東日本大震災からきょうで2年半。福島、宮城、岩手3県などで被災した約29万人が今も避難生活を強いられています。
そして、被災者の死亡のうち、福島県内自治体が「震災関連死」と認定した死者数が8月末現在で1,539人に上り、現時点で申請中の109人を合わせると、地震や津波による直接死者数1,599人を上回るのは確実と報道されています。また、「原発事故関連死」は9月1日現在で1,459人と発表されています。
福島、宮城、岩手3県では、復興事業に必要な人手と資材などが慢性的に足りない上に、復興事業の受注業者さえ決定できない入札不調が続いているのが現状です。
そんな中で東京オリンピックが決まりました。今後、オリンピックを理由にした東京中心の新たな公共事業が増えると、被災地における人手や資材の不足はさらに悪化し、仮設住宅で暮らす被災者の住宅再建などを妨げることになります。仮設住宅での「孤独死」はこの8月末時点で、福島、宮城、岩手3県警によって判明しているだけでもすでに81人に上り、今後、「孤独死」はさらに多くなる可能性が高いとされています。
一方で、東京オリンピックによる経済波及効果は、東京都の試算で3兆円と言われています。しかし、この点についても、みずほ証券金融市場調査部チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、「夏季オリンピックに関連してよく知られているのが、『開催国の景気はオリンピック開催の次の年には弱くなる』という経験則である」、「84年の米国から2012年の英国までの8つのケースのうち、オリンピックが開催された年よりもその翌年の経済成長率が低くなった事例が6つもある」と指摘しています。(日経ビジネスON LINE「上野泰也のエコノミック・ソナー 夏季五輪、「翌年は景気鈍化」という経験則 「東京決定」時に危惧される安易な財政支出」 )
上のグラフのように、2004年のアテネオリンピック後に経済危機を迎えたギリシャをはじめ、各国がオリンピック後に純債務残高を増加させています。
また、上のグラフのように、大企業の内部留保と、所得上位1%の富裕層の所得シェアは、増加していますが、労働者の賃金は減り続け、99%の庶民の所得シェアは減少しています。
そして、上のグラフにあるように、長野オリンピックが開催された1998年に、自殺者数は3万人を超え、それ以降、14年連続で3万人を超え続けることになったのです。
東京オリンピックによって日本が元気になるかのような言説がありますが、まったく根拠のないものであることが、こうした客観的な数字で分かります。加えて、「放射線管理区域の東京でオリンピックなど正気の沙汰ではない」という状況の中 で開催されようとしているのです。汚染水問題をはじめとする福島原発事故の収束作業はもちろんのこと、「震災関連死」や被災者の「孤独死」を防ぐための施策をきちんとしないでおいて、東京オリンピックを優先課題とする公共事業推進などは許すわけにいきません。
(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)