られても、心に響いてくることがない。
この小説の舞台が、そんな大物政治家の世界だからか?
なんだか、難しくて複雑で人物関係図もよく理解できなかった。
ただ、主人公の龍彦の視点に立って、読み進めて、
「四年前に起こした不祥事」
により、受けてしまった心のダメージの感じは、
とってもわかりやすいのだけど、
なんでこうなったのか?という真相は描かれず
その説明はいつしてくれるのか・・・とじらされ
結局、ラストで真相がわかってきたときには、引っ張られすぎた感があって
「なぁ~んだ・・そんなこと・・・」
って感じてしまった。
これは、前に横山秀夫の「半落ち」でも感じたことがある。
エピソードそのものは、重く、深いのに、引っ張られすぎて
何?何があったの???
の連続のあとで明かされると、なんだか拍子抜けしちゃうんだよね。
ダメージの感覚はわたしにも経験があるので、描写がうまいなぁ・・
さすが白石一文さんだわって、
わくわくしながら読んでいたのに残念な感じ。
政治と心とのつながりがわかりにくいのは、
わたしが政治の世界に疎いからかもしれないけど、
せっかくの恋とかラストの自分を取り戻して行く感じとかは
あ~これが白石さんワールド・・・って、感動しかけたとたんに
ぷつんと物語が終わってしまった感じで
政治の世界の迫力ある描写と、やさしい最後とが、
あれ?いつどうつながったの??
なんだか唐突・・・。
みたいな、なんだか消化不良を起こしているような読後感です。
四年前の不祥事の被害者の息子が、物語のラストで出てくるのですが、
その息子の奥様と、主人公の対面の短いシーンがあります。
そこが、わたしの一番好きなシーンです。
奥様の持っている価値観・・・そのささやかな価値観が
主人公を圧倒するところ。
そういうのが読みたくて、白石一文さんを読みたいのです。