学校生活6−1 普通部始業式 

 

諸君、おはようございます。


 今日は多少風があって涼しい方ですが、この体育館にこれだけの人数が入るとムッとしますから、あまり長く話をするつもりはありません。

 

 今日は始業式ということでお話をしたいと思います。皆、今回のこの夏休みは有意義に使いましたか?どうでしょうか?寝不足で労作展(作品展)、まだ出来ていないという人はいませんか?大丈夫かな(会場はざわざわ)

 

 私はこの夏休みにあるものを手に入れようとしました。前から欲しかったのです。「ゴマ」知ってますか。食べるゴマです。

 

 何年か前に京都のいわゆる老舗のゴマ屋さんを尋ねたました。その時にずらりと並んだ数種類のゴマの傍に見かけたころのない「ゴマスリ鉢」というのが置いてありました。

 

 ゴマスリ、スリ鉢、「スリ鉢」知ってますか?皆さんの家にありますか。一般的なスリ鉢というのは、これ位の大きさで中に溝が縦に切ってあるのですね。

 

 そこにゴマを入れて木の棒でゴロゴロスルのです。これがいわゆる「ゴマスリ鉢」です。人におべっかするのを「ゴマをする」と言いますね。これ余談ですね。

 

 話を戻しますと、そこにあった「スリ鉢」は少し形状が違いました。溝が全く無くてのっぺりとしていたのですね。私もこの年まで「スリ鉢」と言ったら溝があるものと承知していました。

 

 何故、溝があるのかというとゴマがその溝に引っ掛かり、それを木の棒がゴロゴロ押しつぶすことによってゴマがスレる訳ですね。もう皆わかるでしょ。ゴマが粉々になるわけです。

 

 だから溝は必要条件であるはずなのですね。しかし、その「スリ鉢」はのっぺりとしていて溝がついていない。しかも驚いたことに軽くゴマがスレるのです。

 

 溝付きよりもすごく軽くスレました。いや、驚きです。でも大きさがとても大きいのです。これは我が家では買えないなと思ったのですが、一応どこで買い求めたのかとお聞きしました。

 

 何と京都ではなく長野県の松本市とお返事が返ってきました。

 

 その後、たまたま仕事の関係で長野に行ったので、そのお聞きした松本の店に行きました。その店に入ると京都で見た物の一回り小型のスリ鉢がたまたま、大きい物の傍にありました。

 

 店主に頼んで小さい方でゴマをすらせていただきました。

 

 スプーン1杯のゴマを入れて棒で、この棒、普通の「スリ鉢」の棒と違って頭が少し大きいのですが、これをコロコロと回していると妙な手の感触と音がしたのですね。

 

 音がプチュプチュ聞こえるのですね。ゴマがはぜた音ですね。それと同時に良いゴマの香りがプーンと漂い始めたのですね。

 

 これには本当に驚きました。これは是非欲しい。その場で「ください」と言いましたが、何と残念な事に人気沸騰で在庫切れ。

 

 2か月待ってと言われました。だから我が家にはまだ届いていません。注文してきました。

 

 その時に色々なお話をお聞きしましたが実はゴマもそうですが君達はまだコーヒーの豆を挽いては飲まないと思いますが私はコーヒーも挽くのだけど、ゴマとかコーヒー豆とか擦りつぶして粉にする物は大豆もそうですけど、これは「きな粉」だね、

 

 これらにとって一番いけないのは「熱を与えること」。香りが飛んでしまうそうです。

 

 ゴマは特に小さいし風味が重要だから熱をなるべく加えたくないらしいです。

 

 で、溝が切れている「スリ鉢」やゴマ擦りカッターやゴマ擦りミルなど電動式のものもあるけど、風味が少なくなってしまうのですね。

 

 そこで私が求めたゴマスリ鉢は熱が出にくいのですね。そして、軽くスっているだけでいつの間にかゴマがスレている。

 

 例のプチュプチュという音、これが癒しの音なのですね。擦っているうちにこの音の為に気分がとても良くなるのです。

 

 そこでふと思ったのですが何でもそうなんですが電動でさっとできてしまうものよりもローテクというのかな手でゆっくり仕事をする機械というか道具などのほうが人に優しいということが多い。

 

 技術の授業もそうですよね。速さは何かを失って行くような気がしますね。

 

 最近その様な考え方が見直されてきています。先人の知恵、このことがですね。こういうことを皆も一つ一つ発見するといいと思います。

 

 これが私の夏休み。あと2か月後にその「ゴマスリ鉢」が来るのをととも楽しみにしています。という「ゴマスリ鉢との出会いの話」でした。

 

 

※ この話はあくまでも水先案内が普通部部長時代に語った話   です

 現在の慶應義塾普通部とは何ら一切の関係はありません

2−2に続く

 

 

ps;カバー写真は松本の「陶片木」のオリジナルゴマスリ鉢