『失敗の本質』 | 心の風景

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『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』/戸部良一他/中公文庫

 

1984年刊行以降、今日まで読み継がれ、名著としての評価を受けている書。ミッドウェー、ガダルカナル、インパールなど有名な戦いにおける日本軍の敗北の原因を追究し、組織の欠陥を明確にしようとするのが本書の目的です。

 

これでもか、これでもか、とばかり大本営を含めて日本軍全体の欠陥が列挙されていきます。本当にこんなにひどかったのか、と悲しくなってくるほどです。一方、アメリカ軍の方は褒められています。そもそも国力が段違いな上に、軍の働きにこんなに差があるのなら、お話にならないなんてものじゃありません。

 

欠陥の具体例をあげてみましょう。合理性より相手の希望や体面や人間関係を重んじる。戦闘の目的をはっきりさせない。意思を的確に伝えない。物資より精神を重視する。十分な情報収集をしない。補給を軽視する。失敗したときの対応策を立てていない。コミュニケーションの重要性の認識欠如。・・・ここらでやめておきましょう。この倍くらいは続けられます。

 

恐ろしいのは、戦後の日本の企業などの組織にも、この欠陥が受け継がれていることです。それは同感する人が多いと思います。だから、本書は今も読み継がれているのでしょう。

 

それでも本書の中では、企業が軍の欠陥を克服した部分もあると評価しています。しかし、「失われた30年」を経験した現在は、同じ轍を踏んでしまっているように思えてなりません。

 

本書は、特に後半は理屈っぽくて難しいのですが、出来るだけ多くの人に読んでもらいたいと思っています。