【 Beautiful Boy ビューティフル・ボーイ 】
Rolling Stone 誌にも寄稿するフリーライターのデビッド・シェフが、自身の息子であるニック・シェフのドラッグ被害と向き合った自叙伝と、そしてまた被害の当事者であり、現在もまだ回復に向けて努力を続けている息子のニック・シェフ(NetFlixの人気シリーズ、『13の理由』の脚本家でもある)による告白本、親子それぞれの立場から書かれたノ2つのンフィクションドキュメンタリー書籍の内容を1つにまとめた映像作品。
製作には秀作連発、プランBのブラッド・ピット、『LION 25年目のただいま』のルーク・デイビスと今作では監督を務めるフェリックス・ヴァン・フュルーニンゲンが共同で脚本を仕上げた。
父親役には先日公開の映画『 VICE 』にてやんちゃなラムズフェルドを好演したスティーブ・カレル、
息子役には今やイケメン俳優ナンバー1と言って良いでしょう、『君の名前で僕を読んで』で大ブレイクのティモシー・シャラメ。デビッドの前妻役をエイミー・ライアン、後妻役にモーラ・ティアニーが当たった。
予告編から得た率直な先入観は薬物中毒になった愛息と共に立ち向かい更正への道を共に歩む親子の感動ストーリー、といったものだったのですが、実際のフィルムは極めて重く、息苦しい。
息子よりも自分の人生、仕事を優先した前妻との別れ、自分を愛してくれている事は分かってはいるけれど、再婚し新たに歳の離れた2人の子供をもうけた父親と義母との距離感によって、スポーツ万能、成績優秀だった自慢の息子は徐々にその孤独感を強めドラッグに蝕まれていく。
小さな子供に注がなければ再び同じ過ちを繰り返すと、父デビッドは父親、夫、ニックの親友という立ち位置を必死に守ろうとするものの、思春期に親の離婚を経験した子供の心の傷は当の本人にしか測り知る事は出来ないもの。すぐそばにドラッグが無かったとしても、痛み止めや睡眠薬といった常備薬、家庭にあり得る薬からその闇は子供たちに魔の手を延ばしてくるという恐ろしさ。
今作はその刺激性からR-15というカテゴリーに属してはいるものの、本来思春期の子供にも見て欲しい。極めて息苦しい内容ではあるんですが、子供と同様に親も悩み葛藤しているのだと気づいて欲しい、という思いにもなりました。
改めて思ったのは、親のエゴによる離婚が子供の心身に与えるあまりに大きい影響と心の傷、癒える事の無いトラウマ。
左近の日本においても子供が成人するまでに離婚する家庭は30%を超え、いがみ合う両親を見たくない、という気持ちもあるでしょうが親と生き別れる苦しみを我が子に与えてしまうことだけはやはりやってはならないと、苦しみの過去と現実から逃げずに耐え続ける自分を自分で褒めてやりたいなと改めて思いました。子供に罪は無いですから。
そして席を立ってはいけないエンドロール。ティモシー・シャラメが優しく、そして強く読み上げる弧高の詩人チャールズ・ブコウスキーの詩に心打たれます。
なかなか重い内容、辛いテーマではありますが、これがノンフクションであり、彼ら親子が今現在もその関係を守り続けている事、息子のニック・シェフも懸命にその運命に立ち向かい、自分の才能を開花させて立派に生きている事が大きな希望にもなっています。
それにしてもティモシー・シャラメ、『インターステラー』と時からケイシー・アフレックに負けない存在感を既に見せていましたが、作品を重ねる毎にその魅力を増しているように思います。
この夏の『シークレット・チルドレン』も楽しみ^^