スプラトゥーンや地上戦がうまくなるADHDの治療薬? | 精神医学をもっとわかりやすくもっと面白く。

スプラトゥーンや地上戦がうまくなるADHDの治療薬?

こんにちは。
 「なるほど&エンタメ&タメになる」精神医学を提供する、
なるタメ教育系精神科医の西井重超です。
 

「ADHDの薬でスプラトゥーンうまくなるって本当ですか?」


患者さんに質問された内容です。

一瞬なんのことやらと思ったのですが、
よくよく聞いていくと覚せい剤に似ているADHDの薬があるという話に。


私は診察の場面ではコンサータの話をしましたが、調べてみたら
adderallというアンフェタミン系の薬剤がeスポーツで使用されていたとのこと。
https://www.theguardian.com/technology/2015/jul/23/anti-doping-in-e-sports-worlds-largest-gaming-organization-will-test-for-peds

結構昔の記事なのですが、今知りました。


アンフェタミン系の薬剤としては日本ではコンサータとリタリンが有名ですが、
中枢刺激薬と言われ脳のドーパミンとノルアドレナリンに作用します。
覚せい剤と同様のメカニズムで身体に作用を及ぼすので依存性などの問題で日本では規制がかかっており
申請し承認が下りた医師でしか使用ができません。


ADHDは不注意・多動衝動(多動・衝動)の大きく2つ(もしくは3つ)の症状が特徴の疾患です。
ケアレスミスが多い、忘れ物が多い、片づけられないといった不注意症状
そわそわしてしまう、すぐ席を立ってしまうといった多動症状
順番が待てない、人の質問の途中で口をはさんでしまうという衝動症状
に分けられます。


私はスプラトゥーン自体はやったことがない(youtubeで見たことがある程度)なので
どのような効果でスプラトゥーンが強くなるのかははっきりと言えませんが、
おそらく衝動性の改善及び不注意症状の改善が主な効果だとまず考えました。


そもそも成長してくると多動症状は見られなくなっていき、
成人期のADHDのほとんどは不注意症状が主体となります。
診断基準の都合で多動衝動とひとくくりにされることが多いですが、
衝動性は大人になってもある程度残る人がいます。
ADHDの衝動買いであったり、我慢できずにイライラしたりするのがそれです。


正常な方に投与したらどうなるかというデータはおそらくないので予想の範囲ですが、
即効性があり効果がはっきりしやすいコンサータは特に顕著に効果が出そうです。
ストラテラは未知数ですがもしかしたら若干効果が出るかもしれませんという程度です。
コンサータは当日に効果が得られるとは思いますが、
ストラテラは数週間かけて徐々に内服量を増やしていって効果が出てくる薬ですので
根気よく飲めるかどうかも問題になってきます。


スプラトゥーンはわからないので、ここらへんからは格闘ゲームの例えで話をさせてください。
プロゲーマーと一般人とは効果の出方というか、期待される効果が異なると考えます。


一般人の問題は沢山あって、その中には衝動性の問題が多く含まれます。
不用意な飛込み、ぶっ放し(一か八かで必殺技を出すこと)などです。
 ①丁寧な試合が出来るようになる
 ②しっかり地上戦が出来るようになる
おそらくこれができるだけでもある程度は強くなるはずです。
衝動性の問題が解消されるだけで強くなれるということです。


一方でプロゲーマーの方はおそらく極度の集中力を要すると考えます。
丁寧な動きは基本動作として出来ると思いますので、得られる恩恵としては
 ①研ぎ澄まされる集中力
目の前のことに吸い込まれて、槍のように鋭い感覚になる。
なんか怪しいこと言ってますが、こんな感覚かなと。


いや、ダメですよ。使っちゃ。
ってかADHD治療薬はADHDじゃない人には処方できないし、
さらにコンサータは規制薬なので手に入らないですから大丈夫とは思うのですが。


ちなみに手が震える人は書痙(描くときに出が震える)に代表されるように
緊張で振戦が出る症状をお持ちの人です。
多くはベンゾジアゼピン系薬剤やβブロッカーが効くことが多いので、
これはお医者さんに治療してもらってください。
メタルギアソリッドでスネークもジアゼパムを使ってますが、
あれは射撃時の手振れを少なくする作用でしたよね。
私の経験では書くときに手が震える以外に、
バイオリニストの方がコンサートで手が震えるからと治療に来られていました。


 「なるタメ」精神科医の西井重超でした。
 講演・研修の依頼→http://ws.formzu.net/fgen/S3061359/  
Twitter→ http://twitter.com/nishiishigeki