オータムクラシック直前、つまりシーズン開幕 | 桃象コラム

桃象コラム

音楽(特にピアノ)、演劇鑑賞、料理、旅行、ヨガ、スポーツ観戦(フィギュアスケート、サッカーなど)を心のオアシスに、翻訳を仕事にしていつの間にか四半世紀。まだまだ修行中。

早いものであっという間に夏も終わり、夏の間のいろいろなイベントも終わり、先週末のロンバルディア杯、USクラシックあたりからシニアのシーズンが始まっています。ジュニアはもうちょっと早くから始まっています。いったんグランプリシリーズが始まると、毎週の試合を追いかけているうちに、あっという間に年末になっているのでしょうね。怖いことです(笑)
 
さて、各スケーターの今季のプログラムが徐々にその全貌を現すなか、羽生さんのプログラムは今週末のオータムクラシックまで待たなければなりません。これまでのところ、フィギュアスケートTVやNHKニュースなどで明らかになっているのは一部だけで、それがどのようにつながるのか、みなさんいろいろと想像や妄想を繰り広げておいでです。使用する曲は、ショートがジョニー・ウィア―の「秋に寄せて」、フリーがエフゲニー・プルシェンコの「ニジンスキーに捧ぐ」、それぞれの使用曲(OtonalとArt on Ice)を使うということ。それも平昌オリンピックが終わってからいろいろ考えて、Continues with Wingsの時にお二方から許可を頂いたと。そうすると、ファンタジー・オン・アイスでプル様がニジンスキーを滑ってくれたのも、「よく見ておけ」というつもりもあったのかなと思います。このあたりもContinuesで胸熱。
 
私は羽生さんのプログラムはニジンスキーを演じるようなものにはならないと思っています。彼が演じるのはニジンスキーではなく、子供の頃から今までずっと持ち続けてきたプル様への憧れや尊敬などの気持ちを表すものになるんじゃないかと思っています。そんな曲を引っ提げて試合用のプログラムを作っているのだから、そりゃ楽しいに決まっています。おそらく今から十数年前のアイスリンク仙台で、練習は5分?10分?で飽きちゃっても、「ねぇねぇ昨日のプルシェンコ見た?」とか言いながらスピンやステップの真似をして都築先生に怒られていたのかな、なんて想像します。その後の想像もつかないほどの努力で五輪二連覇を達成した今、好きなようにプログラムを組む楽しさは想像に難くありません。チラチラと明らかになっている部分だけでもつなぎが盛り盛りで、そもそもオープニングからあっというまに4ループが入るみたいですけれど、いくらなんでも助走が短すぎるような気がするし、つなげられるだけいろんなステップや動きをつないでいるように見えるのですが、それはいったいステップシークエンスなのかコレオシークエンスなのか今の段階ではまったく分かりません。もはやエレメンツを単独で行うなんていうことはこの人にはないのだと。
 
どこかでそんなことを語っていたなと思って、荒川さんの「フレンズプラス」に羽生さんが2015-16シーズンに出演した時のビデオを見返してみたら、いかにもこれからジャンプ跳ぶぞ、というのはいやです、ジャンプもスピンもすべて流れの中でやりたいと語っていました。荒川さんも同じ考え方なんですね。その理由は、これからジャンプを跳ぶ、という「ため」があると、そこで見ている人の集中が途切れる。せっかくプログラムで何かを表現しようとしているのに、その流れから離れて「ジャンプ」に意識が集中してしまう、ということでした。確かに私も、助走の長い選手を見ていると、助走に入った瞬間に演技の流れがふと途切れることは珍しくないです。競技ならまだしも、ショーのプログラムでこれがあるとちょっと残念に思います。ミスがあるともっと顕著です。他の選手の話では、ジャンプの助走に入ったら音楽のことはいったん忘れないと跳べないと聞いたこともあるので、ジャンプの音ハメは、実はものすごく高度な技術なのだろうなと想像します。
 
そういえば、平昌で金メダルを取ったら引退するのではないかと思われていたきっかけになったのは、4年ぐらい前のインタビューだったかと。たぶんどこかに録画が残っているとは思うのだけど家探しする時間がないので記憶をたどれば、確か、平昌を最後に競技からは引退して、まだ技術や体力がピークにある間に好きなプログラムを滑りたいというような趣旨だったかと。競技用のプログラムはいろいろなルールの制約を受けざるを得ず、やりたいこともできないという考え方もあるだろうけれど、逆に、技術や体力がまだあるからこそ、究極に難しい競技プログラムを滑ることを勝ち負けよりも優先できるのは、チャンピオンだけに許された、ものすごい贅沢とも言えるのじゃないかと思います。
 
しかも、そこに4回転アクセルを組み込もうと。それも、NHKのインタビューで語ったとおり、迷いなく「跳びます」と。彼がこのように明言するのは勝算のある時。きっとどこかで入れてくるでしょう。平昌でブライアン・オーサーも、結弦は4A を跳べると思うかと聞かれて、「Yes, it’s doable」とあっさり答えていましたからね。夏の間(つまり去年の夏)、ハーネスをつけた練習では、実質的にハーネスの力を借りなくとも跳べていたと。そういう意味でも見逃せない今季。とにかく怪我だけはしないように。二連覇を成し遂げてのボーナスステージ(なによりご本人が「ご褒美」と呼んでいるぐらい)、楽しみにしています。オータムクラシックまであとわずか。もう少しでプログラムの全貌が分かります。ホントにワクワクします。衣装を楽しみにしている声も多数聞きますが、私はこれにはほとんど関心ありません。透けようが透けまいが、黒だろうが紫だろうが、極端な話どうでもいいです。むしろ、羽生さんには一度はフリルでもビジューでもレースでもない、「それ衣装なの?練習着じゃないの?ユニクロで買ってきたの?」というぐらいシンプルな着衣で滑ってもらいたいような気もします。今季から男子にも認められたタイツ着用の第1号が誰で、どんな衣装かは、ちょっと気になるけど。
 
週末のオータムクラシックとオンドレイ・ネペラが終わると、概ね今季のプログラムが出そろいます。一度この辺りで情報を整理しておかないと、来るGPSについていけず、あれよあれよという間にファイナルがやってきてしまいます。連休はお勉強しましょう。
 
桃象