自己理解の新しい境地

 

私は、心理療法研究所に所属し、さまざまな心理療法を研究していますが…

心理療法には、
クライエント自身を支えて安定させ、回復を待つ支持的療法と、問題解決を主眼とした指示的な療法の2つのタイプがあるんですね。

日本では、うつ病の認知行動療法が保険適用になっていて、効果の高さが実証されていますが、この方法にエビデンスがあるからといって、この方法を使えば誰もが効果的な治療を行える、というわけではないと思うんですね。

ん~、天下の名刀を手に入れても剣の達人になれるかどうかは別問題ということですね💦

心裡療法を行う心理療法士は、きちんと訓練を受けて、その質を保証していかなければならない!

とても大切なことです。


認知行動療法は、支持的な療法と指示的な療法の中間に位置しながら、クライエントさんが自発的に問題解決策を選べるように促す介入法です。

うつ病や不安障害などに対する実証的な効果は世界で数多く報告されていて、私もかなり勉強と訓練をしてきましたし、勉強と訓練は続けます。


認知行動療法を学び研究し、
弁証法的行動療法を学び研究し、

その他、
さまざまな心理療法を取り入れ、クライエントさんと関わってきた私ですが… 


その中でもフォーカシングは、
自己理解のまったく新しい領地を開くものだということに気づいたんですね。


そして、
弁証法的行動療法、認知行動療法、マインドフルネス、そしてフォーカシング…
すべてのエッセンスを取り入れ一冊の本にしました。

それが
Clover出版から商業出版していただいた〝あなたを助ける 慈愛フル・ビブリオセラピーイヤな感情を100%コントロールする 新・心理セラピーの全貌〟なんですね。


これは、大人向けとして執筆したものですが、2冊目は、子どもから大人まで読んでいただけるものとして絵本を執筆しました。

 

 

 

こぼれ落ちている意味の感覚

 

人の体験を素朴に観察すると、体験は言葉や概念によって構成されていないことがわかります。

たとえば、
「その状況をどのように感じていますか?」と問いかけたとき、「重苦しいです」と答えたとしても、「重苦しい」という一言あるいは一つの概念でその状況について感じている(体験している)ことを言い尽くすことができるのか?


おそらく、「それだけではない」ということになると思うんですね。

言葉や概念を追加していったとしても、なかなか言い尽くすことはできないことに気づくと思うんです。

そこで、「重苦しい」に立ち返って観察すると、その表現から〝こぼれ落ちている〟意味の感覚があることに気づきます。

まだ言葉になっていない、〝こぼれ落ちた〟側面を暗在的(潜在的)側面とし、明示的に言葉になっている側面を明在的(顕在的)側面として区別してみる。

すると、この状況の体験には「重苦しい」という明示的な言葉で示すことができる側面の他に、言葉になっていない暗在的な意味の感覚があることに気づくんです。

その意味の感覚に触れて、まだ言葉になっていない部分を言葉にしてみると、

たとえば、
「重苦しい…というよりも堅苦しいですね…ああ,あそびがないんですよね…もう少し楽しんで取り組んでみたいのかな…」といったように、

…で示された「感じられた意味」から新たな概念が表出され、新たな意味が創造されていきます。


何を意味して,何を伝えようとしているのかは、話すことに伴って更新されていき、最初は想像もしていなかった意味が創出される、ということはよくあります。


このように、人が言わんとしていることは未完成であるという観察ができるんですね。

クライエントさんが、〝まだ言葉になっていない部分〟に触れながら意味を新たに創造していく過程に注意を向けることを多くのカウンセラーやセラピストは大事にしています。

 

加藤絢子