ADHD適正流通管理システムによる登録~処方の流れ | 精神医学をもっとわかりやすくもっと面白く。

ADHD適正流通管理システムによる登録~処方の流れ

こんにちは。
「なるほど&エンタメ&タメになる」精神医学を提供する、
なるタメ教育系精神科医の西井重超です。
 

今日はちょっとお堅い内容。
ADHD適正流通管理システムについてです。




ADHD治療薬のコンサータとビバンセの処方が
この度、2019年12月2日から厳格に管理されるようになりました。


どちらの薬も精神刺激薬で、
アンフェタミン類に分類される依存のリスクが高い薬剤になります。
シンプルに言うと横流しや乱用を防ぐために、
病院での処方が管理されるようになったというわけです。


非常にめんどくさくなったわけですがポジティブに言うと、
おかしなことをする人が出ないようにして
コンサータやビバンセを正しい使い方をしている本当に必要な人に届き
製造中止などに追い込まれないようにするシステムとも考えていいでしょう。


まずtwitterで速報でお伝えした内容ですが、
本日再度流通管理システム事務局に問い合わせたところ
最初にお伝えした内容より緩めの回答が得られました。
最初の情報でご不安になった方もおられたと思います。
心よりお詫び申し上げます。


*今は事務局もいろんな問い合わせが殺到しているようで、
細かい質問に関しては対応する人によって若干回答は違うこともあるようです。
(現時点で3回問い合わせしていますが、念のために同じ質問したら回答が違いました・・・。)


【患者さん向け】


①身分証明書について

2020.1.29に内容の変更通知が届きました。

【変更前】
成人の方は保険証のみでも可

【変更後】

1点の写真付きの身分証明書が必要(運転免許証、パスポート、障害者手帳など)
*もしくは写真のない身分証明書につきましては、
保険証を含めて2点以上の提示で可
学生証は、写真付きであれば1点で可(写真のないものは、2点以上の提示で可)

 

下記の修正前の記事をご覧になればわかると思いますが、

身分証明書の点については若干ゆるい基準となっておりました。

この度、しっかりしたものになったという認識でいいかと思います。

学生証でもよいということになったので、この点は明らかに改善・配慮されている感じです。

 

まぁ、ぶっちゃけ保険証を持ってる人が写真付きの身分証明書を出す場合は

2点以上提示になってしまうわけなので

写真付きでも写真付きじゃなくても同じと言われればそうなのですが・・・。

 

@@@(以下、修正前記事です)@@@
成人の場合は医療機関での提示は健康保険証のみでもいいとのことです。
もう少し詳しく言うと、健康保険証以外の身分証明書もあったら提示するのが望ましいとの回答で
「いや、どっちでもいいなら健康保険証のみでいいやん。」
とツッコミを入れたくなりますが、まぁ気にしないでください。
華麗にスルーして大人な対応をお願いします。
 

ちなみに調剤薬局では健康保険証のみでOKで、他の身分証明書は不要とのことです。
 

20歳未満の場合は健康保険証のみであれば代諾者の身分証明書が必要となっています。
つまり健康保険証以外の本人の身分証明書があればいいとのことです。
障害者手帳(身体・精神・療育)があれば大丈夫です。
ちなみに学生証にはこの場合の身分証明書にはならないとのことです。


まぁぶっちゃけ何の身分証明書で確認したかの記入欄(報告欄)はないのですが、
責任問題ですので確認を適当にやる医療機関はないかとは思います。

@@@(以上、修正前記事です)@@@

 

②代諾者とは?
保護者以外にも、保護者以外の親族、身寄りがない場合は入所している福祉施設の施設長も可能なようです。
大まかに、保護者のような立場の人というイメージで考えるようです。

 

上記①にも関わる話ですが、本人が健康保険証と障害者手帳を持っている場合に
代諾者が身分証明書を提示せず「母です」とか言ってきたら確認は難しいとのことです。


③第三者からの症状に関する情報とは
通知表、連絡帳、母子手帳以外のものとしては家族や会社の人からの情報提供でもいいようです。

マニュアル(?)には家族・友人・会社の上司・会社の同僚と書かれているようで、

問い合わせしたときには読み上げておられました。
第三者はグループホームの職員や、訪問看護など日常の介助者でもいいとのことです。
つまり日常生活を見ている人ということになります。
(ということは完全に身寄りのない人は訪問看護を利用し日常の状況を情報提供してもらうのがよさげでしょうか。)


どのような情報源によるものかはフリースペースへの自由記述になっているので、
「会社からの手紙」「家族による情報提供」などを書き込むことになるとのことです。


④同意取得時に患者及び家族に伝えるべき情報って家族への説明は必須?
患者さんが20歳未満の場合のみ家族への説明が必要です。
成人の場合は家族への説明は不要です。


ちなみにADHD適正流通管理システムで成人か未成年かの基準となる年齢は
20歳以上か20歳未満かになります。
(18歳は関係ありません。)


⑤同意書に署名について
12歳以上は患者の署名が必要です。
20歳未満は代諾者(②参照)の署名が必要です。


12歳未満→代諾者の署名のみ
12歳以上20歳未満→本人及び代諾者の署名
20歳以上→本人の署名


というわけですね。


⑥コンサータが処方できる医療機関の検索は?
流通管理システムに登録した医師のIDでログインしたら、登録医療機関が検索できるということです。
患者さんはコンサータが処方できる医療機関を調べるには、
直接医療機関のHPで処方可能な医療機関かを確認するしかなさそうです。


⑦引っ越しなどで患者カードをなくしてしまった(前のIDがわからない)
前の病院に聞いてIDを調べる必要があるようです。
医療機関は個人情報保護のために電話での問い合わせは本人確認が出来ないので応じないところも多いです。
患者さんの署名入りの文書のやり取りにて応じる医療機関もあるとは思いますが、
IDを記載した書類発行のための文書料を必要とする医療機関もあると思います。

遠方などの理由で前の病院に行けず詰むパターンがありますので、
患者カード(患者ID)はスマホで写真を撮るなどして決してなくさないようにするのが一番でしょう。


⑧前の病院がつぶれた、数年前に行ったきりなので前の病院の名前が分からない、子どもの頃に何かを飲んでいたが覚えてない
別の病院で処方してもらおうとしても、2か所3か所と複数の病院でもらおうとしたら
システム上で警告がかかるようになっています。
そういうシステムですので1人の人が複数のIDを持とうとしたら警告がかかるようになっています。


今後数年このシステムが継続した場合に、以前の治療状況を覚えていなかったり、前の病院がつぶれたりする可能性もあります。
その時は新規登録を病院で再度してもらい備考欄に「前の病院がつぶれて前IDが不明」「過去に処方歴があるが、かなり以前のため詳細が不明」など理由を書いて新規登録をすることになるとのことです。


⑨患者カードはどれくらいで届くの?
3週間程度らしいです。
初期段階ではかなり混雑すると思うのでもっとかかるかもしれません。
そこで初回処方までに患者カードの受け取りが間に合わない場合のみ、登録システムから初回処方時限定のID番号記載用紙を医療機関から発行されることになります。

となると初回に1週間分のみ処方された場合、患者カードは届かない場合が出てくると思います。
その場合は「初回処方時限定のID番号記載用紙」を2回目の処方時も発行するということになります。
それで患者カードがまだ届いていない場合のみ、処方対応ができるとのことです。

「初回処方時限定のID番号記載用紙」が2回目も利用できるというカオスが発生していますが、
ここでも華麗にスルーするという大人な対応が必要となります。

 

⑩患者カードをなくしてしまいそう

なくした場合は患者カードのIDを医療機関にお伝えください

つまり患者カード(患者ID)はもらったら即座にスマホで写真を撮る。

ただ、手続きが面倒なのでなくさないでください。

ADHDだというのはわかっていますが、マジ勘弁。ホント・・・。

(何度もなくす人は薬剤管理もリスキーなので何か月かは1週間毎での処方も検討中。)

 

⑪12月以降に他の病院に転院するには(~2020年6末までの措置)

他の病院で処方されていた証拠がある場合は、

今まで処方されていた人と同じ扱いで2020年6末まで処方が可能です。

 

他の病院で処方されていた証拠とは

おくすり手帳や他院からの紹介状

その他他院で処方していたと確認が取れた場合とのことです。

患者さんの自己申告では処方は認められないとのことで、

他の病院に変えたい人は上記の書類を必ず確保しておいてください。

特に転勤や進学の時期などは注意してください。

実際薬を持っているという事実だけでは本人が処方されたものかどうかわからないので

処方を行うことは出来ません。

 

その他他院で処方していたと確認が取れた場合とは、

例えば一部の地域は障害者手帳の診断書には内服を書く欄があるので

そういった障害者手帳の診断書もコピーも考えられます。

一方で、電話で問い合わせるという方法は本人確認ができないために

ほとんどすべての医療機関では受け付けてもらえない方法と思われますので注意してください。


【医師向け】
*キレて事務局に問い合わせする医師もいるようですが、落ち着いた対応をお願いします。(^-^;)
①論文は筆頭のみ?
筆頭のみです。
筆頭ではない方は症例報告してください。


②パスワードはなんでもいいの?
処方の時にも必要なパスワードになるので、
念のために勤務医療機関にも伝えて置くという方は
amazonとかのパスワードにはしないようにしましょう。(笑)
変更するにはログイン画面のところにある「パスワードを忘れた方へ」
みたいなところから変更を行ってください。


③医師登録は何日くらいで出来るの?
基本は3営業日くらいらしいです。
今は殺到しているから遅れるかも、と。

*新規申請はもっとかかる可能性があると他の先生からメッセージ頂きました。貴重な情報ありがとうございました。

 

④患者が患者カードやIDをなくした

上の⑦⑧をまず読んでください。


⑤患者カードが届いてないのに患者さんが来てしまった
上の⑨を読んでください。

 

⑥患者さんへの説明の冊子って?

製薬会社からもらえます。

ADHD適正流通管理システム事務局では内容はノータッチのようで、
製薬会社が出す冊子の内容が正しいかどうかは事務局ではチェックされていないとのこと。
(まぁ、正しいと思いますが。)

で、製薬会社さんに連絡したところ
冊子の内容に基づいた内容であれば冊子をそのまま利用しなくてもいいとのこと。
まぁ冊子が大事というより内容が大事という回答は杓子定規ではない常識的な回答かと思いました。
 

⑦同意書ってデジタル化できるの?

現時点(R1.12.3)では認められていません。

同じ様式であっても、製薬会社から配布される複写式の同意書しかダメです。

災害などがあって同意書が一部の地域に枯渇した場合は、

その地域は新規処方が完全に止まる仕様です。(確認済み)

当院を含めADHDをよく診ている医療機関は同意書をストックしておく必要があるようです。


 「なるタメ」精神科医の西井重超でした。

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*本記事は新しい情報があり次第適宜更新をしています、

訂正箇所を1つ1つ明示することはしませんのでご了承ください。