『ギリシア人の物語3』 | 心の風景

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 『ギリシア人の物語3 都市国家ギリシアの終焉』/塩野七生/新潮文庫

 

 この巻はペロポネソス戦争の終結からアレクサンドロス大王の即位まで約70年を扱います。

 

 元々ギリシア人同士は争いが多く、小国が分立して、なかなか一つにまとまれなかったのですが、ペロポネソス戦争後はその傾向がますますひどくなります。経済が落ち込み、外国に傭兵となって出かける風潮が広がり、自分の国は自分で守るという美風もすたれます。

 

 その間にマケドニア王国が台頭してきます。マケドニア王国は、アテネなどの都市国家群の北方に位置します。同じギリシア人の建てた国ですが、長年遅れた辺境の国と見なされていました。

 

 ところがフィリッポス2世という王の出現で急速に国力を増し、アテネなどの連合軍を打ち破って、ギリシア全土を征服してしまいます。のちに王の息子が即位して、あの有名なアレクサンドロス大王になります。

 

 現代日本の私たちは、都市国家の民主政の方が独裁的な王政よりも優れていると思うでしょう。しかし、実際には団結を欠き、目先の利益にとらわれ、右往左往して衆愚政治に陥ってしまえば、手もなく独裁的な強国に征服されてしまうものです。

 

 これは今の日本の状況にも当てはまるところがあるのかもしれません。