高島易斷 坎為水 上六の易占 | 心の経営コンサルタント(中小企業診断士) 日本の心(古典)研究者 白倉信司

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上六

上六。係用徽纆、寘于叢棘。三歳不得。凶。

○上六。係(つな)ぐに徽纆(きぼく)を用い、叢棘(そうきょく)に寘(お)く。三歳まで得(え)ず。凶。

小人が険難の極に至れば必ず妄進して自滅する。君主の座を奪い取ろうと奸計を目論見、二重三重に縄で縛られて牢屋に置き去りにされる。

三年経っても悔い改めなければ、死刑に処せられても仕方ない。

象曰、上六失道。凶三歳也。

○上六は道を失う。凶(きょう)なること三歳(さんさい)なり。

険難に処する道(習坎は孚有)を甚(はなは)だしく逸脱してしまった。

それゆえ三年経っても悔い改めなければ、死刑に処せられも仕方ない。

(占)自分の身が困難に陥っているのに、何も省みようとせずに、誤魔化しや妄言を続け、災難(人災)を招く時である。よく反省して志を改め善き行いをしなければならない。

そうでなければ、さらに人の道を踏み外して、大きな悪行を犯しかねない。慎む心が何より大切だという占いである。

○牢獄(刑務所)に入るという象(かたち)。

○険阻艱難が度重なる時の極点に居て、紛争がさらに悪化するという象(かたち)である。

○悪巧みを計画するという意味がある。

○決意を固めないで行動する時は、どこに向かって進んでいるのか分からなくなるように、居場所を失って漂うしかない。

○心身共に疲れ切って、心配事や苦労が絶えない時である。

(占例)明治十七年十月、埼玉県秩父郡において、暴徒が放棄して勢いが各郡に広がって、大きな被害が出ているという事件が、各新聞に大々的に報じられた。

わたしが、この事件のことを心配していたところ、一人の友人がやって来て、この事件の結末がどうなるかを占ってほしいと請うので、占筮したところ、坎の上爻を得たのである。

易斷は次のような判断であった。

坎為水は上卦・下卦共に坎、坎は険阻艱難が重なる時である。

上卦の政府は欧米の文化を学んで、時代に合わなくなった悪しき風習を改善して、欧米各国と同じような文明社会を築き上げようとしている。

文明社会を築き上げるには、膨大な資金が必要であるが、十分な資金を得ることができないのは、上卦の険阻艱難である。

下卦の人民は、未だに近代化の恩恵を受けることなく、近代化を進めるのに必要な出費が嵩む。これは下卦の険阻艱難である。

上卦と下卦の険阻艱難は、以上のようである。これは天命や運命と言われるような、度重なる険阻艱難の象(かたち)を示しているということである。

我が國は、徳川の政治が三百年近くも続いたので、すっかり古い風習が定着して、悪しき風習を改めたり、時代に適合した仕組みを構築することが不得手である。

だから、欧米諸国と比べると、文明国家として遅れていることを否定することはできない。

けれども、現在のように、世界各国が対立している状況の中で、独立国としての主権を守るためには、政府と人民が一体となって資金を捻出して、近代化の基礎を築き上げなければならない。

今回占って上爻が出たのは、いよいよ険阻艱難な時の終極を迎える中で、度重なる困難に窮した人民が集まって暴動を起こしたのであるから、大局からこの状況を俯瞰すれば、過度に心配することはない。それゆえ、「係(つな)ぐに徽纆(きぼく)を用い、叢棘(そうきょく)に寘(お)く。三歳まで得(え)ず。凶。小人が険難の極に至れば必ず妄進して自滅する。君主の座を奪い取ろうと奸計を目論見、二重三重に縄で縛られて牢屋に置き去りにされる。三年経っても悔い改めなければ、死刑に処せられても仕方ない」と言うのである。

この言葉は、数千人という暴徒を刑務所に入れて、国家予算を投ずるのは善良な庶民が資金的な負担をすることになり、大変な損失を蒙(こうむ)ることになる。だから、暴動の首謀者以外は軽い処分で済ませて、自宅で謹慎させることが良策である。

以上が、今回の暴動事件の結末だと解説した。

事件終息後の政府の対応は、以上の易占の通りであった。