昨日(3月27日)のNHKニュース「おはよう日本」で、最低賃金の半分以下となる時給400円の「中間的就労」を自治体行政が広げることにより自治体の生活保護予算を大幅に削減できている先進的な事例として、大阪・豊中市の取り組みを紹介し推奨していました。(※下の画像はその報道をキャプチャしたものです)
この報道を見ていて、生活保護から追い出す生存権破壊と、最低賃金の半分以下がまかりとおってしまう労働法制の逸脱、行政によるブラック企業支援や公設貧困ビジネス推進などにつながる危険性を感じました。
「中間的就労」というステップを踏むことによって、従来のシステムでは働くことができなかった人がきちんと働き続けられるようになるのだということが報道の中で強調されていましたが、下の画像にあるように、報道の中で紹介されていた「人付き合いが苦手、働いた経験なし」の33歳の女性が大阪の最低賃金819円の半分以下の時給400円で働いているケースなどが全国各地に広がっていいものなのでしょうか? 「人付き合いが苦手、働いた経験なし」の30代なら最賃の半分以下で雇用できるようなことが全国各地に広がってしまえば、さらなる労働力の窮迫販売と低賃金スパイラルによる超貧困社会が到来してしまいます。
そもそもこのNHKニュースの報道の基調が、生活保護予算が過去最大規模になっているのを削減しなければいけないというものですが、本当にそうなのでしょうか?
上のグラフは、日弁連が作成した「データで見る生活保護制度の今」からです。上のグラフを見て分かるように、そもそも日本の生活保護費はOECD平均のわずか4分の1しかありませんし、日本の生活保護利用率はドイツのわずか6分の1です。日本の生活保護の最大の問題は、生活保護利用率が少なすぎること、80%以上も生活保護が受けられない受給漏れ状態にあることなのです。
また、上のグラフにあるように、生活保護の増加は、公的年金制度の不備などによって高齢利用者が増えていることに原因があるので、そもそも「中間的就労」による対策はまとをはずしているとも言えるのです。そのまとをはずしている対策で、最低賃金の半分以下の雇用を、国・自治体が生み出していいはずがありません。
このNHKニュースを見て、生活保護の増加含め貧困問題が深刻な状況になり国と自治体の財政も大変なのだから、こうした「自立支援」も必要なのではないか?と考える人もいるでしょう。しかし、こうした「自立支援」をしたとしても、いま働く場はどうなっているのかということをまず考える必要があるのです。4割近くが非正規労働者となり、正規労働者になれたとしてもブラック企業のような劣悪な就労が増えている現状で「自立支援」だけを実施しても、結局は低賃金で無権利状態に置かれる労働者を作るだけになってしまいます。すべての人が普通に働けば普通に幸せに暮らしていける社会が前提にならない「自立支援」は欺瞞です。現状が普通に働いても「自立」できない社会になっているのに、そこで「自立支援」と言うのは矛盾していますし、問題の解決にはなりません。
▼とても参考になる徳武聡子さんのtogetterまとめ
これは問題!〈生活困窮者自立支援法〉は生活困窮者のための法律ではなかった。(9/13集会まとめ)
http://togetter.com/li/563507
▼関連エントリー
貧困者を犯罪者とみなす刑罰国家の危険 - 憲法25条“生存権”軸の福祉国家へ(内橋克人×湯浅誠)
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10254847856.html
(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)