内部留保わずか1%の活用で81社が1千人以上の雇用増可能-1年で5兆円も増加した内部留保の活用を | すくらむ

すくらむ

国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

14-1


 上のグラフにあるように、民間労働者の年間平均賃金は、1997年の467.3万円から2012年の408万円へ59.3万円も減少しているのに、大企業(資本金10億円以上)の内部留保は1997年度の142兆円から2012年度の272兆円へ130兆円も増加しています。

 前年度比を見ると、2011年度から直近の2012年度で大企業の内部留保は267兆円から272兆円へたった1年間で5兆円も増加し、逆に民間労働者の年間平均賃金は409万円から408万円へと減少しています。

 国公労連は、内部留保をわずか1%だけを活用した場合の雇用増と、非正規を含むすべての労働者に月1万6千円の賃上げをするための内部留保の取り崩し率について試算しました。

 内部留保のわずか1%の活用で
 主要131社のうち81社で1,000人以上の雇用増が可能


 主要企業131社について、内部留保の1%を雇用に回すとどれくらいの雇用増があるのかを試算しました。雇用については年収が300万円で1年間雇用とします。

 この試算によると、主要企業131社のうち81社においてそれぞれ1,000人を超える雇用増が可能です。このうち23社では5,000人以上の雇用が可能であり、さらに、7社では1万人以上の雇用が可能です。(※主要企業の試算は以下です)

14-2


 トヨタは内部留保1%で5万人以上の雇用増が可能


 個別企業をみると、トヨタ自動車は内部留保が15兆2025億円であり、その1%によって5万人以上の雇用が可能です。また、「電機リストラ」を計画しているパナソニックでは内部留保が2兆5764億円、ソニー2兆5917億円などとなっており、内部留保のごく一部を取り崩せば大規模なリストラを回避できることは明らかです。

131社中95社が3%の取り崩しで月1万6千円の賃上げが可能
月1万6千円賃上げをする場合の内部留保取り崩し率

 正規労働者の賃上げ


 主要企業131社について、正規従業員全員に月1万6千円賃上げ(ボーナス4月含めて年間必要財源は25.6万円)するために内部留保の何%を取り崩せばよいかを試算しました。(※全労連・国民春闘共闘は、2014年春闘にむけて月額1万6千円以上の賃上げをめざしています)

 この試算によると、主要企業131社のうち102社において内部留保の3%未満で正規労働者全員に月1万6千円の賃上げが可能です。

 非正規労働者の賃上げ

 主要企業131社のうち非正規労働者(雇用関係のある臨時従業員)の人数が明らかな企業は91社です。この非正規労働者全員に月1万6千円賃上げ(年間必要財源は19.2万円)するため内部留保の何%を取り崩せばよいか計算したところ、91社のうち83社において内部留保の3%未満で非正規労働者全員に月1万6千円の賃上げが可能です。(※全労連・国民春闘共闘は2014年春闘にむけて時給120円以上、月額1万6千円以上の賃上げと、最低賃金要求として時給1,000円、日額8,000円、月額17万円の到達をめざしています)

 さらに、正規と非正規の両方(当該企業に働く全ての労働者)に月1万6千円の賃上げする場合の内部留保の取り崩率も試算しています。この試算によると、131社中、95社で内部留保の3%未満の取り崩しによって月1万6千円の賃上げが可能です。 トヨタ自動車が正規33.3万人と非正規8.3万人とに月1万6千円の賃上げをするのには、内部留保の0.67%を取り崩せば可能です。

 内部留保についての疑問にこたえる

【Q】 内部留保とは何ですか? 取り崩してしまってよい資産なのですか?

【A】 企業があげた利益のうち、法的にも計上が認められる資産で、連結利益剰余金、資本準備金、退職給付引当金、長期引当金、資産除去債務などを指しています。企業やそこに働く労働者にとっても、経営や雇用の安定などに必要な資産といえますが、問題はその額です。この10 年間での全産業での内部留保増加額は192兆円あまりとなっており、そのうち、資本金10億円以上の大企業での増加額は101兆円に上っています。私たちは、これらの内部留保のごく一部を取り崩すことによって、賃金引き上げや大幅な雇用の確保が可能と訴えています。

【Q】 現在は景気が悪く、デフレのなか、内部留保を積み上げることが必要なのでは?

【A】 内部留保の積み上げではなく、内部留保の一部を雇用増や労働者の賃金に回すことによって、消費購買力が上がり、景気も回復します。

 大企業の内部留保額は景気が悪化している間も積み上がり、この15年間で2倍近くになっています。現在のデフレの原因は、大企業が利益を内部留保として積み上げる一方で、労働者に賃上げを行わないうえ、正規雇用者を低賃金の非正規労働者に置き換えてきたことです。大企業が利益を株主配当と内部留保に回し、労働者の人件費を抑制したことで、景気が悪化しデフレになっているのです。

【Q】 内部留保は資産であり、簡単に売却できないので、賃上げや雇用増の財源にはならないのでは?

【A】 いいえ、そうではありません。資産の中では、機械設備など簡単に売却できない固定資産も大きいですが、流動資産として預金、受取手形、有価証券、公社債など換金性の高い(現金化しやすい)部分もあります。この部分を取り崩せば賃上げや雇用増の財源になります。駒澤大学経済学部の小栗崇資教授は、「内部留保の主要部分である利益剰余金の約4割は換金性の高い資産」と指摘しています。実際に下表のとおり、現金および現金同等物のみをみても一定の割合があり、高額となっていることがわかります。トヨタ自動車の場合、現金および現金同等物が1兆7182億円となっており、その5.9%を取り崩せば正規33.3万人と非正規8.3万人とに月1万6千円の賃上げが可能です。

14-3

▼参考
大企業の内部留保の4割強は雇用維持に活用可能 - ほんの一部の取り崩しで雇用を守れる
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10282039774.html