《こころとハーモニーの講座フェルマータ》
~フェルマータは藤沢市の音楽教室です~
合唱・ピアノ・声楽・手話歌・音楽講座
♪プロフィール♪
モーツァルトの妻コンスタンツェについては
色々な話がありますが、
一般的に有名なのは
『世界3大悪妻説』ですよね。
その主な理由としては、
- 享楽的な暮らしぶりで家計を逼迫させた
- 夫を共同墓地に葬ってしまった為に彼のお墓がない
- デンマークの外交官と再婚し宮廷顧問官夫人となった
- 義父(レオポルト)の墓に再婚相手と一緒に入った
こんなところでしょうか・・・
でも、そうは言っても、
「へ~え、そうなんだ~」と
この結論に安易に納得してしまうのには
ちょっと抵抗もあり、
もしかしたら何か大事な事を
見落としているかも?!
と思ってしまうのです。
そこで、今年最初の音楽家探求では、
『悪妻説』の理由に至った彼女の行動の原因
についてフォーカスしながら、
少し彼女の気持ちに寄り添ってみたいなぁ
と思っています。
もしかしたら、
彼女のイメージが変わってくるかも
しれませんよね。
ウェーバー家の4姉妹
コンスタンツェはドイツ南西部の街で
モーツァルトより6年遅く生まれました。
彼女はヴァイオリン奏者で歌手で写譜家の
フランツ・フリードリン・ウェーバーの
三女です。
ちなみに、このフランツの弟の子が
かの有名な作曲家ウェーバーになります。
コンスタンツェとは従兄弟なんです。
さて、ウェーバー家の4姉妹は、
バス歌手の娘だった事もあって、
(低い声域を持つ男性歌手)
幼い頃から声楽を学ばされていたようです。
長女のヨゼファはコロラトゥーラソプラノで
(高音域で音を転がすように歌う華やかなソプラノ。)
沢山のステージに上がっていた記録があり、
後にモーツァルトの書いたオペラ
『魔笛』ではあの夜の女王を歌っています。
彼女はその当時、
「魔笛の成功に大きく貢献したソプラノ!」
とも言われた実力派歌手だったみたいです。
しかし、次女のアロイジアは、
それ以上に華やかなソプラノ歌手として
ウィーンで活躍するようになっていました。
彼女は10代の頃から
技術的に超難曲と言われた曲でも
軽やかに歌いきってしまうので、
周りからは天才少女!と言われて
華々しい歌手デビューを果たしていました。
しかも彼女はその見事な歌唱力に加えて
姉妹の中でも特にすらっと背が高く
ひと際目立つ美しい容姿を持ち、
当時、正に舞台映えのする美人歌手
として大きな人気を得ていました。
もう、この二人の活躍だけでも
このウェーバー家がどれだけ声楽に
力を入れていたかが伝わると思います。
ところで三女のコンスタンツェなのですが、
彼女もまたソプラノ歌手ではあったのですが
ただ上の二人の姉があまりに華やか過ぎて
あまり目立たない歌手でもありました。
でも、そうは言っても後にモーツァルトは
コンスタンツェの為に『ハ短調ミサ曲』を
書いているのですから、
彼女はこの曲の独唱者として歌う程の実力
は持っていたという事は推定出来るので、
例え華やかさは無かったにしても
彼女もきっと十分に歌が上手かった
のだと思います。
また、末娘のゾフィーも17歳で
ソプラノ歌手としてブルク劇場で
デビューはしたのですが、
ただ、彼女の場合は本人の意思で
一年で歌手生活をやめてしまったようです。
さて、ここまでの背景を見れば
バス歌手の父親を中心にして
歌の才能に恵まれた娘たちが
華やかに音楽の世界で活躍していた
仲良し家族というように思えるのですが、
でも実際はちょっと異なっていたようです。
両親は4人の娘たちに全く同じ事を求め
全く同じように活躍する事を望んだ為に
彼女たちの中に大きな歪が生まれ
やがてそれがじわじわと
大きくなり始めてしまったのです。
そして、この様な状況の時に、
あのモーツァルトがこの4姉妹と
\運命的な出会い/
をする事になります・・・・
さて、「劣等感」と「コンプレックス」、
わりと似たような状況で使われる
この二つの単語ですが、
本来この二つの言葉の意味は異なります。
つまり、イコールではないという事です。
「劣等感」とは、
実際にはどうなのかは別として、
「自分が他者より劣っている」と
自分が感情的に感じてしまう気持ちの事
です。
・あなたには出来ても私には出来ない
・あの人と違う私になんか何の価値もない
・あの人には出来ても私にはどうせ無理
という様なネガティブな感情ですね。
これに対して「コンプレックス」とは、
正式には「劣等コンプレックス」と言われ
「自分が劣っていると思う事に対して
無意識に自分が反応してしまう事」
のことを言います。
これは悲しみとか怒りのような感情や体験
そして自分の思考が複合的に絡み合って、
その結果、形成されてしまう
自分自身の観念です。
だからそこには様々な感情が入り混じり、
それによって例えば
・やるべき事から逃げてしまったり
・努力もせずに言い訳ばかりを考えたり
・人のせいにしてむやみに人を攻撃したり
・偏見や勝手な理屈を正論と言いきったり
してしまう複合的な渦が
心の中に生じてしまうのです。
(それってさ、
家が貧しいから勉強できない!
とか、
成績が悪いのは親の遺伝だ!
みたいな感情の事?)
そうそう、
その問題を人や環境のせいにして
目の前の課題から逃げようとするのが
「劣等コンプレックス」の大きな特徴です。
そしてこの「劣等コンプレックス」が
生まれてしまう原因には
悲しみ・怒りの感情、体験、思考があると
述べましたが、
過去に周囲から言われた言葉や
大きな失敗などがその例にあげられます。
また子ども時代に受けた親からの否定も
この主な原因になっています。
(ねぇ、コンスタンツェも
そうだったって事なの?
彼女の結婚前の事が気になってきたよ。)
姉妹の父親が早くに亡くなってしまい
その後一人でやりくりするようになった
4人の母親のツェチーリアにとって、
長女や次女は大事な家の稼ぎ頭だったので
とても大事に育てていたのですが、
コンスタンツェに対しては接し方が
かなり異なっていたみたいなのです。
では、次回は
このコンスタンツェの悲しみの感情と
そして運命的なモーツァルトとの出会い
についてお話していきたいと思います。
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