オーストラリアの公務員制度を調査 - 連邦、州、自治体の公務員にスト権ふくむ労働基本権を保障 | くろすろーど

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 ※国公労連速報(2010年11月17日No.2444)を紹介します。


 オーストラリアに公務員制度調査団を派遣
 ――政府・州の行政機関などを訪問、労働団体などと交流深める


 全労連公務員制度改革闘争本部は、11月7日から13日まで、オーストラリアへ公務員制度にかかわる調査団を派遣しました。シドニー、キャンベラ、メルボルンを訪問し公務員労働基本権、団体交渉や労使関係などの聞き取り調査、公務組合などとの交流を行いました。全労連から小田川事務局長、黒田常任幹事、布施常任幹事、全教の北村書記長、自治労連の鈴木中執、国公労連から瀬谷中執が参加しました。滞在中、建設・鉱山・林野・エネルギー労組(CFMEU)、コミュニティー&公務セクター労働組合(CPSU)、モーリスブラックバーン法律事務所、ニューサウスウェールズ州労使関係大臣、クリス・ホワイト弁護士、オーストラリア公務サービス委員会、オーストラリア教育組合(AEU)、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)、フェアワークオーストラリアなどを訪問し調査活動を行いました。


 民間労働者と同様にスト権をふくむ労働基本権を保障


 オーストラリアは、連邦と6州(ニューサウスウェールズ州(シドニー)、ビクトリア州(メルボルン)、クイーンズランド州(ブリスベーン)、南オーストラリア州(アデレード)、タスマニア州(ホバート))および州に準ずるオーストラリア首都特別地域(キャンベラ)、北部準州と自治体の三層構造になっていて、連邦、州、自治体の公務員にはスト権をふくむ労働基本権が保障されています。


 オーストラリアでは、1996年から2007年までの保守党政権において、様々な労働組合に対する攻撃がかけられ、その中でも「ワーク・チョイス法」はこれまでの集団的労使協約を個別雇用契約に切り替え、賃金・労働条件の切り下げ、権利制限などを強行してきました。2007年の総選挙では、労働組合はかってない闘争を展開し、野党の労働党を勝利に導き、保守党にかわる新政権が誕生しました。しかし、今年8月の総選挙では労働党・保守党ともに過半数に届かず、そうしたなか、現在、ジュリア・ギラード首相による労働党政権が続いています。


 労働党政権に変わってから「ワーク・チョイス法」から「フェア・ワークス法」が新たにできたことで、労働者の権利もより拡充されてきました。


 今回の調査では、オーストラリアの労使関係制度をはじめ、権利や雇用、賃金・労働条件の実態、労使紛争の解決処理の手段、さらには、公務員の中立・公正性を保つための制度など、さまざまな面からの調査がおこなわれました。


 連邦組織である「フェア・ワークス・オーストラリア(FWA)」への訪問では、最高責任者のジョフレー・ギウダイス会長をはじめ、マイケル・ローラー副会長、ジェニファー・アクトン上席会長補と面会して、2時間近くにわたって意見交換をすることができました。


 「フェア・ワークス法」の執行機関として、使用者と労働者の間に入って労使紛争のあっせん・仲裁などを受け持つFWAは、日本の中央労働委員会にも似た独立機関です。労働協約はFWAが承認して拘束力をもつことになり、約8000の労働協約を扱っています。スト権行使についても不正・不法なものについては中止させる権限ももっていて、過去15年間で10件のスト中止をおこなっています。連邦最高裁の判事も務めるギウダイス会長からは、組織の概要や実務内容にとどまらず、労使関係のあり方にかかわる示唆にとんだ話を聞くこともできました。


 また、公務員制度にかかわっては、連邦の「公務サービス委員会(PSC)」を訪問し、基本的にはフェア・ワークス法のもとにおかれながらも、公務員独自の採用や評価制度、政治任用をふくめた幹部職員制度などがさだめられている実態を調査しました。日本の人事院的な機能を持ち、連邦公務員政策の遂行する政府機関であると同時に、労使関係では第三者機関であるとも言えます。労使交渉の場に立ち会ってアドバイスしますが、裁定はしません。法律にあっているか、連邦の公務員政策にあっているかなどをチェックしています。また、公務員の解雇は想定されてなく、定年制はなく定年は本人の裁量で、ほとんどは65歳で退職しています。公務員の採用については、基本的に100位ある機関(日本の省庁に相当)が欠員の生じた場合に機関ごとに採用するシステムになっています。


 公務サービス委員会から、アンドリュー・テイラー職場関係グループマネージャー、マルコ・スパッカベント職場関職場関係グループ部長ら幹部職員の対応を受け、専門的な話をふくめて聞き取り調査しました。


 オーストラリアのナショナルセンター・ACTUと交流を深める


 今回の行動では、国内唯一のナショナルセンターである「オーストラリア労働組合評議会(ACTU)」の全面的な協力もあり、各機関のトップクラスとの面談が実現しました。


 一行は、メルボルンに本部を置くACTUの事務所を訪問し、グラント・ベルチャンバー国際局長をはじめとする役職員のみなさんと懇談しました。全労連としては初めてとなるACTUへの正式な訪問・懇談が実現するもとで、今回の調査活動への協力に対する感謝をのべるとともに、ナショナルセンター間の相互交流を深めることも確認しました。


 なごやかにすすんだ懇談では、オーストラリアの経済や政治情勢、正規・非正規の労働者の状態、フェア・ワークス法に対する労働組合としての考え方、最低賃金の決定方法など多岐にわたって意見交換ができ、国を越えた労働者としての熱い情熱を感じました。


 その他、シドニーを拠点として連邦・州の公務員を組織する「地域公共サービス労組(CPSU)」、全国の教員でつくる「オーストラリア教育組合(AEU)」、建設や炭鉱労働者などが多く加入する「建設鉱山林野エネルギー労組(CFMEU)」などを訪れ、労働組合のたたかいなどにかかわっても意見交換しました。


 これらの調査行動の合間をぬって、シドニーでは、ニュー・サウス・ウエールズ州のポール・リンチ労使関係担当大臣を表敬訪問し、1時間近くにわたって面談することができました。全労連側から日本の公務員制度改革の現状を伝えると、リンチ大臣からは、オーストラリアの労使関係のあり方について、政治家としての考え方も語られました。


 行政機関・労働組合ともに訪問先ではどこにいっても暖かい歓待を受け、オーストラリアの人たちの誠実さと親切さ、心のやさしさを感じた調査行動となりました。熱心に話してくれた内容を記録に残し、今後の運動にいかすため、闘争本部では、報告書を年内にまとめることとしています。

                                              以上