茨木のり子さんの『みずうみ』

わたしの好きな詩の一つです音譜


茨木さんは、なんと凛とした女性なんでしょう。

【ココロ】の底の『しいん』とした深い湖は、外からの強風や豪雨に

よって乱れることがない、いつも、平穏で平和で、まさに自分自身の

本来の居場所なんだと思います。

何かあっても、大きく深呼吸をして本来の自分に立ち返る場所。

そんな場所を持つべきなのですねキラキラキラキラ



     「みずうみ」  茨木のり子



     だいたいお母さんてものはさ
     しいん
     としたとこがなくちゃいけないんだ

     名台詞を聴くものかな!

     ふりかえると
     お下げとお河童と
     二つのランドセルがゆれてゆく
     落葉の道

     お母さんだけとはかぎらない
     人間は誰でも心の底に
     しいんと静かな湖を持つべきなのだ

     田沢湖のように深く青い湖を
     かくし持っているひとは
     話すとわかる 二言 三言で

     それこそ しいんと落ちついて
     容易に増えも減りもしない自分の湖
     さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖

     教養や学歴とはなんの関係もないらしい
     人間の魅力とは
     たぶんその湖のあたりから
     発する霧だ

         早くもそのことに
         気づいたらしい
         小さな
         二人の
         娘たち