※原作が著名な作品なので、あえてネタバレ有りなどとは記載していませんが、普通に好きな役者さん中心の感想です
子母澤寛の「新選組始末記」
現代の新選組と名のつく物語の、全ての土台になるような作品がこの子母澤寛の作品なのだそうです。
Wikiより「〜関係者への取材などを取りまとめられていることから、新選組に関する代表的な資料とも捉えられており、その後の幕末を題材にした創作作品に影響を与えた〜」
時代的に、まだ資料も比較的新しい状態で読むことができた、当時の人の記憶にも多少なりとも目撃した、残っていた時代の作品…と推測します。
そんな、新選組始末記の舞台、観てきました。
主人公は…
一応沖田総司と藤堂平助、となっていますが、私の観た印象だと「新選組」全体が主役!でした。
新選組好きな人は見た方いい😭
最近は観たい役者さんが出ている舞台しか観ないのですが…今回、
注目は斎藤一役 伊崎龍次郎さん
謎も多い斎藤一
間者として敵?の懐に入った人物とも言われている…が、謎の多い人物です。
その謎の多い素敵キャラクターを伊崎さんが演じるというので…それはそれは心して観てきた次第です…
では、感想を〜(斎藤一役伊崎龍次郎メインです)
まず、
佇まいと、目と、殺陣がいい!!
舞台では新選組の結成から油小路の事件までを描いているので、京の都での戦い多め。
その中でも今回伊崎さん演じる斎藤一の殺陣は、鋭く、速く、重心が低く重い。
要は殺人の殺陣だな、と思いました。
さらに無口。
伊藤甲子太郎たちの話を、気配を消して物影から聞いていたり…その伊東の元へ間者となって入ったりするのですが、
基本的に言葉を発さない。
忍びなの?!というくらい静かに、隊士の一番後ろに控えている。
でも、戦いになると、
なすべき事をなす!
斬るべきものは躊躇なく斬る!!
そんなセリフが…聞こえそう…でしたがセリフ当然なし。
セリフが少ないことの難しさ
セリフが多ければ多いで、聞かせどころの力の入れ方、抑揚…と工夫のしどころは山ほどあるのだとは思います。
が、この斎藤一さんは無口の権化!
コクッ(軽くうなづく)
目で見る(了解なのかな?そのまま去る、みたいな…)
他の隊士みたいに大きな動きはしない。
嫌いじゃない!笑
いや、むしろ好き!!
佇まいと目線だけで演技するって、難しいだろうなって。
そもそも役者さんて舞台上ではガーっと、溜めていた力を発散するものだと思うのに、セリフがないとそれができない。
今回の場合はそれでも殺陣があるので、そこで表現はできるのですが…
だからこそ、鋭く強い殺陣、刀の一振り一振りが際立って見えました。
制する刀
でも、ラストの平助を止める場面では、その、人を斬る殺陣の人が、制する殺陣を見せてくる。
刀を払ったり、受けたり…
四天王と呼ばれただけのことはある…😭
と、そんな刀捌きでした。
いや〜カッコよかった〜。
しびれた。
伊崎さん、まだ若いのに、そうとう鍛錬積んだでしょうね…
春の刀ステで演じた獅子王も殺陣がある役でしたが、キャラクターが違う以上、同じ殺陣とはくくれない。
全然違うものと言わざるを得ない…どれくらいの努力なのか、想像もつかないことです。
殺陣のうまい人とは?
殺陣が上手いと私が感じる役者さんは、本気でかかっていく(演技ですけど)人です。
どこか「お芝居だし」という気持ちがあると、なんかちょっと、そういう重たい殺陣にはならない気がする。
役者さんの心の中まではわかりません、私見として。
演技は確りとできている上で、所作としての本気の殺陣…とでも言ったらいいのか。表現が難しいですが。
聞かせどころのセリフ
セリフあまりにもないんで笑、聞き取るのに大変なくらい「今しゃべった?頷いただけ?」ってなりながらでしたが、1ヶ所。ありました。
池田屋です。
新選組が好きなみなさんならご存知…
「御用改である!!」
ここは!確りと聞こえる!
もちろん他にも多少発声するところはあるのですが、何しろ「控えている」「隠れている」「ひっそりとしている」ので、ぼそっと言う。
聞き逃しそう。
主人公二人が元気いっぱいなだけに(沖田総司は病身ですが)、対比よ…。
嫌いじゃない!
いいよ!いい!
脚本と演出と、諸々の皆さんありがとうございます!!
素敵斎藤一でした。
物語としては
老人(後から永倉新八と分かる)が、新聞記者に昔話を始める場面から始まります。
年取った永倉役の酒井さんいい!!
語っていきつつ、新選組の面々が紹介されていきます。
そして短い6年の新選組の時代が描かれていきますが、
要所要所で出てくるこのご老人。
しかも、絡んできた強そうな人たちをちょちょいっと片手で投げとばすwww
ここは見どころでした。
華麗な投げられっぷり。
そして主人公となった二人の若者は亡くなって、時代は変わり……という幕切れ。
ちょっと切ないですねえ…
斎藤一、新選組
実際の斎藤一は、明治維新後もかなり長生きをして、最後は警察官までやっています。
大正15年没と聞くと、「歴史上の人物」というよりは近い人に思えてきます。
他の隊士たちは、若くして亡くなる方が多いので、貴重な証言者…だったのでしょうが、晩年新選組のことはあまり語らなかった…とどこかで読みました。
昔のことだから、っていうことだったのかなあ。
きちんと「新選組」とうたった舞台作品を見たのは意外にも初めてで、舞台だとわかっていてもぐっとくるものがあります。
たった6年ですからね…
少し前に「新選組血風録」を読んだのですが、これを書いた司馬遼太郎さんも、子母澤寛さんに会ったことあるのだそうです。
それを知ってから読むと、また血風録も違う印象になるかもしれません。
近い時代なのにわからないことが多い新選組。
考えさせられる舞台でした。
楽しかった!